「あれ、いつの間にかこんなところにほくろが!」「年齢とともに増えた気が」「これってほくろ? シミ?」など、気になるほくろを抱えている人は多いもの。今回は、ほくろのできる理由からクリニックでの治療法まで、美容皮膚科 タカミクリニック 副院長の山屋雅美先生にうかがいました。

突然ほくろ顔

教えていただいたのは...
山屋雅美先生

美容皮膚科 タカミクリニック 副院長

山屋雅美先生

美容皮膚科医。埼玉医科大学卒業後、東邦大学医療センター大橋病院皮膚科、三井記念病院皮膚科勤務を経て、2011年に美容皮膚科タカミクリニック入職。2021年より副院長。ニキビや毛穴などの美肌治療、シミ・しわ・たるみなどのエイジング治療、ほくろや疾患悩みまで幅広く診療を行う。

ほくろって一体なに?
ほくろにまつわる疑問Q&A

Qほくろってなに?
A メラニン色素を作る細胞が
変化してできる母斑細胞

「ほくろは医学的には、メラニン色素を作る細胞が変化した『母斑細胞(ぼはんさいぼう)』が増殖してできたもの。その大きさにはかなりの幅がありますが、一般的にほくろと呼ばれるのはかなり小さめの母斑細胞母斑(ぼはんさいぼうぼはん)のこと。皮膚の浅い部分にできるもの、真皮にできるもの、ふくらみがあるものなど、その種類はさまざまです」(山屋先生、以下同)

Q どうしてできるの?
A 紫外線などの刺激で
肌が傷むと出現しやすく

「肌質にもよりますが、紫外線を浴びている期間が長くなったり、刺激にさらされるとほくろが出現しやすくなります」

Q どんな種類があるの?
A ほくろの種類は膨大。
注意すべきは悪性のもの

「種類は膨大にあり、一般の方が見てもなかなか区別はつきません。ただ、ほくろと思っていたら皮膚がんであるケースがごくまれにあるので、気になるものは経験を詰んだ医師に診てもらうのがおすすめ」

Q ほくろができやすい体質は?
A 本来は生まれつきあるもの。
遺伝も関係する可能性大

「赤ちゃんにはほくろがないと思われがちですが、細胞が増殖していないために目立たないだけ。3〜4歳になると目で見てわかるようになりますが、生まれつきのほくろはそこまで大きくなりません。また、親にほくろが多いと、子どももほくろが多いといった傾向はあるようです。ほくろができやすい体質に遺伝は関わっていると思います」

Q ほくろができやすい部位は?
A 顔や腕、手の甲など
紫外線が当たりやすい場所
「紫外線を浴びる機会が多い方で、顔や腕にほくろができたとおっしゃる方は多いですね。洋服で隠れているところにはできにくく、ほくろだと思ったらイボだったというケースもしばしば」

ほくろができやすい部位

ほくろは紫外線などの刺激でできたり大きくなったりするので、露出しがちな顔や腕、手の甲などにできやすい傾向が。

Q いいほくろと悪いほくろの見分け方は?
A 出っ張っているほくろは悪性の疑いが。
クリニックで除去を
悪性でないほくろは、基本的には放置して大丈夫です。ただ、出っ張っているとムダ毛処理の時にひっかかって出血してしまったり、目に近い位置にあって邪魔だったりといったケースも。そういう場合は、クリニックやほくろ除去を行なっている皮膚科で早めに取ることをおすすめします」


Q ほくろ、シミ、イボの見分け方は?
A プロでも見極めは難しいもの。
シミだと思ったらほくろの場合も

茶色いものはシミ、黒いものはほくろと大別できますが、『小さいシミが急に出てきた』と相談されて診察したら、茶色のほくろだったというケースも」

小さいほくろ

シミのように見える、小さい茶色のほくろ。濃くなるとほくろとわかるけれど、この段階で一般の人がシミかほくろかを見極めるのは難しい。

「シミには膨らみがないので、茶色くて膨らんでいるものはイボであることが多いですね。ただし小さくて平らなものはほくろかシミかプロでも区別しにくく、シミ治療をしても再発してほくろ治療に切り替えることがまれにあります」

