美容業界でビジネスを展開する人に徹底取材。掘れば掘るほど濃密なお仕事ヒストリーには、きれいを磨くため、人生をより豊かにするためのヒントがたくさんありました。
キレイのパワーで私も周りも幸せに
美容のお仕事現場を拝見!
高齢者向け美整容ケアセラピスト
高齢者向け美整容ケアセラピスト
大平智祉緒さん
看護師資格を持つメイクセラピストとして「美整容ケア」を行う。さらに介護施設の訪問サービスを取り入れ「Rings Care®」に名称を変更。リングスケア®チーフセラピストとして事業を展開。
History
2005
看護師資格取得、高齢者医療センターで看護師として勤務
2014
2015
メイクセラピスト養成講座修了、
資生堂化粧療法講座マスターコース修了
2016
NOTICE(メイクセラピー)開業
2017
2018
エンドオブライフ・ケア援助者養成基礎講座修了
ナーシングプラスビューティケア講座修了
me&nurse コネクト講座修了
2018
2020
なごみ訪問看護ステーションにて高齢者看護に従事
2020
2022
大学院に通い、修士号(看護学)を取得
2022
特許庁「I-OPENプロジェクト」に参加
「Rings Care®」の商標権取得
2023
「株式会社RingsCare」 設立
完全パーソナルな高齢者向け
美整容ケアサービスを行う
ケアする側もされる側も
ハッピーのリングを描きます
事業にはならず最初はボランティアから
「看護師時代に、学生が認知症の女性患者さんにネイルを塗ったんです。それまで全く表情のなかった方に笑顔が戻り、見ている私たちも思わず笑顔に。この時、『きれい』がもたらす効果を知りました」
こうした力を看護の中で活かしたいと思ったのがきっかけで、メイクセラピーを学ぶ。けれど医療現場では化粧ケアの前例は少なく、実践するのはハードルが高かった。
「医療や介護が必要な場では、身だしなみは後回しになりやすい。またメイクというと女性だけのものだとか、贅沢なものだと思われてしまうという障壁も。当初は事業にならずボランティアから始まりました」
本来、美整容ケアは患者自身の生きる力を引き出していくことが目的。
「施術は対話から始まり、肌に触れて状態を確認しながらスキンケア。血行が良くなり患者さんの顔に変化が現れるんです。その後、ご本人と一緒にメイクをしますが、あくまでもナチュラルに整えます」
ブランディングによりケアの価値が広く浸透
見た目の変化は心を変え、行動も変える。すると周囲の反応にも変化が。本人、家族、そして現場スタッフと、関わる全ての人にプラスの変化が生まれる。そんな美整容ケアをより浸透させたいと模索する中、大きな転機となったのが、特許庁が社会課題解決に取り組む企業を支援する「I‐OPENプロジェクト」への参加。弁理士ら専門家のアドバイスで自身が行う美整容ケアを「リングスケア®」と名付け、商標登録。これにより、ケアの価値やフィロソフィーが格段に伝わるように。サービスが行える施設開拓につながった。
「少しずつ私の想いに共感してくれる介護関係の方々とつながりができるようになりました。また、お金を払ってでも受けたいと思われるケアにすること、その価値を“見える化”することの大切さも痛感しました」
直近の課題はセラピストの育成と、市場開拓の両軸をバランス良く進めていくことだという。
「理想は最期まで美しく生き切れる社会。療養中であっても、『生きていてよかった』という瞬間が少しでも多くあってほしいと願っています」
触れることから信頼関係が
見た目が整うと自尊心が刺激され言動にも変化が!
MAQUIA 5月号
撮影/長谷川 梓 取材・文/轟木あずさ 構成/山下弓子(MAQUIA)
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