さまざまな不調が起こりやすいといわれる更年期。心や体に起きる不調のバリエーションは、なんと100種類以上! そこで、更年期のはじまりに起こりやすい主な症状と、今日から実践できるケア法、病院を受診する際のポイントなどについて、ジュノ・ヴェスタクリニック院長の八田真理子先生に教えていただきました。
聖マリアンナ医科大学医学部卒業。順天堂大学産婦人科研修医、千葉大学産婦人科医員、松戸市立病院産婦人科医長を経て1998年4月~聖順会ジュノ・ヴェスタクリニック院長に。
更年期とは?
「更年期とは、閉経の前後10年間を指す言葉。平均的な閉経年齢は50歳前後なので、だいたい45歳〜55歳ぐらいまでが更年期といわれます。女性は35歳を過ぎると卵巣の機能が徐々に低下し、更年期を迎えると卵胞ホルモン(エストロゲン)の分泌が急激に減少するため、人によっては心身にさまざまな不調が現れます。そうした症状を『更年期症状』、日常生活に支障をきたすほど症状が重い状態を『更年期障害』といいます。更年期症状は100種類以上もあるといわれ、月経不順に加えて起きるあことが特徴です。自覚症状として特に多いのは、肩こりや疲れやすさ、のぼせなど。症状の感じ方には個人差がありますが、『いつもよりしんどいな』と感じる状態が2週間以上続いた場合は我慢せず、ぜひ一度婦人科を受診してください」(八田先生)
更年期チェック
SMIスコア(簡略更年期指数)で セルフチェック
からだや心の不調が更年期障害によるものなのか気になるという方は、ぜひSMIスコア(簡略更年期指数)でセルフチェックをしてみましょう。症状の程度に応じて強・中・弱・無を選び、その点数の合計点で治療方針を考えます。
【症状の程度の評価基準】
強:症状があり、生活に支障が出ることがある
中:症状はあるが、生活に支障が出るほどではない
弱:ときどき症状が出る程度
※項目ごとに、どれか1つでも強い症状があれば「強」を選びましょう。
出典:厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/content/000969136.pdf
【合計点数による自己採点評価】
0~25 点:上手に更年期を過ごしています。これまでの生活習慣を続けていきましょう。
26~50 点:食事、運動などに注意を払い、規則正しい生活習慣を心がけましょう。
51~65 点:婦人科 ( 更年期外来 ) の受診をおすすめします。
66~80 点:長期(半年間以上)の計画的な治療が必要でしょう。
81~100 点:各科の精密検査を受け、更年期障害のみである場合は、専門医での長期的な対応が必要でしょう。
更年期の始まりに起こりやすい症状
自分では気づきにくい、更年期の始まりに起こりやすい症状についても伺いました。思い当たる症状があり、日々の生活に支障がある人は、早めに婦人科を受診しましょう。
月経不順や経血量の変化
月経周期の乱れは、更年期のサインのひとつ。卵巣機能が衰えてきて、女性ホルモン(エストロゲンとプロゲステロン)の分泌が不安定になることが原因。周期が短くor長くなる、経血量が少なくor多くなる、出血がだらだら続くなど、その変化にはかなり個人差がある。
肩こり・腰痛
女性ホルモンの減少によって代謝が低下し、血流が滞ることで肩こりや腰痛などの不快感を訴える人が増える更年期。自律神経が不安定になり、痛みに対して敏感になることも要因。普段の姿勢や生活習慣、運動不足による筋力低下や老眼などとも関係があるといわれる。
倦怠感・疲れやすさ
寝ても疲れが取れない、何もする気が起きない、すぐ疲れてしまうなどの症状は、女性ホルモンが減少することで体全体の機能が落ち、乳酸などの疲労物質を体外に排出できなくなっていることが主な原因。趣味を楽しむことや友人と会うこと、外出そのものが面倒に感じる人も。
ホットフラッシュ・汗をかく
ホットフラッシュとは、気温や室温などに関係なく顔や体が突然熱くなり、汗がふき出ること。血管を収縮・拡張させて体温を調節する働きを担う自律神経のバランスが乱れてしまい、体温調節がうまくいかないことが原因。のぼせた後に冷えたり寒気を感じる「冷えのぼせ」が起きるケースもある。
頭痛
女性ホルモンの変動が激しい閉経前は、血管の拡張と収縮の調節がスムーズにいかず、こめかみや頭の片側がズキズキと痛くなる片頭痛に悩む人も。また、肩こりや腰痛と同じく筋肉のこりや血液循環の滞りによって、肩や首の痛みとともに生じる緊張型頭痛もよくある症状のひとつ。
不眠
不眠の主なタイプは、ベッドに入ってもなかなか寝付けない「入眠障害」、夜中に何度も目が醒める「中途覚醒」、もっと眠りたいのに早朝に目が覚めてしまって寝付けない「早朝覚醒」、十分睡眠時間をとっているのに熟睡感がなく疲れが取れない「熟眠障害」の4タイプ。
イライラ
今までは気にならなかったことが急にイライラする、ささいなことで腹が立つといった症状は、ストレスホルモンをコントロールして精神を落ち着かせるセロトニン(幸せホルモン)生成に携わるエストロゲンが減少し、感情がコントロールしづらくなることが要因。
ひょっとして更年期かも⁉︎ と思った時の対処法
まずは自分の生理周期や経血量などの変化をチェック
「生理は健康のバロメーターのひとつなので、まずは自分の生理周期や経血量などの変化をチェックしてみましょう。そして、女性は仕事や家事、育児や介護などで頑張りすぎて自分のことを後回しにしてしまう人が多いもの。1日に5分でも10分でもいいので、体の痛みやお通じの有無など、自分と向き合う時間を持ってほしいと思います。日常の食生活は和食を中心に、味噌や豆腐、納豆などの大豆製品を積極的に摂りましょう。サプリメントで手軽に摂れる『エクオール』は、エストロゲンに似た働きをする成分で、更年期症状のひとつである関節の痛みの予防効果も認められています。私も10年ほど摂取していますが、大豆アレルギーの方と乳がんの方を除き年齢を問わず摂取可能です。また、婦人科では、不足するエストロゲンを薬で補う『ホルモン補充療法(HRT)』や漢方薬などを使った治療法で症状を改善することができます」(八田先生)
病院を受診するなら何科を選べばいい? 生理中でもOK?
婦人科を受診するのがスムーズ。自己判断せず早めに受診を!
「更年期症状は心や体の不調として現れやすいため、最初に内科や整形外科、メンタルクリニックなどを受診される方が多いようですが、更年期症状はエストロゲンの減少によって起こる不調なので婦人科を受診していただくのがいちばんスムーズです。受診のタイミングはいつでも大丈夫! 生理中でも診察は可能です。生理不順には、子宮頸がんや子宮体がん、ポリープなどが隠れている可能性もあるので、自己判断せず早めに受診してほしいと思います」(八田先生)
構成・文/国分美由紀 企画/有住美慧(MAQUIA)
最終更新日: