有村架純さん、黒木華さん、南沙良さんが演じる、崖っぷちに立たされた3人の女性たちの人生の旅路を描いた映画『マジカル・シークレット・ツアー』。塩野瑛久さんが演じたのは、そんな女性たちの人生の転機を生む存在・高志です。塩野さんに、役へのアプローチや高志という男が持つ孤独について話を伺いました。

塩野瑛久 インタビュー ポートレート

塩野瑛久

俳優

塩野瑛久さん

1995年1月3日生まれ、東京都出身。2012年デビュー。NHK大河ドラマ「光る君へ」での一条天皇役が話題を呼ぶ。近年の主な出演作に映画『SAKAMOTO DAYS』、ドラマ「未来のムスコ」「嘘が嘘で嘘は嘘だ」などがある。

死を身近に感じると、人は誰かにすがりたくなる

塩野瑛久 インタビュー ポートレート ヨリ

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——本作『マジカル・シークレット・ツアー』は、主婦たちが金の密輸で逮捕された事件に着想を得た物語です。この物語に最初どんな印象を抱きましたか?

塩野さん:とても面白く脚本を読みました。もちろん金の密輸は絶対にやってはいけないことなんですが、彼女たちがどんどん溌剌としていく姿がすごく印象的で。そこに不思議な愛らしさを感じたんです。

彼女たちは、何かに抑圧されながら生きてきたと感じさせる背景が見えるからこそ、余計に惹かれるものがありました。本当は犯罪なんかではなく、別の形で心を解放できていたらよかったのに、とはすごく思いましたが……。

——女性たちの背景を知ることで、どこか応援したくなる気持ちになりますよね。

塩野さん:そうですね。どこかカラッとしていて、彼女らの青春を覗き見しているような気にもなります。くすっと笑えるようなエンタメ要素もあるので、そのバランスがとても楽しかったです。高志の妻で主人公の和歌子を演じた有村(架純)さんのお芝居や現場での空気感もとても自然で、ご一緒できて本当に嬉しかったです。

塩野瑛久 インタビュー 映画

——今作では塩野さんは、会社のお金を横領し、解雇されたことを有村架純さん演じる妻・和歌子に隠したまま、突然くも膜下出血で倒れてしまう人物を演じています。この役を演じるにあたり、どのようなアプローチをされましたか?

塩野さん:僕が演じた高志は、外見はいたって真面目であるというところがポイントだと思っているんです。決して横領なんてするような人に見えないというところは、演じる上でとても意識していました。

横領して会社をクビになり、さらには病気で倒れる。そこまで追い込まれてようやく自分の愚かさに気づき、今まで当たり前だった環境に感謝の気持ちを持ち始める。その姿はなんというか、本当に「人間らしい」ですよね。

実は僕のまわりにも高志に近い状況になった人がいたんです。横領はしてないですけどね(笑)。その方も予期せぬトラブルに見舞われて、今まで向き合ってこなかった自分の弱さに直面し、人として丸くなっていったんです。その姿を見ていたので、演技にリアルに落とし込めた気がします。

自分がピンチに陥った途端、「家族を大切にしないといけない」という気持ちが急に強くなるのか、突然抱きしめたり、家族の気持ちを無視するような発言をしたり。高志の行動はなかなか共感はできませんが、理解はできました。

プライドが高く、行動と言動がややちぐはぐなのは、彼の持って生まれたキャラクターな部分もあるかもしれませんが、死を身近に感じると、人は誰かにすがりたくなるものなのだと思います。

役として対話を重ねることでたくさんの気づきを得た

塩野瑛久 インタビュー 全身 ポートレート

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——物語でははっきりとは描かれていませんが、高志はなぜ横領に手を染めたのだと思いますか?

塩野さん:彼の人生って、すごく順風満帆に見えますよね。奥さんもいて、子どももいて。だから大きな原因があったり、フラストレーションが溜まっていたり、ということではなく毎日に飽き飽きしていたんじゃないかなと個人的には思っています。

和歌子は、高志が言い出したことに対して、疑問を感じていても、自分の意見をあまり強く言わないタイプ。決して相手を否定しない。でもそれは彼女に意見がないということではないのに、高志は「和歌子は、自分の意見を持っていないから、自分が先導してあげないと何も決められない女性なんだ」と決めつけてしまっていたように思うんです。悪意はないんでしょうけど。

そして知らず知らずのうちに、亭主関白になり、和歌子に何もさせず、彼女の可能性をつぶしてきてしまったのかもしれない。だから変化や刺激のない毎日になってしまった結果、ギャンブルにのめり込み、横領に走ってしまったのかな、と。

——演じた高志という人物をすごく分析されていらっしゃいますね。今回、有村さんとお互いに役になりきって監督からの質問に答えるというエチュードをされたそうですね。

塩野さん:あの時間のおかげで役のキャラクターをぐっと掘り下げることができました。例えば、「お互い相手のことをどんな人物だと思って普段過ごしていますか?」と質問されたら、僕の視点で考えるのではなく、高志として答えるんです。「少し内気だけど、明るくていい子だよ」みたいに。役としての会話を重ねることで、たくさん気づきを得ることができました。

映画『マジカル・シークレット・ツアー』

塩野瑛久 マジカル・シークレット・ツアー 映画

2017年に中部国際空港で主婦たちが金の密輸で逮捕された事件に着想を得た、違法だけど痛快なエンタテインメント。二児の母・和歌子(有村架純)、奨学金の返済に追われる非正規雇用の研究員・清恵(黒木華)、キャバクラで働く未婚の妊婦・麻由(南沙良)の3人が偶然出会い、自分たちで密輸を始めるが……。

出演:有村架純、黒木華、南沙良、塩野瑛久、青木柚、斎藤工ほか
監督:天野千尋
6月19日(金)全国公開

ジャケット¥75900、シャツ¥39600、パンツ¥41800/SHEIK YERBOUTI(STUDIO FABWORK 03-6438-9575)

撮影/奥脇孝典 ヘア&メイク/草替哉夢 スタイリスト/能城匠(TRON) 取材・文/高田真莉絵

公開日:

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