アルバム「ザ・ハイライト」を引っ提げて実現した「セクシーゾーン ライブツアー 2022 ザ・アリーナ」。MAQUIA編集部では横浜アリーナで開催された、8月14日(日)昼公演へ。Sexy Zone初の夏のライブ、そしてメモリアルな発表もあり、一際熱気に満ちた会場の様子をレポートします!
不在を感じさせない、熱のこもったパフォーマンス
これほど胸が震え、これほど笑顔になれるライブはあっただろうか。
8月14日、「セクシーゾーン ライブツアー2022 ザ・アリーナ」が行われた神奈川・横浜アリーナの昼公演。それは異例の幕開けだった。
開演時間になると、何の前触れもなくステージが照らされ、そこには衣装をまとっていない、Tシャツ姿の中島さん、菊池さん、松島さんが立っていた。報告したのは、コロナの療養のため、佐藤勝利さんがライブを欠席すること。
挨拶をせずにライブをスタートさせることもできたはずだが、佐藤さんのファンのため、そしてSexy Zoneのファンのため、「Show Must Go On」の精神でライブを完走することを宣言した。
会えることを楽しみにしていた佐藤さんのファンにとっては、戸惑いやもどかしさもあったはず。でもそれは、ステージに立っている3人、そして佐藤さん自身も感じていること。もっというと、休養中のマリウスさんだって。そのことが痛いほど伝わってくる生真面目な彼らの言葉に、ファンは静かに耳を傾けた。
「がんばっていきま勝利で、行きマリウース!」
3人で円陣を組み、高らかにライブの開始を宣言すると、会場は一転。またたく間に熱気に包まれた。
「SUMMER FEVER」から始まったステージのフォーメーションは、あえて佐藤さんのスペースを空け、歌も彼の音源を流すことで対応することに。
早着替えの際に菊池さんが佐藤さんの写真を取り出したり、松島さんがモノマネをしたり、佐藤さんのうちわに女性アイドル風のかつらをかぶせたりと、愛あるいじりが盛りだくさんだったが、特に印象的だったのは、アンコール前のラストの曲「Dream」。
菊池さんの提案により、ペンライトが佐藤さんのメンバーカラーである赤と、マリウスさんのメンバーカラーであるオレンジに灯されると、会場は美しい旋律と共に一体感に包まれた。その場にいたファンは確かに、不在だった2人の存在を感じたはずだ。
際立つ個性と、グループとして増す一体感
映画や舞台、ドラマやバラエティ番組など、グループを離れて活躍の場を広げてきた彼らの個性は、ライブでも際立っていた。そして、それぞれが違う光を放てば放つほど、グループとしての魅力や一体感が増していく。相乗効果は半端ではない。
全方位隙なし。どこをどう切り取っても完璧にアイドルだったのが中島さん。しなやかでいてキレのあるダンス、見せ方を熟知した豊かな表現力とプロフェッショナルさは、見るたびに研ぎ澄まされていくよう。
事務所に入所してすぐのジュニア時代、Hey! Say! JUMPのライブで投げキッスの快感に目覚めたという過去をMCコーナーで菊池さんに暴露されると、「俺の紀元前を唯一知ってるからね。お客さんが俺を作ったのよ」と返答。瞬時に自分の世界観を作り上げるワードセンスが、この日も冴え渡っていた。
「勝利のうちわを振ってくださっても、赤のペンライトを振ってくださっても大歓迎です。目をね、極限まで細めると、僕のことも勝利に見える瞬間があるかもしれません」
冒頭の挨拶で場を和ませたのは菊池さん。シリアスな空気になりそうなところを、一瞬で明るく転換させてくれるトーク力はさすが。
もちろんシルキーな声で歌い上げる「Heat」など、歌声の美しさもたっぷりと披露。多面的な彼の才能に、改めて惚れ直すライブだった。
