カラフルかつハイテンションな衣装とメイクに身を包み、平成の「シノラーブーム」を巻き起こした篠原ともえさんは、現在ファッションデザインを主とするアーティストとして国内外で活躍しています。2020年にデザイン会社を立ち上げ、今年5月には第101回ニューヨークADC賞「The ADC Annual Awards」で銀賞と銅賞の2冠を達成。再びメディアで目にする機会も増えましたが、四半世紀を経てますます透明感を増すその美しさが話題に。未来を見据えたスキンケアと、年齢を重ねるにつれ変化したというメイクとの付き合い方について、じっくりとお話をうかがいました。

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■篠原ともえさんが40歳を機に「やめた」ことは?

「30代まではきれいにする=ゴシゴシ洗うことだと思っていました」

くすみのないつるんとした肌が印象的な篠原さん。“シノラー”時代と比べ、佇まいは落ち着きを増しているのに、むしろ肌年齢は若返っているようにも見えます。どんなところに気をつけて、ケアをしているのでしょうか?


「以前から、疲れが肌に出やすいことに悩まされてきました。ただ、その“出方”が如実に変わってきたのが40代。30代まではニキビなどの吹き出物となって現れたのに、もうその元気もなくなったようで(笑)、カサカサと乾燥するようになってしまったんです。特にそれを感じたのが洗顔後。もともと指の力が強いこともあり、汚れをしっかり落とそうとして、ゴシゴシと顔をこすってしまっていたみたい。顔を洗った後に、赤くなってしまったり、よりカサつきが増したり……このままではいけない!と思って、始めたのが、“摩擦しない洗顔法”です。まず泡で汚れを包んだら、薬局などで購入した精製水をたっぷり含ませたコットンを当てて、そーっと拭き取ります。精製水を使うのは、水道水が合わないことが多い海外滞在中に編み出した方法。不純物が入っていないため、肌にやさしく、洗い上がりもさっぱり。特に肌が弱い方におすすめです!」

「生活リズムが夜型から朝型へ。通勤時間も創作のヒントに」

2年前に夫であるアートディレクターの池澤樹さんとクリエイティブスタジオ「STUDEO」を立ち上げ、現在は会社というチームでデザインやアートと関わっている篠原さん。オフィスに毎日通うのは人生初とのことで、その新鮮な体験が心身にもいい影響を与えているといいます。


「それまでは生活が本当に不規則で、夜遅くまで作業をしたら、昼まで寝て……という暮らしをしていました。でも、会社を作ってからは生活リズムが一変。朝8時ごろに起きて身支度をして、10時までには出社、夕方までに仕事を終わらせて、夜12時までには寝るという生活リズムに。体がラクになったように感じています。それと、通勤の時間も楽しくて! 電車の車窓から木々を見て『あぁ季節が変わったなぁ』と感じたり、早めに起きた日はひと駅手前で降りて街や人々を観察しながら歩いたり。そういう小さな気づきが、創作のヒントになったりするんですよね。移動時間も心の栄養にして、なるべく色んなものを生活の中でキャッチするよう心がけています」

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「自信がついたことで、メイクもミニマムに」

デビュー当時の篠原さんのトレードマークといえば、丸いピンクのチーク、スパンコールまで直貼りしてしまう個性的な“シノラーメイク”。切りそろえたパッツン前髪とお団子ヘアも、そのユニークさを引き立てていました。


「あの頃は、メイクやスタイリングで自分を表現することがポリシーでした。髪の毛もすごく時間をかけてアレンジするなど、創作のようにメイクを楽しんでいましたね。でも、デザイナーとしてキャリアを積み重ねることで自信がついたのか、段々と『外見は中身なんだ』と思うように。今は、ありのままの自分を少しだけ印象的に見せてくれるミニマムメイクが基本です。色はほとんど使わず、シェーディングで陰影をつけたり、細いアイラインを目尻の内側に少し足す程度。こんな風に肩の力を抜いて立っていられる今の私の姿を、30代の私が見たら、たぶんすごく喜んでくれると思います。30代の自分も好きでしたが、40代の自分もとても好き。いつでも、過去の自分が喜んでくれるような生き方をしていたい、そう思います」

■篠原ともえさんが40歳を機に「始めた」ことは?

