「女性にとって笑顔に勝るメイクはない(A smile is the best makeup any girl can wear)」これは、かの大女優マリリン・モンローの言葉。「にこやかで感じがいい人」と「作り笑いしてる人」の違いは?メイクのコツは? パフォーマンス学の第一人者・佐藤綾子先生に、科学的根拠に基づいた笑顔の法則を教えていただきました。

- 第一印象は顔を見たその瞬間、1秒間でほぼ決定している
- 「作り笑い」がバレる理由は表情筋の動きにあり
- 笑顔のタイミングは「相手との関係性」と「今いる場」の両方を意識する
- あいさつ・あいづち・目が合った瞬間…コミュ力としての笑顔を習慣に
- 笑顔が伝える好意は好意を呼び、人間関係を好循環させる!
- メイクで“笑顔”を作るなら、弱点を隠すよりチャームポイントを際立たせる

信州大学教育学部卒業後、上智大学大学院・ニューヨーク大学大学院パフォーマンス研究学科を修了(いずれもMA取得)。立正大学大学院にて博士号(Ph.D.)取得。日本大学藝術学部教授を経て、現在はハリウッド大学院大学教授。日本で初めて「日常生活における自己表現のサイエンス」としてパフォーマンス学を体系化。「佐藤綾子のパフォーマンス学講座®」主宰。首相経験者を含む累計4万人にコンサルとスピーチ指導を行う。
第一印象は顔を見たその瞬間、1秒間でほぼ決定している
佐藤綾子先生(以下、佐藤さん):アメリカの心理学者ティモシー・ウィルソンの研究によると、人と人が初めて会ったとき、最初の1秒間で1100万要素もの情報を五感から受け取ると言われています。そのうち約1000万要素が視覚情報。さらに脳が実際に処理できるのはわずか40要素と脳科学者ジョン・メディナの研究によってわかっています。私たちはほぼ無意識のうちに、わずか1秒間で相手の印象を決定しているのです。
正確には、第一印象は「相手が自分の顔をちゃんと見始めてから1秒」が勝負です。うつむいたまま名刺交換をして、席に着いてから初めて顔を上げる——そのような人は、 出会いの瞬間から、すでに相手からそのような印象を持たれているのです。
私の実験では、2秒・5秒・10秒と映像の長さを変えて人が受け取る第一印象を調べてみましたが、どの秒数でも評価はほぼ変わりませんでした。つまり、最初に受けた印象はなかなか修正されにくいのです。
この背景には心理学の「一貫性の原理(法則)」があります。自分が下した第一印象をその後も一貫して持ち続けたい、矛盾させたくないという人間の心理的傾向が働くのです。つまり、好印象も悪印象も、最初の瞬間が分岐点なのです。
「作り笑い」がバレる理由は表情筋の動きにあり

