4年に一度開催される世界皮膚科学会(WCD 2023)に併せ、世界有数の研究者たちがSK-IIサイエンスエキスパートコミッティに集結。そこで発表されたのが、肌の未来に関わる炎症老化研究の最新知見だ。気になるそのプロフィールを貴重なデータとともに大公開!
炎症老化は皮膚科学のメインストリーム
WCDの会期中、別会場に設けられたブースでは、最新の美容機器や化粧品ブランドの新製品お披露目、研究発表などが行われていた。複数の研究機関と共同研究を行うSK-IIのブースでは、年代別、人種別の皮膚研究についての研究発表も。ここで明らかにされたのは、炎症老化の大きなトリガーは、年代や人種を問わず、紫外線ダメージだったという事実だ。
炎症老化研究の最前線が明らかに!
今年で25回目を迎えた、皮膚科のオリンピックと称されるWCD。この世界的にも権威ある世界皮膚科学会への参加を続けるP&Gは、マキア読者にもおなじみSK-IIのマザーカンパニーだ。今回の渡星の目的は、SK-IIサイエンス&イノベーションが長年にわたり続けてきた炎症老化研究の新知見を取材するため。かねてより共同研究を続ける京都大学、九州大学の担当博士からも直接、話を伺うことができたのだ。新知見は大きく4つ。まず①年代別、人種別の皮膚研究、②炎症老化のメカニズム、③独自発酵成分による炎症老化研究、最後に④炎症老化のはじまりを可視化する測定法の開発について。下のデータも参照していただきたい。
2017年より続けてきた20〜70代の幅広い世代の炎症老化テストで明らかになったのが、年齢にかかわらず紫外線を浴びやすい肌のほうが炎症老化が起きていること。また、老化細胞は肌の真皮層より表皮層で多く発現していることも判明。さらに年齢とともに毛細血管がゴースト化、酸素を求めて硬く角化することも明らかに。つまり、硬い肌は酸欠状態にあるということ、要注意だ。そしてもっとも革新的だったのが、慢性炎症の新たなターゲット抗炎症性サイトカインIL-37の発見だ。「IL(インターロイキン)は38まであり、IL-37は比較的新しく見つかったサイトカインで、皮膚においては表皮の顆粒層で多く発現しています」(辻博士)、「IL-37は、T細胞やランゲルハンス細胞など、免疫にも深く関与していることがわかっています」(椛島博士)と、実はIL-37が炎症老化をケアする大きな鍵を握っていたのだ。ならば、IL-37の活性を増やせばいいという着想のもと、さらなる研究がスタート。「独自発酵成分がIL-37の発現を促すことがわかったのです」(辻博士)。IL-37は種類も多く、新たな可能性も期待されているという。もうひとつ世界の注目を集めたのが④世界初の測定法の開発だ。「目に見えない肌の奥の炎症老化のはじまりを可視化することに成功しました」(宮本博士)。以上の①から④が各分野のエキスパートとSK-IIがタッグを組んで導き出した炎症老化研究の最前線。この事実、見逃したら損だ。
SK-II グローバルR&D リサーチフェロー
宮本久喜三博士
医学博士。秋田10年肌研究も担当。
九州大学 准教授
辻 学博士
九州大学大学院医学研究院准教授。皮膚科専門医で医学博士。WCDではIL-37と独自発酵成分の研究を発表。
京都大学 教授
椛島 健治博士
京都大学医学研究科皮膚科学教室教授。炎症老化研究、皮膚免疫学の第一人者。
老化細胞は表皮層でより多く発現
2017年よりハーバード大学医学部アレクサ・B・キンボール医学博士と共同研究を続けているのが、老化のはじまりとそのメカニズムの解明。まず、肌の表皮層と真皮層での老化細胞の遺伝子発現量を比較。老化細胞は表皮層でより多く発現していることがわかる。
炎症老化のメカニズム
毛細血管のゴースト化によって、細胞の増殖と代謝が停滞しはじめ、酸素を求めて角層の角化が進行。逆に表皮や基底膜は薄く、フラットになっていくことがわかった。
慢性炎症は20~70代全年代で起こっていた
年代別のタンパク質量測定は紫外線のダメージが少ない臀部と顔を比較。左では20代、40代が突出、右は30代から60代まで差はない。慢性炎症はあらゆる年代で起こっている。
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慢性炎症の新たなターゲット「IL-37」
九州大学との共同研究からたどり着いたのが抗炎症性サイトカインIL-37の働きだ。右図のようにIL-37の遺伝子発現量を増やせば、表皮細胞における慢性炎症は、一網打尽にできることがわかった。
おしゃれなトップにも直撃取材
各国のインフルエンサーやプレスが集まる中、一際目を引いていたP&Gグローバル スキン&パーソナルケア プレジデント マーカス・ストローベル氏。フレンドリーに応対くださいました♡
P&Gの最新研究を見て、感じて、学べる
ビューティサイエンスショーケースへ初潜入
皮膚科学会会場を後にして向かったのが、P&Gシンガポールイノベーションセンター。ここは最新の研究施設が備わったP&Gの頭脳とも呼べる場所だ。ブランドの研究テーマやフィロソフィーを伺った後、最新の肌測定器マジックスキャンの体験に。この肌測定器には、前ページで解説した④世界初となる測定法が応用され、わずか5分程度で、目に見えない肌の奥のエイジングの火種※1が可視化できるように。現在は、日本のSK-II各カウンターでも標準装備というから、嬉しい話だ。細胞内に潜入するVR体験の後は、いよいよ宮本博士のセッションへ!
