早見優

80年代のカルチャーが再びブームの中、改めて注目されているのが”昭和アイドル”の存在。平成、そして令和と時代が大きく移り変わった今、当時の楽曲はもとより、みずみずしさが溢れるメイクやふんわり可憐なヘアスタイルがとびきり新鮮に映るよう。そこで今回は、小泉今日子さんや中森明菜さんらと共に“花の82年組”としてデビューし、昭和アイドルの黄金期を彩った早見優さんにインタビューを敢行! 昨年デビュー40周年を迎えたアイドル界のレジェンドに、美容にまつわる当時のエピソードや現在のビューティメソッドをたっぷり語っていただきました。

■アイドル時代のヘアメイクについて

髪のセットとメイクは、ほぼセルフ。マスカラ&前髪が命でした

早見優

「デビュー当時は、髪も含めて基本的にセルフメイク。唯一『ヤンヤン歌うスタジオ』という番組には専属のヘアメイクさんがいて髪のセットをしてくださいましたが、顔は自分でやっていました。といっても、塗るのはファンデーションとマスカラ、それとツヤツヤのリップグロスくらい。メイク時間なんて、10分くらいだったんじゃないかな? ヘチマコロンの化粧水で拭き取った後にクリニークの黄色い乳液をつけて、ファンデーションをパパーッと塗って。いわゆる“ドーラン”は肌に合わなかったので、当時流行っていたインウイのスティックファンデーションを使っていたことを覚えています。目元や眉にはほとんどメイクをしていなかったけれど、マスカラだけはしっかり塗るのが当時のアイドルのお約束。まつ毛が重みで下がってきてしまうことに悩んでいたら、アン・ルイスさんから『ビューラーは1回でまつ毛を上げようとするとカクッとしちゃうから、何回かに分けて挟むのがコツ。まつ毛が上がったらマスカラを死ぬほどつけて、その後にもう1回ビューラーで挟むんだよ』と教わったんです。“そんなに何回も挟んだら、まつ毛が抜けちゃわないかな?”と思いながらも、そのやり方をずっと続けていましたね。

 髪の毛のセットは、懐かしの“くるくるドライヤー”が大活躍。私は事務所の先輩だった松田聖子さんと同じ美容院でカットしてもらっていたので、前髪は内巻き&サイドは外巻きの似たヘアスタイルに自然となっていたのですが、当時は誰もがみんな聖子ちゃんヘアでしたね。ちなみに、髪を固めるヘアスプレーは使っていなかったんです。あの頃はおばちゃんみたいな香りのものしかなかったから、使うのがすごく嫌で(笑)。いい香りで少しキープ力がある、ポールミッチェルのヘアミストを使ったりしていました。やっぱりアイドルは前髪が命なので、そこだけは死守したくて。前髪がキマらない日は、すごく落ち込んでいましたね。

 当時は今のようにメイクに関する情報があるわけではなかったし、デビューした頃は私もまだ15歳で、美容にあまり関心がなかったんですよ。ただ、ハワイ育ちだったこともあって、日本の中学生よりは少しだけおませだったかも。ハワイにいる母が向こうの『Seventeen』という雑誌を送ってくれていたので、それを参考にしながらステージメイクをしていました。その頃よくコスメを買いに行ったのが、六本木の交番の横にあった“オリエンタル”というお店。舞台メイクなどのコスメも売っていたので、マネージャーさんと一緒に通っていました。あとは資生堂のシャンプーのコマーシャルもやっていたので、コスメの新製品をいただくことも。当時はビューティブランドの広告も日焼け肌の全盛期で、今のように美白という概念がなかった時代。私自身も焼けていないとカッコ悪いと思っていたので、隙間時間を見つけるとテレビ局の外に出て日差しを浴びていたんです。その姿を見たメイクさんに、『優ちゃん、日焼けをするとシミになるのよ。そんなに焼いて、後から困っても知らないわよ』と言われたことを覚えています(笑)。

