どこにでもいるような市井の人から、歴史上の人物、マンガのヒーローまで、その風貌までもをガラリと変えてどんな役にもなり切る俳優・鈴木亮平さん。公開されたばかりの映画『花まんま』への思いや、地方ロケや旅先でも欠かさないという体作りのこと、さらに“美”に対する意識についても、ユーモアたっぷりに語ってくださいました。

鈴木亮平インタビュー

鈴木亮平

俳優

鈴木亮平さん

1983年3月29日生まれ、兵庫県出身。東京外国語大学在学中に演劇を始め、2006年デビュー。その後、ドラマ『花子とアン』『西郷どん』『TOKYO MER~走る緊急救命室~』、映画『エゴイスト』『シティーハンター』などの話題作に出演。8月1日に映画『TOKYO MER~走る緊急救命室~南海ミッション』が公開。どんな役も自分のものとする実力派として人気を集めている。英検1級、世界遺産検定1級取得。

人情があって未熟なところが魅力。僕が演じた俊樹は“関西版・寅さん”なのかも

鈴木亮平インタビュー①

今回、映画『花まんま』で鈴木亮平さんが演じたのは、子どもの頃に両親を亡くし、男手ひとつで妹・フミ子(有村架純さん)を守り、育ててきた兄・俊樹役。舞台は大阪の下町、出演者もほぼ全員が関西出身とあって、現場ではテンポのいいセリフのやり取りが続いたそう。

「とにかく自然体で演じることを心がけました。地元・神戸に近い場所でのお話ですし、セリフもオール関西弁。おまけに実際の自分と同じ妹がいる兄役ということで、関西で生まれ育った自分がそのままあそこで生きていたら…そんな感じで臨みました。前田哲監督も細かく指導することなく、ずっとギャグを言ってリラックスさせてくださって。それを丁寧に拾っていくのは大変でしたけど(笑)。自然な雰囲気のまま自由に演じていいですよという空気の中で、その役を生きるために必要な言葉を各々が足しつつ、関西らしい途切れない会話のキャッチボールができたと思います」

ただ、同世代の人から違和感を持たれない“リアルさ”にはこだわったそう。

「関西人というと、コテコテに描かれがちですが、俊樹は温かみや距離の近さはありつつも、今の感覚をちゃんと持っているんです。昭和に生まれて、平成に青春時代を過ごし、さらに令和の価値観もちょっぴり入っている。『フミ子はモノちゃいます』というセリフに象徴されるように、ジェンダーについてもきちんとアップデートされた人物像になっていると思います。でも、やはり彼の一番の魅力は、人間らしい不完全さを持っているところ。結婚前にとある家族に会いに行くフミ子の行動を、心の奥底では理解しつつも、受け入れられない不器用さが好きだなと思いました。俊樹って、温かいけれどどこか未熟な“関西版・寅さん”なのかもしれません」

結婚のスピーチのシーンは、まるでドキュメンタリーを撮っている気分に

鈴木亮平インタビュー

妹役の有村架純さんとは、同じ兵庫県出身ながら初共演。事前の話し合いはあまりせず、兄妹のリアルな距離感を出すことを心がけたのだそう。

「実際に妹がいるからわかるんですが、兄と妹って胸の内をお互いにほとんど話さないんです。思春期になると妹は急に当たりがきつくなって、話しかけるだけでにらまれたり、兄貴の生き方を否定し出す。それを過ぎても兄妹の関係って微妙で、嫌われたくない、でも下手には出たくないという複雑な思いが兄にはあって。とても接し方が難しいんですよね。あんまりいうと実の妹に怒られそうですが(笑)。俊樹を演じる際にも、そこは意識しました」

劇中では、そんな兄と妹が満開のつつじをバックに本音をぶつけ合うシーンがあり、鮮やかな映像とともに強い印象を残します。

「つつじの名所として知られるすごくきれいな場所で撮ったのですが、遠くに見えるフミ子演じる有村さんの姿がそれは美しくて。まるであの世との狭間にいるような感じでした。すごく貴重な場面になったと思います」

