肩や腕に違和感がある、激しい痛みで上がらない……など、ある日突然、症状が始まる四十肩。整形外科医で、ピラティスのインストラクターでもある武田淳也先生に、四十肩との向き合いかた、悪化予防のためのエクササイズ方法について伺いました。
- まずはセルフチェック。こんな症状があったら、あなたは四十肩!
- そもそも四十肩とは?
- 明確な原因は不明⁉︎
- 四十肩の痛みはどれくらい続くの?
- 四十肩の痛みを今以上悪化させないためには?
- 四十肩の痛みを取る方法1_エクササイズで痛みを緩和
- 四十肩の痛みを取る方法2_ニュートラルポジションで痛みを緩和
医療法人明和会 整形外科 スポーツ・栄養クリニック(福岡・代官山)理事長、Pilates Lab(福岡・代官山・青山Reserve)代表、Motor Control: Beyond Pilates代表・ファウンダー、日本ピラティス協会・研究会会長。1993年、福岡大学医学部卒。日本整形外科学会認定専門医・スポーツ医・運動器リハビリテーション医・脊椎脊髄病医・リウマチ医、日本スポーツ協会公認スポーツドクター、日本骨粗鬆症学会認定医、日本抗加齢医学会認定専門医。日本人初の認定Comprehensive指導者、認定リハビリテーション指導者を取得し、国内で初めて医療にピラティスを取り入れる。2010年に考案した「カラダ取説」プログラムの普及に尽力を注ぐ。日本カラダ取説協会会長。
まずはセルフチェック。こんな症状があったら、あなたは四十肩!
□肩から高い位置に腕を上げられない
□肩を上げると二の腕に痛みを感じる
□就寝時、腕や肩が痛くて目覚めることがある
□腕を後ろに回すと痛い
そもそも四十肩とは?
「正式名称は『肩関節周囲炎』と言い、肩関節の周りに炎症が起こりスムーズに動かせなくなる症状のことを指します。40代、50代に頻発するため一般的に『四十肩』『五十肩』といわれているのです。実際には30代中頃から70代まで、幅広い年齢層の方に発生し、特に女性に多く見られます。男性の場合は、糖尿病や甲状腺の疾患、肺疾患のある人に起こりやすく、長期化することも。
よく肩こりがひどくなった状態のことを、四十肩・五十肩だと思っている人もいるようですが、実は微妙に違います。肩こりは筋肉疲労ですが、四十肩・五十肩は肩関節とその周囲の炎症です。
いずれにせよ、いろいろな原因により、肩本来の機能的な理にかなった動きができにくくなり、その結果として、肩関節内に圧力や張力、振動力などの力学的な刺激といったメカニカルストレスも加わって、炎症が生じるというふうに考えられています」(武田淳也先生、以下同)
明確な原因は不明⁉︎
「実は、四十肩・五十肩の原因は未だに分かっていないんです。ただ、肩関節は股関節などと同じ球関節で、上腕骨の先が球状(上腕骨頭)になっていて、受け皿になる関節窩にはまっている状態です。しかしながら、その受け皿はけん玉の受け皿よりも浅く、とても不安定な形でついています。
そのまわりに筋肉や筋肉同士をつなぐ腱板(肩関節を安定させている4つの腱)、関節液が入った関節包(関節を包んでいる膜)などがあり、これらが複雑かつ微妙に助け合うことで、腕を支えて動きを実現しています。
『肩関節周囲炎』は両肩同時に症状が出ることは少なく、右肩が痛みだしたら、しばらくして左肩も……と、時期をずらして両肩に発症することが多いようです」
四十肩の痛みはどれくらい続くの?
「四十肩・五十肩は特に大きなきっかけはなく、ある日突然、肩に痛みが発生します。その後、数週間から数か月かけて少しずつ、あるいは急速に痛みが増加。はじめは“何となく肩に違和感がある程度”だったものが、“少し動かすだけでとてつもなく痛い”や“あまりの傷みに夜起きてしまう”などの強い症状が現れることも。このような激しい痛みが数か月~1年以上続く場合もあります」
四十肩の痛みを今以上悪化させないためには?
「四十肩・五十肩はすぐに治るものではなく、最低でも数か月、長ければ数年の経過を有するのが特徴です。
病院で通常受けられる一般的な治療は、内服薬(抗炎症・鎮静剤)や湿布薬、塗り薬の処方。あまりにも痛みが強い場合は、筋弛緩薬の注射をすることもあります。痛みを和らげるためにマッサージやストレッチを自己流で行う方も多いようですが自己流はおすすめしません。必ず正しい方法で行いましょう。
激痛が走る炎症期は、安静第一! 炎症が強い時は熱い温度のお風呂は控え、シャワーで軽く汗や汚れを流す程度、もしくはぬるめのお湯に浸かるように」
四十肩の痛みを取る方法1_エクササイズで痛みを緩和
腰や骨盤を安定させるのと同時に、胸椎の柔軟性を引き出して、丸まった猫背の不良姿勢を改善。そうすることで、肩甲骨の動きが回復し、痛みを和らげたり、再発を予防します。
⒈ 仰向けになり、膝を立てる。両膝、両足の間にこぶしひとつ分のすき間を作る。手のひらを下にして床に置き、息を吸って準備をします。
⒉ 息を吐きながら、体を少し左にひねって背骨の左側を意識します。背骨を下のほうから順番に床からゆっくりと離していきます。肩甲骨のあたりまで上体を上げたら、ここで息を吸いながら、空中で左に傾けた上体を元に戻し、胸から膝が真っすぐになるようにキープ。
3. 続いて、体を少し右にひねり、息を吐きながら、ゆっくり背骨の右側を上のほうから順に床につけていき、1の姿勢に戻る。同様に逆側の動き(体を右にひねる→空中でひねりを戻す→左にひねる→元に戻す)も行う。これを左右数回繰り返して。
4. 次にうつ伏せになります。うつ伏せに寝た状態で、手のひらは横に置き、脇を締めます。このとき、ひじは天井に向けるように意識して。額は床につけて、おへそは床から引き上げる。鼻から息を吸って次の動きの準備をしましょう。
5. ひじをかかとのほうに伸ばすイメージで、床を軽く手で押し、息を吐きながら胸を上げます。両肩甲骨は背中の中央側に寄せて、お尻のほうに下げます。首・頭は胸椎の延長線上に位置するように。そのまま再び息を吸って胸の前を膨らませながら、さらに胸椎の伸展を引き出し、息を吐きながら4の姿勢に戻りましょう。
四十肩の痛みを取る方法2_ニュートラルポジションで痛みを緩和
「長時間のスマホ操作やパソコン操作などで、知らず知らずのうちに猫背などの不良姿勢になっていることも四十肩・五十肩を招きやすい原因のひとつとして考えられています。日々の生活の中で、『姿勢を正す』『大きく深呼吸をする』『胸を開く』『肩や首をすくめない』など、重心線に沿った“ニュートラルポジション”を維持するように意識しましょう」
イラスト/二階堂ちはる 構成・文/佐藤 梓 企画/有住美慧(MAQUIA)