いぼ、色素沈着、肝斑、老人性色素斑の特徴

いぼ色素沈着肝斑老人性色素斑

ほくろとよく間違えられがちなのが、いぼや色素沈着、肝斑、老人性色素斑(シミ)です。その簡単な特徴をまとめました。

■いぼ
いくつかの種類があるが、多いのは脂漏性角化症ともいわれ、茶色くふくらみがあるもの。大きくなるほどに色素が濃くなり、ほくろと区別しにくくなる。

■色素沈着
ニキビや傷、湿疹などの炎症が刺激となってメラニンが生成され、それが残ったもの。クレンジングやマッサージなどが強すぎて生じるケースも。

■肝斑
紫外線やホルモンの影響で大きくなるといわれ、30代以降の女性の頬上部に、左右対称に出現することが多い。強いレーザー照射で悪化することが多く、通常のシミとは違う治療が必要となる。

■老人性色素斑(シミ)
紫外線や老化の影響で出現する円形で茶褐色のもの。30代からできることが多い。

Q ほくろの除去法を教えて
A Co2レーザーでの除去。
大きめなら手術を
「5mm以内であれば、炭酸ガスレーザーで細胞を削って取るのが一般的。ただし、サイズが大きい、急に大きくなったなど悪性が疑われるものは、手術で除去して悪性かどうか細胞を調べます」

ほくろ除去前ほくろ除去後

「ほくろはシミよりも色が濃く小さめなことが多いですが、シミと違って肌の奥深くまで根があるケースがしばしば。母斑細胞が増えるに従って隆起してくるので、気になる場合は早めの除去がおすすめ。大きなものを炭酸ガスレーザーで一度に取ろうとすると跡が残るので、少し削って様子を見ます。写真のような大きめのほくろは、まず炭酸ガスレーザーで削って小さくし、その後、シミ治療などに使われるメラニン色素に反応するレーザーを照射。サイズが大きい場合は、こういった二段階の治療を行います。たくさんある場合は少しずつ取るなど、気長に治療する姿勢が大切です」

5mm以下ほくろ

「5mm以下のほくろは、炭酸ガスレーザーで削って治療。照射時間は3〜5分程度。術後は傷の治りを促す外用薬や、色素沈着を防ぐクリームが処方されます」

Q 赤いほくろが! これってなに?
A チェリースポットと呼ばれる血管腫
「ほくろのようだけれど、赤くぷつんとしているのは毛細血管から出てきている血管腫(良性の腫瘍)の一種です。ほくろとは別のもので、悪性ではないので問題ありませんが、取る場合はほくろと同様に炭酸ガスレーザーで治療します」

赤いほくろチェリースポット血管腫

Q 洋服や下着の擦れでほくろができる?
A ほくろではなく、いぼの一種です
「洋服や下着が擦れて首や脇などにできるものは、ほくろではなくアクロコルドンといういぼの一種。良性腫瘍なので悪化する心配はありませんが、大きくなって擦れで炎症を起こすことも。いぼも炭酸ガスレーザー、またはVビームレーザーで治療します」

擦れによるほくろ首脇脇

Q 加齢でほくろはできやすくなる?
A 年齢を重ねるほどに
ほくろもいぼもできやすくなります
「10代、20代でほくろやいぼができる方もいますが、基本的には紫外線や加齢が影響するので、年齢を重ねるほどにできやすくなります



Q ほくろと食・生活習慣の関係性は?
A 生活習慣の影響はほぼなし。
紫外線の刺激には注意を
ほくろの一番の原因は紫外線です。食生活がアンバランスだとメラニン排出が滞る可能性はありますが、その関連性は報告されていません」


Q ほくろを作らせないためにはどうすればいい?
紫外線や擦れなどの強い刺激を避けて。
気になるなら早めに除去を
強い紫外線を避ける以外に、効果的な予防法がないのがほくろの難しいところ。できやすい体質もあるので、気になる場合は早めにクリニックで取るのがおすすめ。また、洋服の擦れや強いマッサージなどの刺激も避けましょう


写真提供/美容皮膚科 タカミクリニック イラスト/miya 取材・文/高見沢里子 構成/中村千夏(MAQUIA ONLINE)

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