「ジェンダー・ギャップ」、「ガラスの天井」、「生理の貧困」……私たちをとりまくモヤモヤすることについて徹底考察。今回は、職場や社会など、日常で感じる違和感について考えます。

〈マキア読者329人のリアルボイス〉キャリア、賃金、学歴etc.…社会で感じるモヤモヤについて専門家がアンサー!_1

「なんだか生きづらいのはなぜ?」
私たちをとりまく
YES!と言えないことについて考えてみた。

こんなときどうする?
マキア読者が実際に経験している
“モヤモヤするあれこれ”への向き合い方Q&A

環境・社会
家族や友人関係、職場や社会など、日常で感じる違和感を言葉にしてシェアすることが、私たちの未来をつくる第一歩。

教えてくれたのは…
治部れんげさん

ジャーナリスト

治部れんげさん

メディア・経営・教育とジェンダーやダイバーシティについて多くのメディアで執筆。著書に『ジェンダーで見るヒットドラマ』(光文社新書)など。

富永京子さん

社会運動研究者

富永京子さん

立命館大学産業社会学部准教授、シノドス国際社会動向研究所理事。専門は社会運動論。著書に『みんなの「わがまま」入門』(左右社)など。

Q.なにかと容姿や年齢、性別で判断され、たとえキャリアがあっても男性が優先的に認められていくのがツライです……。我慢したり諦めたりするしかないのでしょうか。

諦めるのではなく 仲間を増やそう!

諦めるのではなく
仲間を増やそう!

「炎上した“わきまえ発言”への世論からも分かる通り、すでに我慢する時期は脱しています。基本的には諦めず、状況が似ている女性たちと対話しながら仲間を増やしましょう。年上の世代は『私たちも我慢してきた』という反応になりがちなので、同世代で声をあげて。声をあげることで、諦めていないという自覚も持てます」(富永さん)

Q.「女性は会社に化粧をしていくことがマナー」という風潮が納得できません。海外でも似たようなことはあるのでしょうか。

よそと比べながら自分の 不満を形にして

よそと比べながら自分の
不満を形にして

「日本の女性の外見に対する重圧は大きいと言われています。化粧に限らず、他の社会と比べながら『これっておかしい?』と考えるのは、モヤモヤや違和感を言語化する上で大事なプロセスですね」(富永さん)

Q.身近に感じられるフェミニズムの話をもっと読んだり聞いたりしたいです。
治部さん&富永さんのおすすめ本はこれ!
治部さんのおすすめは『非国民な女たち 戦時下のパーマとモンペ』(中央公論新社)と『未来につなげる 男女共同参画 ジェンダー視点の実践活動』(生活思想社)。富永さんは『美容は自尊心の筋トレ』(Pヴァイン)と『「モノと女」の戦後史 身体性・家庭性・社会性を軸に』(平凡社ライブラリー)。


Q.「女性」管理職、「女」社長、「女性」議員、「女流」作家のように、なぜわざわざ女性であることを表記する必要があるのでしょう?
少数派であることが差別の要因に
「あえて“女”と表記するのは、特別扱いするタイプの差別。さまざまな形で表に出る女性のロールモデルが増えていけば、活躍の裾野は広がり、社会の無意識に及ぼす効果も強くなります」(富永さん)


Q.夫が海外転勤になった時、私は仕事に誇りを持っていて、辞めて海外についていくかどうかずっと迷っていたけど、「夫の転勤に妻がついていくのは当たり前」、しかも「専業主婦になるのはラッキー」という周囲の固定観念に傷つきました。
言葉にすることで、周囲の気づきにもつながります
「おめでとう」の言葉がじつは忖度だったという可能性も。「嫌だと思った人が言葉にしていくことが大切です。我慢してしまうと、同じ苦しみの再生産に加担することになります。『仕事を続けたくて困っている』という本音は周りの気づきにもつながるはず。自分の人生にかかわることですから、まずは配偶者と相談を」(治部さん)

イラスト

Q.男女は同質ではないけれど、平等だと思います。お互いに補いながら対等に発言できる社会になればいいのに……それって理想にしかすぎませんか?

理想を実現するためにも 実態の認識が重要です

理想を実現するためにも
実態の認識が重要です
非正規雇用や産休によるキャリアの中断、平均賃金の違いなど、平等と呼ぶにはまだまだ格差があるのが現実。「平等な社会という理想を叶えるためにも、格差がある実態を認識する必要があります。これは自己責任や恥などの問題ではなく、生まれ落ちた社会に歪みがあるというだけなので、声をあげていくことが大切です」(富永さん)

Q.なぜか職場の秘書は全員女性。いまどき、性別を限定しないとできない仕事なんてあるのでしょうか?
ありません。とても真っ当な疑問です
女性(男性)しかできないという決めつけは、ジェンダーに基づくもの。「男女雇用機会均等法以前は、四大卒の女性が採用されない、女性は定年が早いといった差別がありました。まさに過去の差別を引きずっている日本の現状です」(治部さん)


Q.看護師や保育士など女性が多い仕事の賃金はなぜ低いのでしょうか?
枠組みを決める立場に女性が少なすぎる!
「より弱い存在と関わる仕事に女性が多く、過小評価されるのは、かつて“お嫁さん”の役割だったという社会背景や、社会の枠組みを決める立場に女性が少なすぎることなどが要因。政治の場に女性が増えると社会も変わっていきます」(治部さん)


Q.「男/女だから」という社会の刷り込みを変える方法ってあるのでしょうか。
違和感を言葉にしてみましょう
ジェンダーという言葉が浸透しつつある今だからこそ、自分が感じた違和感を言葉にする習慣をつけて。「働き方、子育て、家事、人生設計など、ジェンダーにまつわる違和感は性別や立場を問わず共感しやすいテーマ。雑談ベースで情報やニュースをシェアするなど、みんなでアップデートしていきましょう」(治部さん)


Q.かつて父に「女の子だから大学なんて行かなくていい」と言われショックでした。「女に学歴は不要」という考えが根強いのはなぜでしょうか。
残念ながら家父長制の名残です
「少子化の影響で都市部では減りましたが、家を継ぐ長男に資源が集中した『家父長制』による男尊女卑の名残だと思います。まさか今20代の方が経験していたとは衝撃ですが……。そこでくじけることなく進学したあなたは素晴らしい!」(治部さん)


Q.痴漢の冤罪についての話をよく耳にしますが、そもそも痴漢をなくすこと、被害にあっている人への救済措置がおざなりなイメージです。

公的機関による対策や支援体制の整備も進んでいます

公的機関による対策や支援体制の整備も進んでいます
「情報が偏りやすいSNSなどでは冤罪がテーマになりがちですが、痴漢自体が問題だと考える人がほとんどだと思いますし、問題の本質は被害が絶えないことです。政府や警察も被害者支援に力を入れているので、まずは公的機関のウェブサイトで確認を」(治部さん)。内閣府では、性暴力に関するSNS相談「Cure time」を開始。

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イラスト/eve 田中麻里子 取材・文/国分美由紀 構成/横山由佳(MAQUIA)

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