映画の山場となるフミ子の結婚式のスピーチの作成には、鈴木さんも参加。自らが感じたことを落とし込み、そのセリフにリアリティを持たせたといいます。

「妹を育てたことを自分のアイデンティティとして誇ってきたら、どんな思いを込めるだろう? 俊樹になり切って、必死で考えました。すると、本当に妹の結婚式でスピーチをした気分になってしまって。物語なのですが、あの場面はまるでドキュメンタリーを撮っているかのような…不思議な感覚でした。フミ子が大人になるまでお世話になった方々に見守られて、兄としてお礼の言葉を伝えているうちに、『人は繋がって生きているんだ』と心底感じて、感極まってしまいました」

ロケ先でも旅先でも、ジムで汗を流す習慣を欠かしません

インタビュー②

これまでの作品の中でも、完璧に鍛え上げられた美しい肉体を披露している鈴木さん。今回のように地方ロケに長く出る際は、どんな風にその体型をキープしているのでしょうか?

「基本的に、トレーニングは毎日欠かさず続けています。今作の撮影のベースは京都だったので、現地のジムに入りました。旅先でも同様に、体を動かすことを忘れません。日常を離れると食生活がちょっと乱れてしまうので、バランスを取るために一層トレーニングに力が入ります。『旅先でもちゃんとしてる俺ってすごい!』と自己満足に浸りながら(笑)」

体を整えるために、食事にも続けているひと工夫があるそう。

「甘いものが大好きで、それだけはなかなかやめられないです。なので、せめて『口にするのは昼まで』と決めています。夜は絶対に食べません。それから、疲れが溜まると胃腸にきて、それが肌荒れに繋がることもあるため、なるべく水溶性食物繊維の海藻を摂るようにしています。よく食べるのは、わかめのみそ汁です。温かいから体への負担が少ないし、発酵食品の味噌を使っているのもあり、自分の体に合っている気がします」

人間の「美」は“水分”に宿る。年齢を重ねて実感しています

期待を裏切らない男・鈴木亮平さんの大人の色気にクローズアップ_5

自己の造形的な美しさにも妥協せずに、俳優としてだけでなく、人としての成長や成熟のために常に努力を惜しまない鈴木さん。「美しさの定義とは?」と尋ねると、こんなお答えが。

「肌や髪がきれいな方は、美しいと感じます。40代に入り、肌の乾燥や髪のパサつきを急に感じるようになりまして。慌てて昨年加湿器を買って、肌の保湿ケアをしたり、髪にもバームを使ったりと、試行錯誤しています。そう考えると、美しさのもとって『水分』なのかもしれません。潤っている方は美しい、そう思います」

不惑を過ぎ、体力や肌の調子は多少下り坂に入っているものの、「役者としてはこれからが楽しみ」と、その表情はとても晴れやか。

「俳優という仕事が面白いのは、年齢を重ねるごとに未経験の役に出会えること。例えばサラリーマンだったら、これまで課長の役を演じたことはあっても、役員や社長クラスはまだです。政治家役も、あと何年か経つとチャンスがあるのかなと。そういった初めての役柄のために、これから勉強すべきことはまだまだたくさんありそうだなと思います。この仕事をしている限り、この先もずっと知的好奇心が満たされそうで今から楽しみです」

美しい映像とともに家族の“絆”と“縁”を描く映画『花まんま』に主演

鈴木亮平  花まんまのビジュアル

©2025「花まんま」製作委員会

『花まんま』上映中
配給:東映

両親を亡くし、大阪の下町で二人家族として暮らす俊樹(鈴木さん)とフミ子(有村さん)。いよいよフミ子の結婚が決まったものの、遠い昔に封印したはずの、フミ子の<秘密>が今になって蘇り…。作中では、花びらを集めて作った愛らしいお弁当「花まんま」がキーアイテムとして登場。記憶や家族の繋がりを丁寧に描いた、心温まる作品。

遼河はるひインタビュー④

インタビュー中は、『MAQUIA』4月号の付録「ちゅるるんグロス」を手に取り、実際に塗って試して下さるなど、好奇心&サービス精神旺盛な気質を全力で発揮してくださった鈴木さん。初プランパー体験に「なんかスースーする!」と驚きながらも、可愛くなった自分の唇を鏡で見て、終始ご機嫌でお話してくださいました。MAQUIA公式インスタグラムでは、鈴木さんからのスペシャルメッセージ動画を配信しているので、ぜひそちらもチェックを!

撮影/小川健太郎(SIGNO) 構成・文/栗田瑞穂  企画/有住美慧(MAQUIA)

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