ここに紹介するのは、2025年上半期ベストコスメで栄えある賞に輝いたアイテムの、開発の舞台裏。そこには、既存のコスメにはない新たな着眼点で研究、開発に果敢に挑んだ研究者たちの、熱い想いと飽くなき努力のストーリーがあった。

ベスコス「ザ・プロフェッショナル」
受賞コスメ誕生の裏にこの人あり

SHUN OBIKANE
帯金 駿さん
コーセー研究所 先端技術研究室 データサイエンスグループ 研究員。データサイエンティストとして、数理的アプローチで化粧品課題の解決に取り組む。
AQ
毛穴美容液オイル

量子コンピュータのレシピで角栓崩壊はいとも簡単に
毛穴の角栓を構成する脂質にアプローチ。さらさらと毛穴まわりになじみ、肌負担を抑えながら効果的に角栓を除去。40ml ¥11000/コスメデコルテ
“すべての肌悩みは、数理的アプローチで解くことができる。利用しない手はありません”
「僕は、かっこいい音楽、おいしい料理、魅力的な人の秘密を数理的にとらえて分析するのが好き。肌悩みも、それを解決する成分の特性も、パラメータという変数で表すことができるんです。今回はそれを利用して、毛穴ケアの最適解を導き出せ、皆さんのお役に立ててうれしいです」(帯金さん)
量子コンピュータに毛穴ケアの「最適解」を出させた男
STORY
今回の課題において、これまでの手法で成分と配合量のレシピを導き出すとしたら100年以上※はかかるような最適解探しを、たったの10秒で実現。量子コンピュータがはじき出した最適解は、角栓ケアには使われない成分の組み合わせだった。
※一般的なコンピュータを用いた場合に想定される計算時間

大学では人工AIの研究をしていました

コーセー研究所は、従来の延長線上にない化粧品開発を目指し、量子コンピュータ技術の応用を模索していた。

毛穴の角栓は、皮脂とタンパク質が年輪のように折り重なり、固まったもの。まわりの皮膚のタンパク質を傷つけず、除去するのが難しい。

あらゆる年齢、性別、特徴の毛穴角栓を最も効果的に溶解する条件を導き出していた。

※クレンジングに適した成分の選定および配合量の組み合わせ(概算値)


指示は数式。hyde様の歌声を聴いていると、数式がひらめくことが多く……

飲み会に行く途中にひらめいた数式を、カフェに駆け込んで一気に書き出したことも。集中の後は休息も必須。

必ず最適解は出ると信じてはいたものの、前例がない挑戦なだけに、出てきた「解」で本当に角栓が溶解したときは感無量の帯金だった。


これからもデータサイエンスを駆使し、美を追求する意欲に燃える帯金。夢はhyde様に商品を使ってもらうこと。
MAQUIA 8月号
撮影/山下みどり イラスト/esk 取材・文/小田ユイコ 企画・構成/髙橋里佳(MAQUIA)
※本記事掲載商品の価格は、税込み価格で表示しております。
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