リップやソース、雨の日の泥汚れ……お気に入りの服についてしまったその汚れ、ひと手間加えるだけで落とせるんです! 誰でも簡単に実践できるポイントを、洗濯のプロ・洗濯ブラザーズの茂木貴史さんに教えていただきました!
茂木貴史、茂木康之、今井良の3人で結成し、毎日の洗濯を楽しくハッピーにするための活動をするプロ集団。横浜と東京都世田谷区の三宿で、クリーニング店「LIVRER(リブレ)」を経営するかたわら、劇団四季、シルク・ドゥ・ソレイユ、クレイジーケンバンドなど国内外の有名アーティストの衣装クリーニングを手がける。また、大丸松坂屋百貨店が運営するサブスク型ファッションレンタルサービス「AnotherADdress」で貸し出される高級ブランド服のクリーニングを、確かな技術で一手に引き受ける。オリジナルのナチュラル洗剤も好評を博している。主な著書に『日本一の洗濯屋が教える 間違いだらけの洗濯術』(アスコム刊)がある。
汚れの種類を見極めて、対処する!
汚れの種類は主に「油性」「水溶性」「不溶性」の3つ。これらが混ざった「複合的汚れ」も含めて種類別に対処することで、より簡単に、効率よく落とせるのだそう。「汚れの種類がわかれば、クリーニングに頼ることなく自分で楽に落とせるようになります」(茂木さん)
どんな汚れにもこれが必要! 万能プレウォッシュ液の作り方
「プレウォッシュ」とは、洗濯機で服を洗う前に行う「予洗い」のこと。繊維の奥に残った汚れを浮かせて汚れを落としやすくする働きがあり、「服をキレイに洗えるかどうかの9割は、プレウォッシュで決まる!」(茂木さん)。ただし、原液を服につけると洗剤成分が残って輪染みができてしまうこともあるので、必ず水で割ること。
【作り方】
①スプレー容器に、弱アルカリ性の洗濯用液体洗剤を入れ、同量の水道水を入れる。
②軽くふって混ぜれば完成! 1週間以内に使い切る。
【基本の使い方】
汚れが目立つところ、汚れやすい部分にまんべんなく吹きかけ、10分ほど置いてから洗濯機へ。汚れが目立つ場合は、吹きかけた後にブラシで叩くのがおすすめ。
プレウォッシュ液は購入することも!
茂木さんたちが実際に使用しているプレウォッシュスプレー。皮脂汚れ、汗ジミ、口紅、ファンデーション、泥汚れなど幅広い汚れにアプローチ。リブレの店舗やオンラインで購入可能。150ml ¥2200/バレル
口紅やファンデなど「油性の汚れ」を落とすには?
口紅やファンデ、マスカラなど油分の多い汚れ=「油性汚れ」。他にもマニキュアやボールペン、水性ペン、蛍光ペン、クレヨン、絵の具、油粘土、朱肉、ごま油、ドレッシング、チョコレート、機械油などが含まれます。「油汚れは時間の経過とともに酸化してしまうので、汚れがついてから1〜2日の間にケアしてあげましょう」(茂木さん)
1.プレウォッシュ液を服がひたひたになるぐらいかける
汚れがついた部分に、プレウォッシュ液をたっぷりと吹きかける。服がひたひたになるぐらいまでかけるのがポイント。汚れが他の部分に移らないように、タオルなどを挟んでおくと安心。
2.洗濯用ブラシで叩いて10分ほど放置
手首のスナップをきかせながら洗濯用ブラシで汚れをしっかり叩く。洗面台やテーブルなど、硬い台の上で行うのがおすすめ。服をこすると摩擦で生地が傷んでしまうので、繊維の奥まで洗剤を浸透させるイメージで叩くのがポイント。軽い汚れであれば、この段階で落ちることも。
3.洗濯機で洗い、落ちていない場合はつまみ洗い
ブラシで叩いて10分ほど経ったら、そのまま洗濯機へ。洗濯機で洗う時に心がけたいポイントは4つ。
①水量を1段階上げる(ドラム式なら「注水」にする)。
②洗剤を水に溶かしてから衣類を入れる。
・タテ型の場合:洗濯槽に水を張り、洗剤を入れたら2〜3分洗濯機を回してから衣類を入れる。
・ドラム式の場合:水と洗剤を1:1で混ぜたものを洗剤ケースに入れる。
③洗濯物の量は洗濯槽の6割までにする。
④「洗い」と「脱水」の時間をマニュアル設定にする。
・タテ型の場合:洗い8〜10分→水量多めですすぎ2回→脱水3〜5分
・ドラム式の場合:洗い20分→注水すすぎ2回→脱水3分
洗濯機で洗った服の汚れが落ちていない場合は、40℃のぬるま湯に弱アルカリ性洗剤を溶かしたバケツの中で、汚れが残っている場所をつまみながら洗う。脱水してみて汚れが落ちていれば、すすいで干してOK。
コーヒー、汗、血液など「水溶性の汚れ」を落とすには?
