美容ジャーナリスト「アベオダ」が下半期スキンケアを振り返り総括。コロナ生活が明けた激動の2023年、これまでとはひと味違った進化のポイントとは!?
\安倍佐和子&小田ユイコ(アベオダ)が解説/
2023下半期スキンケア総括
「絶対こすらない」から「適度な刺激」 を見直す時代へ
コロナ禍の生活が明け始め、いたわり一辺倒のスキンケアから、積極的なスキンケアへ。その象徴が、摩擦レスからの前進。
オダ 2023年下半期は、エリクシールの“トータルV ファーミングクリーム”とか、ロート製薬の“オバジX フレームリフトエマルジョン”のようにマッサージを推奨するコスメが増えましたよね。ずっと摩擦レスブームが続いていたので新鮮でした。
アベ 私は行き過ぎた摩擦レスブームで、皆の肌が鈍化しているのでは?とちょっと首をかしげていたので、「あぁ、やっと」と。
オダ エリクシールが注目している肌の立毛筋とか、オバジXが注目しているエラスチンとか、重力に逆らって肌を引き上げるには、どうしても手の力が必要だと、再認識しました。
アベ 肌のプロポーションを立て直すには、適度な「筋トレ」も必要ってことですよね。肌の「筋トレコスメ」、これからもますます増えていくんじゃないかしら。
おなじみ成分の新たな魅力を発見
成分ブームにますます拍車がかかる中、おなじみの人気成分に新たな魅力が。
オダ 花王は、「炭酸」に実は真皮の線維芽細胞を刺激する働きがあることを発見。コラーゲンやエラスチン、ヒアルロン酸を増やすことが期待されていますよね。エストの“セラム ワン アドバンスド”は実際、ハリアップ効果が高まった!
アベ ロート製薬の“ブルーミオ”シリーズは、「セラミド」をナノ化発酵したうえ、グアイアズレンスルホン酸という鎮静成分を組み合わせて「ブルーセラミド」を開発。あたりまえの成分を、跳び箱3段分くらい攻めて、ポーンとスター成分に着地させましたね! ロート製薬は、いつも意外性があって目が離せません。
幸せホルモンを総動員して美肌に
ハッピーオーラがある人は、なぜか肌がキレイ。その謎が科学で解明され、「ごきげんな肌」をつくるコスメが話題に。
アベ 2023年下半期のキーワードとして際立っていたのがニューロサイエンス。コスメデコルテの“AQ アブソリュート”シリーズが着目した幸せホルモン・オキシトシンが美肌再生のカギを握っていることは、かなり心に刺さりました。
オダ 私も! オキシトシンが肌のハリやバリア機能に関係していたなんて、驚きでした。幸せで愛情いっぱいの人がいつまでも老けない理由がわかったし、私みたいに落ち込みがちな人も置いてけぼりにしないで、救ってくれるコスメができてよかったなって(笑)。
アベ とろけるようなテクスチャーも最高! 以前に脳神経科学の研究者に取材をしたとき、手で肌に触れた心地よい刺激が脳に伝わりオキシトシンが出ると聞いたんです。
オダ 自然といい触れ方へと導いてくれるコスメですよね。
炎症老化、細胞老化に着目
肌のエイジングの本丸、「炎症」や「細胞老化」に切り込んだアイテムが続々と登場。
アベ ディオールのプレステージシリーズは炎症ケアがもともと得意だけれど、“プレステージ マイクロ ローション ド ローズ”はスキン フローラに働きかけ、炎症ケアのグレードがアップ。
オダ シャネルの“サブリマージュ ラ クレーム シュプレーム”は進んじゃった細胞老化も巻き戻せる。炎症や細胞老化ってがん治療とか、医学の世界でもホットなテーマ。世界の研究機関が真剣に取り組んでいる。
アベ 怖いのは、炎症やひとつの細胞が老化するとダメージサインを出し、まわりの組織や細胞まで炎症や老化を広げてしまうこと。
オダ 肌の「ボヤの延焼」とか「ゾンビ細胞」ですよね。ボヤを消し止め、ゾンビを黙らせることができるようになって、肌の未来は明るいなぁと。
個性が光るミルクに注目
いつもは美容液やクリームの影に隠れ、目立たない存在の乳液だが、下半期は個性派の乳液が存在感を放っている。
オダ 新“オバジX”も新“AQ”も乳液が圧倒的な人気。シリーズの「顔」となっているし、菌ケアのKINSが「赤ちゃん菌」を配合した乳液“KINS MILK”を発売。ドクターズコスメの草分け、ドクターケイは、今年残念なことに亀山孝一郎先生が急逝されましたが、その遺作ともいうべき“薬用Cリンクルホワイトミルク”がお披露目され、脚光を浴びています。
アベ どれも1品ですごく満足感がありますね。水性成分と油性成分がバランスよく入っていて、ヒットする理由がわかる〜。
オダ ホント、オールインワン的な総合力を感じる。忙しくて時間がないときも、個性派ミルクのシンプルケアで乗り切れます!
良質睡眠までケアできる
コロナ生活の影響もあり、私たちの生活はよりデジタルシフト、生活のリズムが乱れて、睡眠負債に悩む人が増えた。
アベ 睡眠をケアするコスメが増えたのはありがたい。ヘレナ ルビンスタインの“リプラスティ R.C. アイ クリーム”に配合されているプロキシレン。エイジングケア成分として優秀なことはこれまでもわかっていたけれど、夜間の細胞活性に役立っていることも解明。良質な睡眠をとったように、目元のダメージケアを助けてくれる。
オダ 資生堂は睡眠ホルモン・メラトニンが免疫力と関わっていることを解明。SHISEIDO“アルティミューン™ パワライジング コンセントレート Ⅲn”は肌に備わっている時計遺伝子に働きかけ、メラトニンを枯渇させない新アプローチ。やむを得ずショートスリーパーになってしまっている人の救世主です。
リニューアルは名品の証し
人気のロングセラースキンケアが満を持してバージョンアップし、名品コスメの価値をさらに高めたケースも。
アベ SK-IIの“スキンパワー アドバンスト クリーム”や、エリクシールの“レチノパワー リンクルクリーム”など、日本のブランドは名品コスメのバージョンアップが本当に上手。
オダ SK-IIは、長年にわたり研究を続けているピテラに、エイジングの火種となる炎症をケアする新知見を発見したし、エリクシールはシワ改善の純粋レチノールをもっと肌に届くよう改良されましたね。名品は、宝であるキー成分のさらなる研究に余念がない。
アベ だからこそ長年のファンを決して裏切らず、さらにロイヤリティが高まるようなリニューアルができる。それって並大抵の努力ではできないことだと思うんです。
丁寧に作られた香りに癒やされて
心地よい香りは一様ではなく、時代の空気を反映するもの。
アベ 今年を象徴する香りは、ポーラの最高峰美容液“B.A グランラグゼ Ⅳ”。とてもやさしくて繊細。でもちゃんとトップノート、ミドルノート、ラストノートと丁寧に構成されている。
オダ 箱根の森の土の香りを取り入れるなど、心が穏やかになる香りですよね。THREEの“バランシング オーバーナイト オイルセラム SQ”は、サンダルウッドやフランキンセンスなどの精油で香りが構成され、不安な心がホッと落ち着き、深いリラックスへといざなってくれます。
アベ すごく好き! 今は心にも寄り添うホリスティックな香りが求められているんだと思います。
MAQUIA 1月号
撮影/久々江 満(物) 取材・文/小田ユイコ 企画・構成/横山由佳(MAQUIA)