厚着をしても感じる体の冷えや、眠れないほどの手足の冷えを「冬だから」「体質だから」と我慢していませんか。体温アップ&冷え解消のカギは、日々の生活習慣にあり。まずは自分の冷えタイプを知り、今日から体の温めケアをスタート!
慶應義塾大学医学部卒。同大学外科学非常勤講師。医学博士。同大学病院外科、済生会横浜市東部病院外科副部長(血管外科部門長)などを経て、横浜血管クリニック開設。豊富な経験を元に、血管に関するあらゆる悩みに寄り添う。冷え症外来では医学的な見地からだけでなく、患者さんのライフスタイルや年齢を考慮して的確なアドバイスを行っている。
体温アップで全身の巡りを高め、不調知らずに
冷えを感じる理由は、様々な要因によって血液の流れが滞り、温かい血液がすみずみまで十分に行き届かなくなってしまうから。横浜血管クリニックで「冷え症外来」を担当する林忍先生によれば、女性は男性に比べて筋肉量が少ないため、体内で熱を生み出す力や血液を送るポンプ作用が弱いのだそう。そして、一度冷えると温まりにくい性質を持つ脂肪が多いことも原因のひとつ。
「ほかにも、月経による血液の排出や鉄分不足、ストレスやホルモンバランスの乱れによる自律神経の不調、薄着や締め付けの強い下着など、女性は冷えを招く要因を多く抱えています。冷えを放置すると、手足の痛みや頭痛、腰痛、便秘・下痢、不眠といった不調に繋がります」(林先生、以下同)
冷え症を改善し、体温を上げれば不調が軽減されるだけでなく、循環がよくなることで老廃物がスムーズに回収され、代謝もアップ。むくみや肌のくすみ改善などのほか、免疫を高めることにもなるそう。
「体温の適温を聞かれることがありますが、個人差があるので一概には言えません。ご本人が冷えや不調を感じていなければ、やや低めでも大丈夫。ただし、脳や内臓など体の深部が35度以下になると『低体温症』と診断されますので注意が必要です。冷え症は命にかかわる病気ではありませんが、東洋医学では“万病の元”といわれるほど大事なバロメーター。生活習慣を見直すことで、体温アップはもちろん、体の変化も実感できるはずです」
あなたの"冷え症タイプ"をCHECK!
まずは以下のチェックリストを使い、"冷え症タイプ"を確認しましょう。もっとも多くチェックが付いたものがあなたの冷え症タイプです。
●末端が冷えるタイプ
□手や足先が冷えやすい
□たまに立ちくらみをすることがある
□顔や手などが肌荒れしやすい
□爪が折れやすい
□入浴はシャワーだけの日が多い
□手足が冷えて寝つきの悪い夜が多い
□どちらかというと痩せ体型
「末端が冷えるタイプ」は、冷え症の中で、もっとも多いタイプ。血管が細かったりして血行が悪く、内臓を温めようと体の中心部に血液を集中させるため、手や足の末端まで熱が行き渡らないのです。
●下半身が冷えるタイプ
□顔がほてっているときも足腰は冷たい
□肌のくすみや目の下のクマが目立つ
□辛いものを食べると汗が多く出る
□喉が乾きやすい
□下痢や便秘になりやすい
□落ちつかずイライラしやすい
□寒暖差に敏感
姿勢の悪さや脚の組み方などで骨盤が歪み、血行・代謝が悪化して下半身が冷えやすくなっているタイプ。お尻周りや太ももに蓄積した老廃物がセルライトになることで、冷えもますます悪化。
●内臓が冷えるタイプ
□下痢と便秘を繰り返しやすい
□真冬でも周囲に比べて薄着で過ごしがち
□下腹部や二の腕が冷たい
□お腹にガスが溜まりやすい
□冷房や冷たい飲み物が好き
□サウナや40℃以上の湯船に入るのが苦手
□毎月、生理痛がツラい
ストレスなどによって自律神経のバランスが乱れ、末端の血管が収縮できなくなり、内臓に血液を集められないタイプ。下痢が続いたり、体のだるさを感じたり、風邪をひきやすくなったりしたら要注意。
●自律神経失調タイプ
□1年を通して冷暖房をよく使っている
□疲れやすく、また疲れが取れにくい
□肩こりがひどい
□日々の生活でストレスを感じやすい
□入浴はシャワーだけの日が多い
□ちょっとのことでイライラしがち
□何もやる気が起きない日が多くある
現代人のほとんどが当てはまりがちな「自律神経失調タイプ」。自立神経は内臓、血管などの働きを一定に保ち、バランスを整えることに一役買っています。この自律神経のバランスが崩れると、体温調整がスムーズにいかず冷えやすい体に。疲れやすくなったり、肩こりやイライラしたりするといった症状が出てしまいます。
冷えを改善するための10TIPS
食生活で体を温める
食生活に気を遣うことは、冷えはもちろん、健康な体のためにも大切。すベての冷えタイプの人が心掛けるべきことですが、とくに「末端が冷えるタイプ」「内臓が冷えるタイプ」の人は日頃から気にするべし。
【TIPS1】食材選びで“温め”を意識
バランスの悪い食生活や無理なダイエットは体を冷やし、血液をドロドロにして循環を悪化させる原因に。「陽性」の食材であるしょうがやにんじん、ねぎ、ごぼうなどの根菜類や香味野菜、ごまや黒豆、あずきなど、体を温めるものを積極的に取り入れて。もち米は体を温める食材なので、おこわや赤飯もおすすめ。
【TIPS2】調理法でも温活
代謝を上げる発酵食品である味噌を使った味噌汁や「陽性」の食材を使ったスープやホットサラダなど、温めて食べる調理法を意識すると◎。
【TIPS3】飲みものはホットが基本
飲みものは紅茶、ほうじ茶、烏龍茶、ココア、生姜湯などをホットで。また、朝は1日の中でも体温が低く、体内の水分が失われているタイミングなので、白湯を飲んで動脈や毛細血管を広げ、血液の流れをよくして体を温めやすくしましょう。
日常生活で体温を上げる
毎日の生活に取り入れる対策は、飽き性さんでも続けやすいのでぜひ習慣化したい。「内臓が冷えるタイプ」「自律神経失調タイプ」の人は、まず日常生活の見直しを。
【TIPS4】毎日の入浴は最強の温めタイム!