「水溶性汚れ」は、コーヒー、お茶、ジュース、赤ワインなどのアルコール類、しょうゆ、牛乳、卵、汗、尿、血液、花粉、植物の汁など。汚れがついてから22時間以上経つと酸化して落ちにくくなるので、汚れがついたらその日のうちに落とすのがポイント。
1.応急処置として少量の水ですすぐor乾いた布やティッシュペーパーで軽く押さえる
外出先で水溶性汚れがついた時は、少量の水ですすぐか、乾いた布やティッシュペーパーで汚れの水分を取って応急処置。こすると汚れが広がるので、軽く押さえる程度でOK。「レストランなどのおしぼりには除菌成分が含まれていて、おしぼりで拭くとかえって汚れが落ちづらくなるので要注意です」(茂木さん)
2.プレウォッシュ液を服がひたひたになるぐらいまでかける
油性汚れと同じく、まずはプレウォッシュ。たとえ水溶性汚れでも、じつは日常生活の汚れのほとんどは油性と水溶性の汚れ、さらに色素がミックスされた「複合的な汚れ」なのだそう。水溶性の汚れの上に油性の汚れの膜がはっている状態なので、まずはプレウォッシュで油の汚れを溶かすのがマスト。
3.ブラシで汚れをたたいて10分ほど放置
汚れを飛ばすようにブラシで叩く。軽い水溶性汚れならブラシで叩けば一発で落ちることも多いそう。叩いたら10分ほど置いて洗濯機へ。「この時期、プレウォッシュは汗ジミにも効果的です。脇などの汗ジミが残った部分をプレウォッシュしたら裏返し、汚れがついた部分を表面にして洗いましょう。特に白い服や淡い色の服は汗ジミが目立ちやすいので、洗濯前の習慣にしておくと予防ケアにもつながります」(茂木さん)
4.ハードな汚れ、血液汚れは粉末洗剤を溶かしてつまみ洗い
かなりハードな汚れがついている場合や、白い服をより白くしたいときは、40°Cのぬるま湯に弱アルカリ性洗剤を溶かしてもみ洗いするのがおすすめ。ただし、血液の汚れは必ず常温の水で対処すること! 「血液の汚れにお湯を使うと、血液が固形化して取れなくなってしまいます」(茂木さん)
「黄ばみ」を落とすには?
クローゼットから取り出したら黄ばんでいた……なんて悲しい経験がある人も多いのでは。たとえ目に見えなくても、汗をかきやすいパーツが触れる部分には皮脂や汗汚れがべったり。皮脂や汗の汚れは洗濯機だけでは完全に落としきれず、蓄積して時間が経つにつれて黄ばみや黒ずみに変化。汚れの有無にかかわらず、プレウォッシュの習慣をつけて。
1.まずはプレウォッシュ
下記の黄ばみやすいポイントに重点的&たっぷり吹きかける。すでに黄ばんでしまった部分の黄ばみ取りはもちろん、まだ目に見えない状態から行っておけば黄ばみやニオイ予防に。
【プレウォッシュするポイント】
トップスやアウター:襟ぐり・袖口・脇
ボトム:ウエスト・股・裾
2.洗濯用ブラシで叩いて10分ほど放置
まんべんなく強めに叩いてから10分ほど放置し、皮脂汚れの分解を促す。洗濯用ブラシがなければ歯ブラシでもOK。その後、洗濯機へ。
不溶性汚れ、複合的汚れ、あるいは汚れの種類がわからないときは?
「不溶性汚れ」とは、油にも水にも溶けない汚れのこと。泥汚れや海で遊んだ服、靴下の黒ずみ、ちりやほこりで黒くなった雑巾などがその代表で、汚れのかたまりが繊維にこびりついている状態。一方の「複合的汚れ」は、カレー、ミートソース、焼き肉のたれ、ケチャップ、ドレッシングのような油性+水溶性の汚れや、チューインガム、自転車のチェーンの油のような油性と不溶性が混ざった汚れのこと。こうした汚れは、油性→不溶性の汚れの順に落とすのが鉄則。汚れの種類がわからないときもこの手順でケアを。
1.粉末洗剤を溶かしたお湯に服を入れ、洗濯用ブラシで叩く
40℃以上のお湯に粉末洗剤を溶かした中に服を入れ、ブラシで汚れを叩く。洗剤の量は、パッケージに書かれている「つけおき」の濃度通りでOK。
2.30分〜1時間つけおき
汚れをしっかり叩いたら、30分〜1時間ほど(お湯が冷めるぐらいまで)つけおき。ブラシだけで汚れが取れなかった場合は、ここでつまみ洗いをプラス。このプロセスは、生乾き臭が残ってしまった衣類にもおすすめ。その後、洗濯機へ。
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撮影/藤澤由加
取材・文/国分美由紀 企画・構成/横山由佳〈MAQUIA〉
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