NEWSの増田貴久さんが1stソロアルバム『喜怒哀楽』を引っさげ、ソロライブツアー『増田貴久 1st LIVE 喜怒哀楽』を開催しました。音楽に様々な感情をのせて届けていく姿は、表現者そのもの。東京ガーデンシアターに集まった8000人がその歌声に酔いしれた、2月25日のステージをレポートします。

あらゆる感情をすくい上げ、聴く人の心を揺さぶる唯一無二の歌声

増田貴久 喜怒哀楽 東京ガーデンシアター ライブ写真 熱唱

最初はオールホワイトのレイヤードスタイルで登場。心を込めて歌い上げる姿が、照明で様々な色に染まっていく。

開演時刻と同時に暗転したステージの上に、ひとり歩いて登場した増田さん。その姿を1本のスポットライトが浮かび上がらせます。自然と沸き起こる拍手の中で鳴り響いたのは、アカペラで歌う『喜怒哀楽』の1フレーズ。伸びやかなボーカルは次の瞬間、高速ラップへと変化し、その後も次々と表情を変えていきます。優しい歌声で幸せやよろこびを、力強い歌声で確固たる意志を。1曲の中で“喜怒哀楽”の細やかな感情を表現できる歌唱力の高さは圧巻です。

つづいて、生バンドが奏でるピアノに弦楽器の音色が重なり始まったEvery Little Thingの『恋文』、そして自身が敬愛する山下達郎さんの『FOREVER MINE』。2曲に共通して印象的だったのは、歌詞の言葉をひとつひとつまっすぐに届けようと丁寧に語りかけるように歌う姿。会場内は増田さんが歌い始める前にふっと短く吐いた息の音まで聞こえるほど静けさに満ち、唯一無二の美しい歌声に聴き入っていました。

映像表現やDJパフォーマンス。細部にまでこだわりが感じられる演出

増田貴久 喜怒哀楽 東京ガーデンシアター ライブ写真 ダンス

チェンジ後の衣装は、タッセルつきの黒いトップスに、ピンクのパンツをあわせたエッジのきいたスタイル。キレのあるダンスにも会場が釘付けに。

増田さんが衣装のスタイリングから演出まで監修した今回の公演では、全編にわたってこだわりが。たとえば、『Symphony of Dissonance』は冒頭に流れる楽器のチューニング音が、タイトルの表す通り不協和音の交響曲へと変わる壮大なナンバー。ステージを覆う黒の紗幕がスクリーンとなり、そこに感情を吐き出すように歌う増田さんが映し出されるといった演出が曲の世界観とピッタリはまっていました。

『Girls That Dance』は、6人のダンサーを従え、一糸乱れぬダンスを披露。ステージの上に等間隔に置かれた照明機材がサーチライトのような光を放ち、そのパフォーマンスを彩ります。間奏でダンサーの名前がひとりずつ紹介されたあと、スクリーンには“照明機材”の文字が! ステージを共に作り上げてくれた機材も紹介するという、増田さんらしい遊び心のつまった演出もありました。

キレのあるラップや色気を感じる歌声が満載の『XXX』を歌う場面では、DJ・TAKAHISA MASUDAが降臨。ターンテーブルの前に立ち、その場でいろいろな音やボーカルを重ねていきます。完成したトラックにのせて拡声器やエフェクトがかかった数種類のマイクを駆使しながら歌い上げると、会場はクラブのような雰囲気に一変!

セットチェンジ中に4回に分けて流れた映像、その名も『まっすーの喜怒哀楽を引き出そう』は、本編とは打って変わって(?)、ゆるい雰囲気が魅力。スタッフがあの手この手で増田さんの喜怒哀楽の感情を引き出そうとするのですが、まず“喜”を引き出すために用意されたのは、増田さんの大好物だという餃子100個。中華帽をかぶった増田さんが「うん! うまい!」と機嫌よく食べ進める様子は、まさに“喜”そのもの。ところが、スタッフに「いちばん右のやつとか、おいしそうですよ」と誘導されてその餃子を勢いよく口に放り込むと、中には大量のワサビが!「ちょっと待って…やったな! あぁ~っ!!」と辛さに悶え苦しむかと思いきや、「ギリギリ食べられる辛さ! やるなら(ちゃんと)やって!」とダメ出し。結果、引き出されたのは「中途半端!」という感情でした(笑)。

これまでの自分も大切に。そんな想いが伝わってくるセットリスト

増田貴久 喜怒哀楽 東京ガーデンシアター ライブ写真 笑顔

最後はライブTシャツをアレンジをしたスタイルで登場。オーケストラとともにのびやかな歌声を響かせていた。

セットリストには、2007年のNEWSのコンサート以来約18年ぶりの歌唱となる『Pumpkin』や、今もなおファンから高い支持を得ている『Remedy』といった初期のソロ曲が並び、手越祐也さんと結成していたユニット・テゴマスのデビュー曲『ミソスープ』も! サビに差しかかると、客席に向かって一緒に歌うように両手を上げ、自身は下ハモを担当。(ちなみに2番のサビでは「下ハモやってみる?」というムチャ振りが(笑))すべての経験が今の自分を作り上げている――。そんな増田さんの気持ちが伝わってきた瞬間でした。

アルバムに収録された楽曲のクリエイター陣には、NEWSや増田さんのソロ曲を数多く手がけてきたヒロイズムさん、篠原とまとさん、そして以前から親交があるGRe4N BOYZの名前がズラリ。クレジットからも、増田さんがこれまでに築いてきた関係性を大切にしていることが感じられます。その中にはNEWSのメンバーである加藤シゲアキさんが作家として作詞した『おやすみなさい』も。ステージ上で、増田さんはかけがえのない仲間である加藤さんがつづった言葉をかみしめるように歌います。そして、NEWSや増田さんが歩いてきた道のり、そして歩いていくこれからと重なる歌詞に心が揺さぶられる『物語』。“人知れずに流した涙の数が ほら今日もまた こんな景色に出逢わせてくれた”。そう歌う増田さんの背後のスクリーンには客席のファンの姿が映し出され、増田さんと8000人が大合唱する美しい景色が広がりました。

セットリストの最後を飾ったのは、再び『喜怒哀楽』。オープニングではアカペラで披露したパートを、今度はマイクを通さずに生声で歌い上げます。全19曲を歌い終えた増田さんには、客席から惜しみない拍手が。それは「NEWSの増田貴久でした! ありがとうございました!」の挨拶にひと際大きくなり、終演後もしばらく鳴り止むことはありませんでした。

撮影/詫間由佳 取材・文/吉川由希子

公開日:

share