こっくり重い仕上がりの秋メイクもいいけど、この時期楽しみたいのは季節の変わり目を感じるようなメイク。「MAQUIA」10月号から、神崎恵さん流「夏から秋への変わり目メイク」をご紹介します。
神崎 恵
mnuit主宰。美容家としての活動の他、累計118万部を超える著書の執筆をはじめ、雑誌の撮影やトークショー、セミナーなどで全国を飛び回っている。待望の新刊『あの人がいつも色っぽいワケ』(大和書房)が発売になり、さらに多忙を極めている。
夏から秋への変わり目メイク
くすまないカーキの目元で
柔らかさと強さのある表情に
季節を美しく飾れる女は本物だと思う。日本には4つの季節があり、それぞれ日差しの色も違えば、空気の重さやにおいも違う。それは例えると、飾る絵の額縁や花を飾る花器のように、主役の見え方や雰囲気をがらりと変えてしまう大きな影響を及ぼすもの。その絵や、花が単体で見れば、完璧に美しくても、そこに注がれる光の色や温度が変わるだけで、完璧に見えていたものが、「イマイチ」に見えることがある。よく考えなければ、するっと流してしまうようなこの事実。実は、女であるわたしたちが心惹く美しさを纏うために、これを考慮しなければ絶対にその美しさは手に入らない。
春ならば、柔らかさを増した空気やほんのりピンクを帯びた日差しにあう、優しげな色や風合いのメイクや服。冬ならば、ツンと冷えた空気や色を深めた景色の中で浮き立つような鮮明で深みのあるものを纏う。そのときの季節に映えるものを選ぶだけで、心や感覚にぴたりとフィットしながらも、特別に美しい。そんな「美しいひと」になれる。
中でもその美しさの力量が試されるのが、季節の変わり目。4つの変わり目のなかでも、夏から秋へかけての変換期は一年のなかで一番難しい。夏の温度がたっぷりと染み込んだ夏肌は、深みと透明感を増す秋の色や質感が似合いにくい。だから、この時期「イマイチ」な自分。なぜか「しっくりこない」自分の出来栄えを実感するひとは少なくない。この難易度の高い時期を美しくつなぎたい。木や葉の色がドラマティックに染まっていくように、女としての存在感も心惹く色に変化させていきたい。
この季節の美しさの鍵を握るのは、透明感と深さ。一見相反するこのふたつの要素をバランスよく纏っていくこと。おすすめしたいのは、目元に甘さのない影色で深みを、口元には柔らかさを連想させる、ほんのり甘く儚げな色を組み合わせる。そして、その色はすべて肌に透明感を生むものであること。去っていく夏への切なさと秋の気配を感じさせる深みを顔の上に配置することで、この季節いちばんに心奪う美しいひとになれるはず。
カーキとピンク、辛さと甘さ、
相反するものを一緒に取り入れる
夏から秋へのつなぎ目。夏肌が秋色を浮かせてしまうこの季節。新しく揃えた秋色コスメも秋服も、なぜかしっくりこない、似合わない。似合わせるポイントは、肌を秋色に合うよう、美白ケアで透明感を育てながら、ちょっとのコツを忍ばせてメイクを組み立てていく。
肌は少しカバー力のあるもので、夏の余韻を隠す。目元には深みを出しつつ透明感も感じさせる影色で囲み、強さを添える。面積の大きい唇は、あえて深みではなく柔らかな色にとどめることで、ふたつの季節の気配をほどよく含んだバランスは完成する。目元には辛さ、唇には甘み。ひとつの顔の中に、異なる空気感を重ねることで、簡単すぎない、秘めたニュアンスを生むこともできるのがいい。
神崎流・美人レシピ
MAQUIA10月号
モデル・メイク・文/神崎 恵 撮影/菊地泰久〈vale.〉 ヘア/赤羽麻希〈joemi by Un ami〉 スタイリスト/黒崎 彩〈Linx〉 構成・文/若菜遊子(MAQUIA)
【MAQUIA10月号☆好評発売中】