美女は等しく皆、運に愛されるのだろうか? 「MAQUIA」1月号から齋藤薫さん特別寄稿の『強運をつかむ美女』をピックアップ。
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KAORU SAITO
女性誌編集者を経て美容ジャーナリストに。多くの連載を持つほか、美容記事の企画、化粧品の開発など幅広く活躍。近著に『されど“男”は愛おしい』(講談社)。


美女は等しく皆、運に愛されるのだろうか? 
品格、知性、機知、コミュニケーション力。
自らの見目麗しさに溺れることなく、
生身で勝ち取った経験こそが女性を美しくし、
幸せにするという法則は、もはや万国共通なのです。


 美人は、美人だから強運を手にするのか? それとも、強運だから美人になれるのか?一体どちらだろう。いやどちらも違うと思う。頭の良い人だけが、美しさと強運を両方同時に手に入れる……これが正解ではないかと思うから。

 生き馬の目を抜くようなハリウッドで成功するのは、それ自体、奇跡に近いこと。そんな中、90年代以降はさらに難しくなった“正統派の美人女優”というポジションでの成功を収めたのが、ニコール・キッドマンだった。とは言えその人は、最初から“絶世の美女”だったわけではない。デビュー時のその人は、言わばブルネットの大女、“美人女優”枠にはなかったのに、その後、美しさをどんどん進化させ、途中“赤毛のドール系”を経て、ブロンドのクラシカルな絶世美女にまで上り詰めて行ったのだ。

 で、さすがはシャネル。ただ美しいだけではない、知的で優雅で品格あるこの人の美貌を放っておくはずもなく、かつてNo.5のミューズとして契約、輝くばかりの美しいCMが日本でも流れて、大きな話題となったもの。まさに、美貌とともに運をもつかんだ人だったのだ。

 それにしても何と鮮やかな進化!髪の色とともに、顔立ちまで変わっていった。直したのではなく自然に整っていったのだ。本人の意志によって。そういう意味で本当に賢い人。自分がどういうふうに変わればハリウッドで成功できるかを、よーく知っていたのだから。

 加えて言うなら、元夫トム・クルーズが、自分と別れてペネロペ・クルスに走ったことも、この人を徹底的に美しくした。愁いを帯びたセンシュアルな美しさへとこの人を導いていったのだ。 痩せたのではなく、白鳥のように華奢になった。若い頃の“肌の赤み”も“キュートなそばかす”もなくなって、まるで“ロウのような半透明の肌”になった。勝気そうだった目が、湖のように深い神秘性をたたえるようになった。

 つまり、単純に美しくなったのではない。おそらく男にとっては、何倍も何十倍も魅惑的な、匂い立つような美女へと進化した。女にとっては、簡単には真似のできない高次元の女性美を身に付けたのだった。

 この人を見て、確信した。女は知恵と向上心だけでここまで美を進化させられるのだと。そして1つ上の次元の美人となることで、まさに運をつかめるのだと言う事実を。せっかく美人に生まれてもそれを生かせず、もともと持っていた強運を手放す人もいるし、逆に運が良すぎて慢心し、キレイになるのを怠る人もいる中、むしろ自らの手で美を進化させた時にこそ、強運が生まれるのだと。

 じゃあ美を進化させるとは、一体何をすることか? 単に形を整えたり、肌質を改善したりするのは、今時むしろ簡単。そこに、相手の五感に訴えかける“センシュアルな引力”を宿すことなのだ。肌1つにも、体温や湿度、香り高さ、味わいといったものを宿せば、一斉に人の五感に訴えかけて、人を虜にできる。相手をがんじがらめにするほどに。

 それを髪のツヤにも、後れ毛のニュアンスにも宿したいし、瞳のうるうる、目線の強さにも宿したい。そして声の透明感や、囁くようなウィスパー感にも。そして仕草の嫋(たお)やかさ、立ち居振る舞いの凛々しさにも。何よりも、甘美なるフェロモンを真似たかぐわしい香りにも。ともかくそういうふうに、その人の存在、その人の動きすべてが、相手の五感のどこかに響き、そしてうっとりさせる。そういう美しさを身に付けることなのだ。


必要なのは知恵と向上心。自らの手で
美を進化させた時にこそ、強運は引き寄せられる。

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 もっと言うならば、一瞬で相手を魅了する瞬発力と、ずっと忘れられなくさせる持続性、2つの時間軸で人を魅了できること、それもまた、センシュアルな魅力の1つなのだろう。

 そして一方的に魅力を放出するだけじゃない、自分も相手に心惹かれているという、思わせぶりのオーラで相手をさらに惹きつける。そこまでをセンシュアルと言うのだろう。

 つまり、美しさを進化させるとは、独りよがりではない、人を巻き込む美しさを持つこと。ただの一元的な美しさを、3次元の 存在美に変えること。だからいちいち相手の心に絡みつく、それが逆に自分の運命を変えることになるのだ。何をしても人が注目してくれる、人が認めてくれる。そしてどんどん人との関わりが増えていく。それこそが人にとって強運、どんどん運を切り開いていく鍵なのだと気づいてほしい。

 つまり運は、運に任せるものではない。自分で作れるものなのだ。人に認められること、人に好かれること、それこそが強運の決め手であることに、早く気づいて欲しいのである。


MAQUIA1月号

撮影/小川比佐志〈ペールマネージメント〉 スタイリスト/小川夢乃 ネイリスト/下園麻実〈uka〉 モデル/永瀬まり


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