佐藤さん:顔の表情は“3つのゾーン”で動いています。顔を「上(目~おでこ)」「中(鼻まわり)」「下(口まわり)」の3ゾーンに分けて表情筋の動きを分析したところ、顔の筋肉(表情筋)は主に随意筋(ずいいきん)に分類されます。随意筋とは自分の意識で動かすことができる筋肉の総称で、使わないとどんどんたるんでいく筋肉です。
顔を上・中・下の3つに分けて表情筋の動きを見ていくと、心から嬉しいとき、笑顔は3つのゾーンがほぼ同時に動きます。ところが、作り笑いは動く順番に「時差」が生まれ、ひどい場合は下の3分の1(口まわり)しか動かない。いわゆる「目が笑っていない」状態です。
日本人の笑顔の時間は、実は外国人と比べてかなり少ないんです。私の研究では、会話中に笑筋(眼輪筋・頬骨筋、口輪筋など笑顔に関わる筋肉群)が動いている時間は、日本人で1分間あたり平均34秒。イタリア人は56秒もある。明らかに日本人は笑顔の時間が短いんですよね。
だから対話中は意識して笑顔の時間を増やしてほしい。公の場や見知らぬ相手の前でヘラヘラするのではなく、二者の対話が始まったら、なるべく多く笑顔でいることが好感度を上げる秘訣です。
笑顔のタイミングは「相手との関係性」と「今いる場」の両方を意識する
佐藤さん:笑顔を先に出すのがいいか、相手に合わせるのがいいか。それは、相手の情報収集をしてから決めてください。相手を知らずに会いに行った場合と、調べてから会いに行った場合では、会った瞬間に出す表情が違います。
こちらから笑顔を先に出せば、1秒も経てばミラーリング(相手の表情を反射する脳の働き)が起きて、相手も笑顔で返してくれる可能性は高い。でも最初の一手は、やっぱり情報収集の結果で決めてほしいですね。
あと、相手がぼーっとしていれば10分経っても刺さらないこともある(笑)。笑顔を届けるためには、相手が自分を見るタイミングを読む観察眼も必要です。
パフォーマンス学では「相手との関係性」と「今いる場」の両方を意識することが基本です。悲しいニュースを笑顔で読んで非難されたアナウンサーの例があるように、笑顔のパターン化は場違いな印象を与えます。TPOに合わせた表情の切り替えができることこそ「感じのいい人」の条件のひとつです。
あいさつ・あいづち・目が合った瞬間…コミュ力としての笑顔を習慣に
佐藤さん:笑顔をいつ意識すればいいかって? 目が覚めてから寝るまでです(笑)。朝、通勤、職場なんて言う必要もない、起きてから寝るまでずっと!
鏡なんてなくてもいいんですよ。電車の窓に自分が映る、コーヒーショップのガラスに映る。そういうときが全部、練習の場です。赤ちゃんを見かけたら思い切り笑顔で声をかけてみてください。お母さんもきっと怒らないし(笑)、犬でも猫でもいい。表情筋の1つである「笑筋」を動かすチャンスです。
あとね、大事なのは声をかけられた瞬間。振り向いて、その後に笑顔を出すようでは遅い。声をかけられたら即笑顔で返す、それを身体に染み込ませてほしいですね。
笑顔が伝える好意は好意を呼び、人間関係を好循環させる!
佐藤さん:「また会いたい」と感じさせる笑顔の秘訣はとてもシンプルなんですよ。その秘密は、心理学の「返報性の原理(法則)」にあります。人は自分に好意を向けてくれる人に、好意を返したくなる。「この人、私と会って楽しそう」と感じた相手とは、次にまた会いたいと思うものです。
笑顔の好循環は自分にも返ってきます。心理学では、良い表情には「対他効果(相手に好かれる)」と「対自効果(自分が楽しくなる)」の2つのメリットがあることが分かっています。笑顔でいる人は自分も楽しくなり、相手も楽しくさせる。その好循環が「また会いたい人」の正体かもしれません。
メイクで“笑顔”を作るなら、弱点を隠すよりチャームポイントを際立たせる

佐藤さん:メイクにおける笑顔の正解は、トレンドカラーでも高価なコスメでもなく“自分のチャームポイントを生かすこと”。強みを際立たせると視線が自然とそこへ集まり、弱点が目立ちにくくなります。
表情の話しをすると、欧米人は口元を中心に表情を読む傾向があるのに対し、日本人はもともと相手の目から表情を読み取る傾向が強い。だからサングラスをされると嫌なのよ(笑)。
コロナ渦の時期、マスク生活で顔の下半分を隠していた期間が長かったかと思います。もともと日本人は口元をそこまで当てにしてこなかったので、コミュニケーションにおいてはそれほど不自由はなかったはず。それよりむしろ、表情筋を動かさなかったことが問題で、表情筋も筋肉だから、動かさなければたるんで下がる。それがほうれい線になるんです。
マスクの中でしっかり動かしていた人は、今も表情筋が動いているのでほうれい線は薄いのでは? 筋肉は人を裏切らないですから。アイメイクを頑張るのと同時に、笑筋そのものを動かす習慣をつけることも大事です。
また、美容整形で魅力的な笑顔は作れません。形は変えられても、最高の笑顔は随意筋を自分で動かしてこそ生まれるもの。メイクはあくまで「動く顔」をより美しく見せるためのツール。
笑顔は1秒、そして出すタイミングは「相手との関係性」と「今いる場」を考えて——。今よりもっと魅力的になるために、まずはこれを肝に銘じてみて。「感じのいい人」は生まれつきではなく、習慣でつくられるもの。まずは笑顔から始めてみてください。
イラスト/沼田光太郎 構成・文/佐藤 梓 企画/有住美慧(MAQUIA)
公開日:












































