最も効率よく体を芯から温められるのがバスタイム。38~40℃程度のぬるめのお湯をバスタブにはり、じんわり汗をかくくらいまで少し長めにつかると効果的。ぬるめのお湯につかると、副交感神経が優位になるためリラックスして血管が広がり、血流を促進。42℃以上のお湯やシャワーは交感神経がたかぶり、血管が収縮するのでNG。「下半身が冷えるタイプ」の人は半身浴でもOK。
【TIPS5】入浴剤やルームフレグランスなどの香りでリラックス
好きな香りの入浴剤を使ったり、部屋の中をお気に入りの香りで満たしてリラックスすることも立派な温活。緊張状態に陥りがちな「自律神経失調タイプ」の人は積極的に取り入れてみて。
【TIPS6】冷えを感じたら深くゆっくり腹式呼吸を
深くゆっくりとした呼吸も副交感神経を活性化させる。冷えが気になるときはふーっとお腹をへこませて息を吐き、吐き切ったらストップ。すると自然にお腹が膨らんで、肺に空気を取り入れることが可能に。ベッドに入った直後など冷えを感じやすいタイミングで5分ほど繰り返すと体が温まります。
【TIPS7】侮るなかれ! マッサージで体温UP
指先の血行が良くなると全身の血行が改善され、疲れやだるさが取れて体温UP。冷え症における血流改善のポイントは、太い血管の血流をよくすること。以下のマッサージで下半身にたまりやすい血液を上半身に戻し、足先の血流改善を。ボディクリームなどを塗る際に行えば一石二鳥!
⒈ 床に体育座りする
⒉ 手の平で膝から太ももにかけて優しくさする
⒊ 足首から膝にかけて優しくさする
【TIPS8】腹巻をしたり、靴下を履いたりして寝る
良質な睡眠は体質改善において大切。足先が冷えて眠れない夜は、靴下を履いて寝ることで快眠に繋がる。ただし、足に汗をかいてむれてしまうと逆効果になることも。靴下は通気性が良く、締め付けが少ないものを選びましょう。また、お腹が冷える人は腹巻を取り入れるのも良い方法。
適度な運動で代謝&筋肉量UP!
「末端が冷えるタイプ」「下半身が冷えるタイプ」の人に、とくに取り入れてもらいたいのが適度な運動。筋肉量が少ないと体の中で生み出せる熱量が少なくなるため、冷えやすい傾向に。まずは筋肉をつけることから始めよう。
【TIPS9】ウォーキングなどの軽い有酸素運動を習慣化
運動不足は代謝低下と血流悪化を招く大敵。とはいえハードなスポーツをする必要はなく、毎日の生活で少しだけ歩く量を増やしたり、ウォーキングしたりするだけでも十分効果あり。ウォーキングを行う場合は、少し早歩きで軽く息があがるぐらいのペースをキープ。週3回、30分程度の有酸素運動を習慣にできると理想的。習慣化することで筋肉量も増えるので、体が熱をつくりやすくなるという嬉しい効果も。
【TIPS10】ストレッチで体をポカポカに
運動が苦手な人は、仕事や家事の合間、寝る前などに簡単なストレッチをしてみよう。とくに就寝前のストレッチで体を温めるとぐっすりと眠ることができる。また、冷え症改善には大きな筋肉が多い下半身に重点を置いてストレッチをすると効果的。そのほか、エスカレーターではなく階段を使うなど普段の生活でも体を動かすことを意識してみると体は温まりやすくなる。
撮影/藤澤由加 イラスト/二階堂ちはる 取材・文/国分美由紀 構成/有住美慧(MAQUIA)
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