アイドルであり、ジェンダーについても積極的に発言している和田彩花さんにインタビュー。10歳から過ごしてきたアイドルの世界で覚えた違和感。試行錯誤しながら自分のスタイルを築く中で和田さん自身が向き合ってきた、私たちを縛る価値観について聞きました。

和田彩花さんと考える「らしさ」について。 「私自身もイメージに縛られていたのかも」_1

「なんだか生きづらいのはなぜ?」
私たちをとりまく
YES!と言えないことについて考えてみた。

和田彩花さんと考える「らしさ」について

身にまとう服ひとつで
勝手なイメージがつくられると知った
和田さんはかつて、好きだった服を手放したことがある。その理由は、私服の印象から勝手なイメージを押し付けられ始めたから。
「15歳のデビュー当時からステージの上では自立した女性像を目指していました。でも、私服でピンクや花柄を着ていると『従順』や『清楚』という言葉が私を取り囲むようになって。自分のあり方や心の中まで決めつけられる気がしたし、キャリアの方向性まで変わってしまいそうだったので、そういう服は着るのをやめました。でも、今考えるとピンクや花柄が好きだったのは、私自身も“女の子”というイメージに縛られていたのかもしれないなと思います」
10歳でオーディションを受けて以来、アイドルらしさが求められる世界で生きる彼女の中で、その違和感は変化の芽となった。

Q.CMの“美しい女性像”を つい追ってしまう自分が嫌。

Q.CMの“美しい女性像”をつい追ってしまう自分が嫌。
自分がしたいことなら素直に選んで!
「きっと、それが絶対の価値観ではないと分かった上で選んでしまう葛藤があるんですよね。誰にどう見られるかという基準ではなく、自分が本当にそうしたいことなら気持ちのままに歩んでほしいなと思います」

生きている間に
選択肢にあふれる世界を見てみたい
「違和感に気づいてからは、大学院で学んだ美術史におけるジェンダーの不均衡と照らし合わせて考えるようになりました。たとえば、西洋絵画で描かれる女性像とアイドルには受け身の印象が強いといった“眺めるもの”としての共通点がすごく多くて。私自身も撮影で上目遣いや、迫られて嫌そうな表情を求められることに疑問を感じていたので、従順なイメージを持たれないように普段から意思表示を心がけたり、試行錯誤しながらやってきた部分もあります」
もちろん、「らしさ」は私たちを縛るだけのものではない。
「『アイドルらしさ』から見出された『女性らしさ』は選択肢を狭めてしまうけれど、自分が求める姿としての『女性らしさ』にこだわるのはいいことだと思います。そこにすべての女性があてはまるわけじゃないという認識は前提になりますが。結局、『自分らしさ』って自分の意思で選択していることなのかなと思います」
和田さんのウェブサイトのメッセージには「私の未来は私が決める」という言葉がある。今、心に思い描く未来は、いったいどんな世界なのだろう。
「これから登場してくる新しい世代の環境が選択肢にあふれていたらいいなと思っていて。女性らしさにこだわる必要もないし、いろんな人やカラーがあっていい。いつか自分が生きている間にそんな光景を見られたらいいなっていう願いはありますね」

PROFILE
2009年にスマイレージ(現アンジュルム)のリーダーに就任。2010年にメジャーデビューを果たし、2019年にアンジュルムおよびHello! Projectを卒業。アイドル活動を続ける傍ら、大学院で学んだ美術にも強い関心を寄せる。


MAQUIA9月号
撮影/天日恵美子 ヘア&メイク/前原京子〈吉野事務所〉 スタイリスト/宇佐美政樹〈TEAM Starter〉 取材・文/国分美由紀 構成/横山由佳(MAQUIA)

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