アイドルとして輝くだけでなく、役者として繊細な演技で魅せ、さらには、艶やかな美しさの裏側に、独特のユーモアや面倒臭い一面を隠し持つ男。気になり、惹かれ、気づけば深く恋に落ちている。松村北斗の底なし沼へようこそ。

光と影を併せ持つ静かな星(かがやき)
SixTONES
松村北斗の沼に落ちる
まつむら ほくと●1995年6月18日生まれ。静岡県出身。SixTONESのメンバーとしてはもちろん、役者としてもその演技力に注目が集まる。昨年はドラマ『西園寺さんは家事をしない』が大きな話題に。今年は映画『ファーストキス 1ST KISS』(2月7日公開)『秒速5センチメートル』の公開を控え、現在はドラマ『アンサンブル』(日本テレビ系土曜22時〜)に出演中。SixTONESの最新5thアルバム『GOLD』も大好評発売中!
僕を支える、推しの存在
──松村さんといえば「好き」を力に変える人というイメージがあります。
「推し活をするタイプですからね、僕」
──大好きな『水曜どうでしょう』を今も昔も繰り返し見続けているし。音楽も開拓はするけれど、結局、好きなバンドや曲に戻ってしまう。松村さんは同じものを愛し続ける傾向がありますよね。
「ときめくものがあったら、逃したくないんですよね。自分の中ではときめきってすごく大事で。だからこそ、推せるときに推そう、積極的に摂取しに行こうと。気になったらファンクラブに入ったり、調べたり掘り下げてみたりして」
──そんな松村さんの“推し活の美学”が知りたいです。
「自分のファンをコントロールしていると思われたくないから難しいな。『おまえらもこうしろよ!』と言っているみたいになるのはね、絶対にしたくないんですよ、ダサいから。なので、あくまでも個人的な美学ですが……。まず、全力で挑むといいますか。そのためにも、くだらない恥は捨てるようにしていますね。例えば、イベントに行くときとか「まんまとTシャツ着て、グッズも全部つけちゃうの?」って思うかもしれないけど「それでいいじゃないか!」と。ガチな自分を隠さずに胸を張ればいいんです!」
──推しへのときめきで松村さんは生き生きと発光しているのかも!? ちなみに、それは自分自身の力にもなったりしますか?
「めちゃくちゃ力になりますね。移動時間もずっとラジオや音楽を流していたり。基本、仕事以外の時間は推しからときめきを摂取。“やや推し”まで含めると、僕の1日の大半は“推し活”で成り立っている。また、それは仕事の活力に繋がることも。やっぱり、自分がときめいていないと、ときめきは渡せないと思うんですよ。実は僕、何に対してもときめくことができない過去があって。そうなると、心が動かないというか、何かをしようと思っても、自分の中から何も出てこなかったり……。それに、すごく苦しんだ時期があったんですよね。人間はいろんなものの集合体で、必ず何かの影響を受けて生きている。それは0から物を作る人もまた同じで、自分の中に蓄積したものが必ず出てくる。僕自身はプライベートで得たときめきを仕事で消費していく、その繰り返しのような気がしています」
次々と叶う「いつか」の夢
最近はありがたいことに役者としての仕事に恵まれていて、映画『ファーストキス 1ST KISS』では、いつか坂元裕二作品に出演したいという夢が叶った。振り返ると、憧れの大泉洋さんと共演できたり、大好きな岩井俊二作品に出演することができたり……僕はたくさんの「いつか」を叶えてしまった。縁なのか、運なのかわからないけれど、多分、僕は何かに恵まれているのだと思う。
お芝居は好きだし、現場も好きだけど、それを超える量のプレッシャーが存在するのも事実。正直、今の僕にはまだ、ときめきを楽しむ余裕がない。お芝居も、SixTONESの活動も、どんなに精一杯やっても追いつかない、みたいな感覚。でも、そんな感覚を味わえるのはきっと幸せなこと。だからもう、死んでいられないっていうか。「寿命が長くないとこれは追いつかないぞ」って、いつも思っている。
自分の未来について29歳の今はまだ漠然としていて、「どうなっていくんだろう」くらいの気持ちで頑張っている。例えば、自分の得意不得意、似合う似合わないが見えてきたり。「自分は何者なのか」っていうのが、見えるようになったらいいな。お芝居で言うと「こういう作風に自分の居場所があるんだ」とかね。この先、何が待っているのか現時点ではまだわからないけれど、30代、40代と年齢を重ねながら、何かを見つけられたらいいなと、今現在はそう思っています。
MAQUIA 3月号
取材・文/石井美輪 構成/萩原有紀(MAQUIA)
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