誰もが自分らしく生きられる理想の世界のために、できることとは? 「MAQUIA」11月号では、日本のフェミニズム研究の第一人者、上野千鶴子先生に取材。私たちが知っておきたいフェミニズムやジェンダー問題について、Q&A形式で聞きました。
独りよがりな美容は終わった。
私たちがキレイのために
できること、知るべきこと100
日本のフェミニズム研究の第一人者
上野千鶴子先生に聞きました
NPO法人ウィメンズアクションネットワーク(WAN)理事長。社会学者。元東京大学名誉教授。
上野 千鶴子先生
専門は女性学、ジェンダー研究。この分野のパイオニア。
Q.フェミニズムとウーマン・リブの違いとは?
ウーマン・リブは
第2波フェミニズム運動の
最初のステップ
ウーマン・リブは、1960年代後半にアメリカで起こった女性解放運動。「ウーマン・リブは、後に歴史的に第2波フェミニズムと呼ばれるようになった運動の最初のステップです。“リブ”は自称詞、フェミニズムは歴史用語です」(上野先生)
Q.私たちがフェミニズムと向き合わなければいけない理由は?
社会があなたの性別を
無視してくれないからです
「なぜなら、“女だから”という理由だけで、差別や偏見など問題だらけだからです。“私には関係ないわ”という人がいたとしても、社会のほうがあなたの“性別”を無視してくれません」(上野先生)
Q.日本は海外に比べてジェンダー格差が大きいって本当ですか?
日本は女性差別大国です
「データを見れば、くっきりはっきり。2020年のジェンダーギャップ指数は、日本は153カ国中121位と、隣国の中国や韓国より低いです。GDPは3位なのに、日本は女性差別大国なんです」(上野先生)
Q.最近話題になった「#Me Too」って?
セクハラや性暴力に対して
「もう我慢しない」という動き
ハリウッドでの女優のセクハラ告発を機にツイッターで広まった動き。「日本でも伊藤詩織さんのセクハラ告発を機に#Me Tooの波が起き、女性たちが“もう黙らない”“我慢しない”と口々に言い始めるきっかけになりました」(上野先生)
Q.日本発のムーブメントはありますか?
#KuToo運動
「石川優実さんが女性にハイヒールを強制してほしくないと始めたのが#KuToo。これは企業に変化をもたらし、SNSでのアクション(ハッシュタグ・アクティビズムと呼びます)が社会を変えることが明かされました」(上野先生)
Q.職場や家庭で起きがちな性差別とは?
女の役割を押しつけられること
「家庭では夫を支える女房役、職場では男性社員を支える助手役。男を立てて主役にし、女は脇役にまわるという仕組みが日本社会にはしみついています。でも、女だって人生の主役になりたい! 誰もあなたの人生を代わりに生きてくれないのですから」(上野先生)
Q.自分が性差別を感じたら?
イヤなことはイヤ、と発言を
「黙ってのみこまず、イヤなことはイヤ、これってヘン、と口にしましょう。ただし孤立させられないように仲間を作って。先輩の女性たちがそうやってきたからこそ、企業ではセクハラ対策が必須になりましたし、女性社員限定のお茶くみがなくなりました。しっかり発言すれば、会社も社会も変わります。時間はかかりますけどね」(上野先生)
Q.性差別問題を相談できる機関は?
労働組合や女性センターの
窓口などがあります
「職場の性差別(賃金格差や昇進差別、不当解雇)は、労働組合や労働基準局へ。家庭の性差別(DVや虐待)は、各地の女性センターの窓口が無料で相談に応じてくれます。最近は電話やLINEでの匿名相談にも応じてもらえる窓口も」(上野先生)
Q.「美術館女子」という言葉が物議を醸した理由は?
若い女性=無知の
代名詞とされているから
「教養・科学系の分野では“若い女性”が無知の代名詞。その無知な女子に、オジサンが教え諭してあげようというお説教を“マンスプレイニング”と言います。オジサンキャスターの隣に、若い女性アナが座ってうなずく構図です。そういう女子のステレオタイプにのっかり、それを助長する点でアウト、です」(上野先生)
MAQUIA 11月号
イラスト/mamiyoco 取材・文/和田美穂 関本陽子 構成/火箱奈央(MAQUIA)