 アイドル仲間の中でメイク上手だったのは、(中森)明菜ちゃんかな。アイラインの入れ方がすごく素敵だったんです。渡辺めぐみちゃんも同期の中では年齢が少し上だったので、メイクの知識が豊富だった気がします。逆にほとんどメイクをしていなかったのが、(石川)秀美ちゃんや(堀)ちえみちゃん。キョンキョン(小泉今日子)も、『あ〜、面倒くさい! 今日はもうノーメイクで出よっ』なんて言って、すっぴんで歌番組に出たりしていたんです。それが羨ましくて『私もノーメイクで出たい!』とマネージャーさんにお願いしたけれど、絶対にダメだと反対されました(笑)」

アイドル時代のヘアメイク事情や50代の今の美容まで。早見優さん「今はビューティが大好き!」_3

アイドル時代のヘアメイク事情や50代の今の美容まで。早見優さん「今はビューティが大好き!」_4

「自分のレコードジャケットを活動順に見てみると、デビューから1〜2年の間はすごくナチュラル。3年目の『PASSION』あたりから、曲に合わせてちょっとメイクも強めになっています。80年代ってバブルに向かっていた時期なので、衣装もフリンジとかスパンコールとかを使ったものが徐々に多くなっていったんですよね。個人的にも舞台映えがする華やかな雰囲気が好きで、衣装やメイクもちょっとケバケバしいくらいが実はタイプ。今も、ナチュラルな感じの衣装やメイクだとなんだかテンションが上がらなくて、ステージに上がる時はどうしても派手めにしちゃいがちです(笑)」

■昭和のアイドル風ヘアメイクが、今再燃していることについて

一流の職人チームの手による作品の数々は、どれも思い出

早見優

「今また昭和のアイドルメイクが再注目されているのは、私自身もすごく面白いなと感じています。メイクに限らずあの頃のいろんなカルチャーが復活しているようで、当時活躍されていた鈴木英人さんのイラスがプリントされた洋服を先日お店で見かけたんです。娘が『これ可愛い〜!』と言って試着したのですが、80年代の自分を見ているみたいで不思議な気分になりました(笑)。最近は昭和をテーマにしたお仕事も増えていて、リバイバルブームを実感しています。一番驚いたのは、アメリカの大学に通っている娘がお友達から『日本から来たんでしょう? この曲知ってる?』と見せられたSpotifyの画面が、私のファーストアルバムだったというエピソード。ジャケットに写っている15歳の私を指差して『これ私のママなの』と娘が説明したら、『えっ、そんなに古い曲なの?』とお友達がすごくびっくりしていたらしいです(笑)。

 なぜ昭和のアイドルが改めて支持されているのかを考えてみると、私たちの時代って歌詞もメロディーラインも職人の方が作ってくださった楽曲が多く、どれも本当にキャッチーなんですよ。それに、打ち込みの時代ではないから、お金も人手もすごくかかっているんです。私のデビュー曲(『急いで! 初恋』)も冒頭にストリングスが入っているのですが、広〜いスタジオにたくさんのバイオリニストの方がやって来てバックミュージックの録音をしてくださったんです。“こうやってレコーディングをしているんだ〜”と、当時すごく驚きました。衣装も曲に合わせて一から作っていただくので、多分一着20万〜30万円くらいしたんじゃないかな。ビジュアルも含めて一曲一曲がすごく大切に作られていて、とても豊かな時代ですよね」

■50代の今、どんな美容してますか?

娘と一緒にプランプリップを買いに行きました!

早見優

「若い頃は美容にあまり関心がなかったけれど、今はビューティが大好き。特にエイジングケアという言葉に目がなくて(笑)。情報が本当にたくさんあるから調べるのが楽しいし、10代20代でこの時代を過ごしている方はすごくラッキーだなと思います。情報収集は、雑誌やインスタなどのSNSが中心。娘たちの方が詳しいので、いろいろと教えてもらっています。最近も『唇がピリピリしてプクッとするリップが流行っているんだよ』と教えてくれて、2人で買いに行ったんですよ。実際に使ってみたらハラペーニョみたいに刺激が強くて、『あぁ〜っ!!』と大騒ぎ(笑)。私は使うのをやめてしまいましたが、娘はその刺激に慣れたみたいで今も使ってます。

