更年期はまだ先のこととは思いつつ、今からちょっと不安……という声が多数。でも正しい知識を持って早めから備えておけば大丈夫。 産婦人科医の高尾美穂先生が詳しく解説します!
エイジングケア感覚で、早めの対策が吉
更年期のために今しておきたいこと
イーク表参道副院長。スポーツドクター。ヨガドクター。専門知識のわかりやすい解説が人気。著書は『いちばん親切な更年期の教科書 閉経完全マニュアル』(世界文化社)など。
現在は治療法も対策も確立。
過度に恐れなくても大丈夫
「女性は人生の大半において女性ホルモン、エストロゲンの影響を受けますが、その分泌が終わることで閉経を迎えます。更年期とはこの閉経を挟む前後10年間の時期のことで、誰にでも必ず訪れます。日本人の閉経年齢の中央値は50・54歳なので、平均的な更年期は45〜55歳。ただ、閉経の時期には個人差があり、40代前半で閉経する人もいて、30代後半から更年期が始まることもあります」
そんな更年期に備えて今からしておきたいこととは?
「更年期にはホットフラッシュと呼ばれるほてりや異常発汗のほか、イライラや不眠などさまざまな症状が起きますが、こうした症状を感じるのは全体の6割。そのうちの約半分、つまり全体の3割弱が生活に支障が出るほど強い不調が起き、これを更年期障害といいます。しかし、残りの4割は特に不調を感じることなく過ごしていくことができます。また、不調が出ても現在ではさまざまな治療法や対策が用意されていますし、生活習慣を整えておけば更年期の不調は予防できることがわかっています。働き盛りのマキア世代には、睡眠不足や運動不足、生活が不規則な人が多く、自律神経が乱れがち。そのまま更年期を迎えると症状の悪化を招きかねません。今から生活を見直しておいて元気に更年期を迎えましょう」
更年期とは
更年期とは閉経を挟む
前後10年間のこと
「更年期は閉経の前後10年間。つまり更年期のスタートは閉経して初めてわかります。更年期に起こる症状を更年期症状、生活に支障が出るほど症状が重い場合を更年期障害と呼びます。更年期とはエストロゲンがない状態に慣れるための時期。40代に入ったら、もう更年期にさしかかっているかもしれないと認識を」
どんな症状が出る?
ホットフラッシュ、不眠、
イライラなど多くの症状が
「更年期症状は、卵巣機能の低下によって、脳から指令が出てもエストロゲンを分泌できなくなることで脳がパニックを起こし、その影響で自律神経が誤作動を起こすことで生じます。ホットフラッシュと呼ばれるほてりや異常発汗のほか、肩こり、腰痛、不眠、イライラ、うつ、めまいなどさまざまな症状が起きます」
エストロゲン
エストロゲンは女性の人生に大きな影響を及ぼす女性ホルモン。10代に分泌量が増えると月経が始まり、分泌量のピークは20〜30代半ば。30代後半になると徐々に減り、40代後半から急激に減少し閉経すると低い状態で安定する。
更年期に起こる変化とは?
肌・髪
肌のハリやうるおいが失われ
薄毛になりやすくなる
「エストロゲンにはコラーゲンの産生を促し、肌の弾力や水分を保つ作用があるので、更年期にエストロゲンが減ると肌のハリやうるおいが失われやすくなります。また、エストロゲンには髪の太さや密度、ツヤを保つ働きもあるので、更年期にエストロゲンが減ると、髪のハリやツヤが失われ、薄毛にもなりやすいです」
骨
骨量が減って骨密度が低下し、
骨粗鬆症になりやすくなる
「エストロゲンには骨を強く保つ働きがあり、更年期にその分泌量が減ると骨量が減少して骨密度が低下していきます。最も骨密度が低下しやすいのは閉経から最初の2年で、手足の骨は閉経して15年後から目立って減り、骨粗鬆症になりやすくなります。顔の骨量は閉経後早期に減るので、たるみが加速する人も」
生理
生理の周期・期間・量に
バラつきが出始める
「更年期に入ると起こる最もわかりやすい変化は、生理の周期が短くなったり逆に延びたり、経血量が減ったり増えたり、生理の日数が短くなったり長引いたりと生理にバラつきが出ること。これは閉経前にエストロゲンの分泌量が乱高下しながら減っていくから。こんな変化があったら更年期に入ったサイン」
心
イライラ、落ち込み、不安感
などメンタルダウンしやすい
「エストロゲンは、自律神経のうちのリラックス感をもたらす副交感神経を優位にしたり、幸せホルモンと呼ばれる“セロトニン”を増やしたりするので、更年期にエストロゲンが減ると、イライラしやすくなったり、落ち込みやすくなったり、不安感を抱きやすくなるときも。ひどい場合は更年期うつ状態になることも」
MAQUIA 4月号
イラスト/mamiyoco きくちりえ〈Softdesign LLP〉 取材・文/和田美穂 構成/髙橋美智子(MAQUIA)