初のVR体験は、細胞内の炎症老化※1退治!
500人の研究者が在籍するアジア最大のP&Gシンガポールイノベーションセンターには日本人の研究者も多い。そのひとり、松原顕研究員指導のもとVRを初体験。VR上で皮膚細胞内に分け入り、炎症老化のターゲットを退治するゲームを体験したが、想像以上に難しい。これが自分の肌内部なら、完全に火種は燃え上がっていたと実感。
赤い部分が微弱炎症で、白い部分が肌表面の凹凸でエイジングサイン。ともに重なるところにエイジングの火種※1が。
ついにエイジングの火種※1と対面(汗)
目に見えない領域を可視化する進化版マジックスキャンの体験に。測定器に顔をかざしたらあっという間に、エイジングの火種※1が画面上に浮かび上がった。ほうれい線近くに白、頬骨の上には赤! 重なっているところはあまりなかったが、お手入れ強化ゾーンが判明、やはり、気持ちが引き締まる。
観光名所ではお約束のポーズにも挑戦
伝説のマーライオンの口から放出される水を飲んでいる写真撮影にもトライ。対岸にそびえ立つマリーナベイ・サンズも威風堂々として、いつか宿泊してみたい♡と。コンパクトで街中きれいなシンガポールは期待以上!
SK-II宮本博士に聞く
健やかな毎日のための肌調和※2研究
メインイベントが、プロジェクションマッピングを用いての宮本博士の炎症老化サイエンスの解説だ。じつは宮本博士は、SK-II独自の秋田10年肌研究を担当し、また一貫してSK-IIの肌測定技術の開発に携わってきた。今回、SK-IIカウンターで得られた延べ120万人以上のビッグデータをもとに肌が揺らぎやすい人ほどエイジングの火種※1を抱えやすいなど、多くの発見を論文で発表している。宮本博士は、肌の揺らぎは一日のうち最大で9歳も肌年齢に差が出るほど大きなトリガーであることを指摘。「エイジングの火種※1を抱えないためには肌の調和を保つことがとても大切です」(宮本博士)。その解析データは下記でチェック!
エイジングの火種※1の可視化によって
独自成分の機能性も評価
「エイジングの火種※1が可視化できれば、美容成分の機能性も証明できるようになります」と語ってくれた宮本博士。確かに世界初の測定法の確立は、処方の進化にも大いに役立つはずだ。すでに、SK-IIカウンターで収集したビッグデータから季節性の傾向、揺らぎの幅などがデータ化されている。今後は、どうお手入れすれば肌が調和するのか、エイジングの火種※1が抑えられるのか、研究が続けられるという。SK-IIの炎症老化研究の次のステージは、目前まできているのかもしれない。
5つのサインから見えてきたお手入れの強化時期
今回、いち早く情報開示してくれたのが、秋田10年研究の解析データのひとつ。18歳から80歳までの日本人女性の肌を赤み、毛穴、キメ、ハリ、くすみ・シミの5つで測定。いずれも高かったのが8月と9月で、夏を越えた肌はあらゆる肌ダメージが表面化。お手入れをもっとも強化すべきシーズンということがわかる。
激旨のチリクラブは一番の思い出の味
シンガポールではこれを食べなきゃと言われていた、蟹をチリソースで炒めたチリクラブの名店に駆け込んで目標達成♪ あ~また食べたい。今回のMyベストフードに認定です。
※1 ハリの低下、乾燥による小じわ、キメの乱れ、毛穴の目立ちを引き起こす乾燥状態
※2 肌がうるおって、乾燥による赤ぐすみ・キメの乱れ・毛穴が目立たず、透明感のある肌状態のこと
取材・文/安倍佐和子 構成/火箱奈央(MAQUIA)
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