 最近のメイクについてお話しすると、肌はクッションファンデーションで仕上げることが多いかな。なんといってもラクなんですよ。アイシャドウはあれこれ買ってみるのですが、使いこなす技術がないので結局おなじみのブラウン系になりがち。スモーキーなアイメイクも素敵だなと思うけれど、私の髪の色が暗いせいかしっくりこないんですよね。“もう少し髪を明るくしたらいいのかな?”なんて、あれこれ考えています。あとは、今すごくツヤメイクが流行っているじゃないですか。私も頬骨の上あたりをキラキラさせたいなと思うんですが、年齢的にシワに入り込んじゃうから難しくて……。そういったメイクがすごく上手なママ友に秘訣を聞いたところ、『ハイライトは持ってる?』と質問されて。『4年くらい前のやつならあるかも』と答えたら『まず新しいハイライトを買って!』と言われたので即購入しました(笑)。

 体型維持に関しては、やっぱり運動が大事! 私は食べることが好きだしお酒も飲むので、その分動かないとどんどん体が大きくなっちゃう。実はコロナ禍の時に怠けてしまって、大分体型が変わってしまっていたんですよ。“これはまずい”と思っていたタイミングで、昨年ミュージカルに出演することになって。ダンスの練習などに励んだことで体重を少し戻せたので、今後もそれを維持していきたいなと。今は週1ペースでトレーナーさんとワークアウトをするほか、習った筋トレを自宅で復習したり、ズンバのクラスで踊ったりしています。ズンバはラテンのダンスで、有酸素運動としてとっても効果的。ランニングマシーンで15分走るよりも1時間踊る方がずっと楽しいし、ものすごく汗をかくんです。ラテン系なのでウエストもよくひねるし、ジャンプをすることでふくらはぎの筋肉をしっかり使う点も魅力的。昔は汗をかくことが大嫌いだったのに、今は汗をかかないと気持ち悪いと感じるくらい運動が大好きになりました」

パナソニックのバイタリフト かっさ

パナソニックのバイタリフト かっさは、映画の撮影現場でヘアメイクさんから教えてもらったもの。朝のメイク前にこれでフェイスラインを流すと、目がパッと開く感じがするんです。コンパクトなサイズで、持ち歩きしやすい点も優秀! ただ、持ってるだけで安心してしまって、つい使うのを忘れがち。メイクさんから『ちゃんと使ってますか?』と聞かれちゃいます」

ドテラのPBアシスト スティック

「インナーケアは、乳酸菌とビフィズス菌、プロバイオティクスが私の体質にはあっているみたい。いろいろと試していますが、最近はドテラのPBアシスト スティックがお気に入り。美味しくて飲みやすいので、毎朝飲んでいます。お腹も健やかでいい感じ♪」

コスメデコルテのAQ ローション ER、エマルジョン SR、リポソーム アドバンスト リペアセラム

「コーセーのファンデーションのコマーシャルに出演した22〜23歳の頃から、スキンケアはコーセー系列のものをよく使っています。中でも長く使い続けているのが、コスメデコルテのAQ ローション ERエマルジョン SR、そしてリポソーム アドバンスト リペアセラムの3点。保湿力が高く、肌がふっくらします。同じコスメデコルテのアイピー ショット プルリポテント ユース コンセントレイトは、最近の大ヒット。私はずっとアイクリームを使っていなかったのですが、販売員さんにおすすめされて購入してみたんです。目元をしっかり保湿してくれてかなり調子がいいので、もっと前から使っておけばよかったと後悔しています」

ビオレ パーフェクトオイル、ビオデルマのクレンジングウォーター

「クレンジングはオイルが手軽で好き。ただ、濡れた手で使うと乳化しちゃうのが難点なんですよね。ビオレのパーフェクトオイルは濡れた手でも使えて、シャワーをしながらメイクを落とせる点が超優秀! まつエクをしているので目元にはオイルを使わず、ビオデルマのクレンジングウォーターで優しく落とします。洗顔は10代の頃に祖母から『泥が入った石鹸で顔を洗うと綺麗になるのよ』とプレゼントしてもらって以来、石鹸派に。これまでいろいろと使ってきましたが、最近愛用しているyamanoのドロンコフレグランスソープは、どこか懐かしさのある香りがお気に入り」