そして、常にファンへの感謝と愛に満ちていたのが松島さん。ファンとの距離が近くなるリフトでのパフォーマンスでは、ひとりひとりの目を見て「見えてるよー」とリアクション。その細やかなファンサービスぶりは、アイドルとしてだけでなく、1人の人間としての底なしの愛情の深さの表れ。
口を開けばかわいさがダダ漏れるが、「Freak your body」などで見せる激しくクールなパフォーマンスでのギャップは、ずるいほど魅力的だった。
アイドル文化への愛と、アイドルとしての矜持
今回は、80年代、90年代を意識して作られたアルバム「ザ・ハイライト」を引っ提げたツアー。ステージ上部に設置されたパタパタ看板による楽曲表示や、ジュークボックスなどのレトロアイテムが並ぶセット、懐かしの歌番組を思わせる映像など、随所に遊び心が感じられた。
特に印象的だったのが、「Sexy Zone」、「君にHITOMEBORE」、「麒麟の子」などの既存曲を80年代風にアレンジした演出。へっぴり越しでローラースケートを履き、歌いながら右に左に、3人が連なりながらヨロヨロする姿はなんともチャーミング。
さらに、聖子ちゃんカット風のかつらを被り、清楚なワンピースを着て女性アイドルに扮する演出もあり、「Lady ダイヤモンド」、「Ringa Ringa Ring」を可憐な歌声で披露する姿は、本物の女性アイドルとしても人気が出そうなほどのクオリティだった。
それほど多彩な演出とアレンジでライブを作り上げられるのは、10年を超える活動で培った表現力と、楽曲の豊富さに他ならない。アイドルとして走り抜けてきた歴史の厚みが、説得力を持って伝わるライブだった。
特に、彼らの矜持を感じられたのが、終盤で流れた“アイドルが消えたもしもの世界”を描いたドラマ仕立ての映像。「速報です。アイドルが現れました」というニュース映像を経て、グリーンのセットアップに身を包んだ3人が「Forever Gold」を披露する流れは、「アイドルでいてくれてありがとう!」と、心の中で叫ばずにはいられなかった。
そしてドームツアーへ。彼らが描く未来
この日、割れんばかりの拍手が巻き起こったハイライトは、グループとして初となるドーム公演「セクシーゾーン ドームツアー2022 ザ・ハイライト」の発表だった。
2011年にデビューしてもうすぐ11年。中島さんはこの発表を「歴史的出来事」と語った。数々の先輩たちが立ってきたドームは、Sexy Zoneにとっても夢の場所。同年代や後輩グループが先にドーム公演を成功させる中、「俺たちはいつ行けるのか、いつ行けるのか」と答えのない自問を繰り返したという。
「10年越しの片思いがようやく実った」と表現するのが中島さんらしいが、「10年待った、10年経った、10年願った……」と言葉を噛み締める姿に、その思いの切実さを感じた。
発表してからずっと泣きっぱなしだった松島さんは、「みんなを待たせちゃった分、命をかけて幸せにするよ。ドームで待ってるよ!」という佐藤さんからのメッセージを代読しながらも、涙を止めることができなかった。
挨拶の中では、何度も分岐点に立たされてきた過去について、こう言及。
「挑戦し続けるのか、止めるのかという2択の中で、Sexy Zoneは挑戦し続ける選択を選んできました。僕も一時期、1人で考えさせてもらった時に、戻るという選択をしました。挑戦することを選んでよかったなと思います。きっかけを作ってくれたのはみなさんです。本当にありがとうございます」
決して平坦ではなかった道のりの中で、何度も迷い、何度も葛藤しながら止まらずに走り抜けた現在地は、思い描いていた夢の舞台に確実に繋がっていた。
菊池さんは、ドームツアーが決定したことを「Sexy Zoneの第二章」と表現。夢のその先へ走り出した、彼らの新たな始まりが楽しみで仕方ない。
撮影/詫間由佳 取材・文/松山梢