「本当はジュースが大好き(笑)。でも最近は白湯やお茶を選ぶように」

これだけきれいな肌の持ち主となると、毎日どんなものを口にされているかも気になります。けれど、意外と食生活に関しては「ストイックとは無縁。暴食だってしますよ」と笑う篠原さん。


「たんぱく質は意識して摂るようにしていますが、おいしく食べるということの方が優先。お気に入りのお店で買ってきたお肉を、シンプルに焼いて食べたりするくらいですね。でも、最近飲み物にはちょっと気をつけているかも。本当は、果汁たっぷりのマンゴージュースとかが大好きなんですけど(笑)、そこをぐっと我慢して、朝起き抜けには電気ケトルで沸かして冷ました白湯を一杯。オフィスでも冷たい飲み物は控え、緑茶やローズヒップティーを選ぶようにしています。私にとって、お茶類はビタミン剤代わり。簡単にできる健康法のひとつです」

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「サングラスはおしゃれ小物ではなく“美容アイテム”」

薄く、乾燥しやすい肌の持ち主の篠原さんは、ここ数年、夏でも効果が強い日焼け止めを使わないようにしているそう。


「SPF値の高いものをつけると、乾燥が進んでパリパリになってしまうため、なるべく肌にやさしいものをこまめに塗り直すようにしています。でも、あまりにも肌が弱って、それさえも使いたくないなと感じた日は、サングラスがマスト。顔の下半分はマスクで守られていると信じて、無防備な目回りは、愛用しているオリバーピープルズのサングラスで隠すようにしています。サングラスをかけることに、最初は抵抗があったのですが、美容のためと思えば自然と取り入れられるように。仕事でデスクワークが増えて、ただでさえ目を酷使しているため、紫外線対策をして少しでも目を労わってあげたいという気持ちもあります。最近は、紫外線に当たると色がつく、偏光レンズのクリアメガネも購入。かけるようになってから、目の疲れ方が違うなと感じています」

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「疲れたら頭皮マッサージでセルフケア。自分の体に敏感でありたい」

近年、デザイナーとしての活躍ぶりが目覚ましい篠原さん。自身の版画作品をテキスタイルにした衣装制作や、今春開業した「OMO7(おもせぶん)大阪 by 星野リゾート」のスタッフユニフォームなど、創作の場は広がるばかり。実はこの日、撮影で着用したワンピースも、篠原さん自身がパターンを引き、縫製したものなのだそう。


「私が近年取り組んでいる、四角い布を余すところなく使い切って1着の服を作るという、『SHIKAKU』シリーズのものです。今回は裁断と縫製に1日という、とても短い時間で作りました。作業に集中していると、夜になってから、目や首、肩など、いろんな場所をハードに使っていたんだなと感じることも。これは今日のうちに疲れを取らなきゃ……と思ったら、自己流ヘッドマッサージで頭皮をほぐすようにしています。使うのは、自然から採取された椿油やアルガンオイル。自分が気持ちいいと思うところを、指を使ってもみほぐしていくだけですが、マッサージ後はふわっとラクになって、ぐっすり眠れるんです。派手さはなくても、静かに続けていけるケアが、自分には合っているみたい。これからも、自分の体に敏感に、長く付き合っていけるセルフケアを模索していきたいですね」

「40代を楽しむ今の人生を、きっと30代の私は喜んでくれると思う」デザイナー・篠原ともえさんの美容術_5

篠原ともえさん

デザイナー/アーティスト

篠原ともえさん

1979年生まれ、東京都出身。16歳でCDデビュー、歌手や俳優として活躍しながら、短大の被服科で学ぶ。その後、松任谷由実さんのステージ衣装デザイナーに抜擢されるなど、デザインの世界で実績を積み、2020年に「STUDEO」を設立。2021,2022年と2年連続でニューヨークADC賞に入賞し話題に。今後はファッションにとどまらず、プロダクトデザインや企業ブランディング等、包括的なデザイナーとしての活躍が期待される。

撮影/浜村菜月〈LOVABLE〉 ヘア&メイク/中山友恵 取材・文/栗田瑞穂 企画・構成/織田真由(MAQUIA ONLINE)

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