時代の空気を紐解く数々の著書が共感を呼んでいる文芸評論家の三宅香帆さん。美容オタクを自認する彼女に、美容やベスコスの現在地について伺いました。今回は、インタビュー前編をお届けします!

【三宅香帆さん】「アイドルが好きで、コスメがオタクグッズ化することも」<インタビュー前編>

文芸評論家三宅香帆さんが言語化する「美容の今と、ベストコスメという熱狂」

お話をうかがったのは
三宅香帆

文芸評論家

三宅香帆さん

Kaho Miyake 1994年1月12日生まれ、高知県出身。幼い頃から読書に親しみ、京都大学大学院在学中の2017年に『人生を狂わす名著50』(ライツ社)で文筆家デビュー。現在は文芸評論家として多方面で活躍を続けており、『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』(集英社)など著書も多数。

推し活カルチャーと美容の親和性を改めて感じています

テレビに出演する際は基本的にセルフメイクだという三宅さん。その知識量は並々ならぬものがあるが、美容の楽しさに気づいた時期は意外にも遅かったのだそう。


──美容に目覚めたきっかけは?


私、アイドルが好きで。彼女たちが美容を発信してくれたことで興味を持ったんです。二十歳をすぎた頃だったかな。それまでは本ばかり読んでいましたが、ハマるとネチネチ情報収集するタイプで(笑)。

コスメに関しても雑誌やSNSをチェックして、ワードに惹かれて買ったりも。最近で言うと『黄み吸収族』という言葉を知り、『私の悩みはこれだったんや!』と感動しました」


──アイドルや言語に対する三宅さんのディープな探求心が、美容にも向けられているのですね。


「アイドルとお揃いにしたくて買ったりもするので、コスメがオタクグッズ化することも(笑)。最近は推しが広告をしているコスメやメンバーカラーを使った『推しメイク』をする方も多いじゃないですか。

好きな人をさまざまな形で応援したいという『推し活』は戦後日本の特徴的な文化だと思いますし、男性が広告を務める化粧品も増えていて、推し活と美容との親和性も改めて感じますね」 

スマホによる撮影の日常化が美容熱の高まりを生んだ一因に

──現代のさまざまな事象を分析されている三宅さんは、「美容沼」と称されるほどの近年の美容人気は何から来ていると思いますか?


「スマホの普及で写真を日常的に撮るようになったのは大きいのでは。自分の顔を直視する機会が増え、ビジュアルを磨くことに興味をもつ人が増えた気がします


──たしかに。美容の流行で注目しているトピックはありますか?


最近は作られたものへの忌避感を覚える人が増えているなと感じていて。SNSでもPR投稿への抵抗感が強く、リアルな情報が好まれる。それってYouTubeの実況ジャンル人気に通じる気が。素が見えるほうがホッとするというか……。

美容においても素肌っぽさが支持されていて、杉咲花さんに代表されるような、自然体で美しい存在に惹かれる人も多いのではないでしょうか。一方で美容医療の流行という流れもありますが、メイクで頑張るよりも素肌を底上げするほうが心地がいいのかもしれないですね」

時代の空気感を映し出す。それが、ベスコスの面白さ

今や美容誌の恒例企画となったベスコス。その反響の大きさは〝熱狂〟とも言えるほど凄まじく、アワードとして日本独自の美容の文脈を生み出している。


──ベスコス企画の魅力とは?


受賞製品のラインナップに、その期の空気感が出るのが面白いですよね。私自身に関していうと、ベスコスシーズンはYouTubeでマイベストを紹介する方も多いので、その結果を見比べるのも楽しみになっています」


──アイドルも総選挙システムがありましたが、日本人はランキング好きな国民性なのでしょうか。


「最近は競争を煽るようなアイドルも減ってきて、どの業界も順位を競う意識が落ち着いてきたなと感じます。消費者側からしても、SNSなどのアルゴリズムが提示するその人に向けたおすすめに任せておけばいいという思想が強くなりつつあるようです」


──アルゴリズム任せだと、情報が偏る可能性もある気がします。


「そうですね。それにSNSの情報は真偽の判別がつけづらく、信頼性を求める人にとって美容のプロのお墨付きというのは重要な判断要素になるのではないでしょうか。今は爆発的なヒットが生まれづらい時代だからこそ、ベスコスのようなランキングで時代の空気を作ることにメディアの意味があるのかなと思ったりもします」

報われ消費が加速する今こそ、何を選び取るかを考えたい

──ベスコスの受賞アイテムが増産されたり、文芸の世界でも芥川賞などの受賞作がヒットしたりする背景には、消費者のどのような心理があると思われますか?


「自著の『考察する若者たち』で〝報われ消費〟という話を書いたのですが、最近は体験や消費に対して、どのくらいのリターンを得られるかを意識する人が主流になっていると感じます。美容においても、成分やエビデンスといったロジックで買う人が増えましたよね。

その一方で、どの業界も製品が増えすぎて何を選べばいいかわからない状態なのは共通していて。精査する時間がない中で間違いのない選びをしようとすると、ベスコスのように一定の評価が保証されたものに手が伸びるのでは」


──ネット通販が定着し、コスメの買い方が変わってきたことの影響もあるのでしょうか?


「そこもかなり大きいと思います。あとは骨格や顔タイプ診断の流行で似合わないものを避ける感覚が強くなり、失敗しないものを探すようになったという理由も」


──美容を取り巻く状況が変化する中、ベスコスはどのような役割を果たしていると思いますか?


「みんなにとっての最初の教科書みたいな感じですよね。ベスコスで得た情報の中から、自分の好きなものや合うものをどう選び取っていくのかが大切な気がします

三宅香帆さん MAQUIA 8月号インタビュー前編

情報の信頼度が高いベスコスは、みんなにとっての最初の教科書

記事が続きます
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