早見優

楽しく健やかに年齢を重ねるには、ストレスを溜めないことが一番大切

「健やかに年齢を重ねていく上で一番大切にしているのは、ストレスを溜めないこと。無理をせずに、好きな音楽を聴いたり、ダンスを踊ったり。そして、疲れたらしっかり寝る! アイドル時代は全く睡眠時間がなかったけれど、今はとにかくよく寝ています。そうやって自分が心地いいと感じるものを見つけて少しずつ実践できるようになったのは、歳を重ねることのプラスな一面かもしれないですね。あとは、同期のお友達の存在も大きい気が。先日(松本)伊代ちゃんのお家に遊びに行ったのですが、一緒にいるだけで笑いが止まらなくて(笑)。何の話をしたのかはよく覚えていないけれど、“今日は楽しかったな〜”とベッドの中で思い返しながら寝ると、とっても気持ち良く眠れるんですよ。今も同期のみんなと仲がいいので、すごくありがたいですね。

 コロナ禍にYouTubeなども始めてみましたが、いくつになっても新しいことを学ぶのは楽しいなって感じます。好奇心や挑戦したいことは常にたくさんあって、今やりたいのはやっぱりライブ! ファンの方と同じ空間にいてエネルギーの交換ができるので、アーティストにとってライブはすごく大切な場所なんです。40年にわたって私のライブに通い続けてくださる方もいらっしゃいますし、中には自分のお子さんと一緒に来てくださる方も。きっと、皆さん当初はアイドルに対して“違う世界にいる存在”というイメージがあったと思うんですよ。でも、私もファンの方も40年の間に結婚や子育て、介護など、お互いに似たような経験をしてきているじゃないですか。一緒に時代を生きてきた感覚があって、今ではまるで親戚のように思えるくらい近い存在に。昨年デビュー40周年を迎えてアルバムもリリースしたので、ぜひ皆さんに直接お会いしてお届けしたいなと思っています」

アイドル時代のヘアメイク事情や50代の今の美容まで。早見優さん「今はビューティが大好き!」_12

『Affection ~YU HAYAMI 40th Anniversary Collection~』 3枚組 ¥6600/ユニバーサル ミュージック
デビュー40周年のアニバーサリーアイテムの第三弾。歌手としてのヒストリーが刻まれた代表曲の数々に加え、今回初CD化となるレア曲や新曲も網羅した全42曲の3枚組CD。新曲は松本伊代・森口博子と歌う「今が一番好き」、娘2人と共に作詞し一緒に歌った「make lemonade」、親交の深いアン・ルイスが作詞を手掛けた「Your Last Woman」の3曲を収録。

「アルバムの収録曲を決める際は、YouTubeのライブ配信でファンの方々からいただいた声を参考にしました。どなたかが私自身も忘れていた情報番組のテーマ曲をリクエストしてくださって、『どんな歌だっけ?』と思い出せずにいたら、別の方がコメントで歌詞を書き込んでくださったのを見て思い出したり……(笑)。その時に限らず、ファンの皆さんの存在が私にとってすごく大きな力になっています」

取材中、自身のレコードジャケットの画像を見ながら「懐かしい〜!」とテンションが上がっていた早見さん。微笑むだけで周囲がパッと華やぐような明るいオーラは当時のまま。今回はご自身で衣装のスタイリングをされていたのですが、撮影はバストアップが中心と聞いて「せっかくだから、(石川)秀美ちゃんがプロデュースしているアクセサリーをつけようかしら?」とネックレスをプラス。そんなさりげない気配りからも、同期の皆さんとの仲の良さが伝わってきました。また、テスト撮影の画像をチェックし、「湿気が多いと前髪がキマらないのよね〜」とヘアアイロンで丁寧に整え直す姿も。昔も今も変わることのない、前髪への強いこだわりを感じたのでした。

1966年9月2日生まれ。当時住んでいたハワイでスカウトされ、1982年に「急いで! 初恋」で歌手デビュー。「夏色のナンシー」や「PASSION」など数々のヒットを飛ばす他、堪能な語学力を活かし『早見優のアメリカン・キッズ』(中京テレビ)などの教育系の番組でも活躍。また、俳優として多くのドラマや映画、ミュージカルに出演している。2023年8月5日にSHIBUYA PLEASURE PLEASUREにてライブ「Yes優Yes☆夏色のナンシー祭り 2023」を開催予定。

撮影/神戸健太郎 ヘア&メイク/伊藤こうこ ジャケット写真協力/ユニバーサルミュージック 取材・文/真島絵麻里 企画・構成/有住美慧(MAQUIA)

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