今、知りたい&知るべき香水を完全網羅。今回は、伝説的な香りの逸話から愛される理由まで、知られざるストーリーを公開。

あなたが今、ときめく香りが必ず見つかる
フレグランス大事典
名香にまつわる物語
麗しい香りが生まれる背景には物語が存在する。フレグランスを語る上で欠かせない6つの名香が紡ぐ珠玉のストーリーをご紹介。
CHANEL Nº5
シャネル ナンバーファイブ
革新的でタイムレスな香りを生み出した
創始者ガブリエル・シャネルの先見性
フレグランスと聞いて思い浮かぶアイコニックなボトルがシャネル N°5ではないだろうか。1921年、単一の花の香りが主流の時代にガブリエル・シャネルは「女性そのものを感じさせる、女性のための香水」を創りたいとオーダー。ジャスミンやローズを始めとした80種類以上の花の香りに、今再び注目を集めるアルデヒドという当時最先端の合成香料を用いた革新性。N°5というシンプルな名前、虚飾を排した直線的なデザイン……。何もかもが当時の流行の真逆でありながら、100年後まで愛される香りを残したシャネルの先見性。まるで花畑にうずもれているかのような贅沢なフローラルブーケの香りは、人生で一度は触れるべき名香だ。

装飾過剰なボトルが多かった1921年の発売当時、洗練されたシンプルさも注目を集めた。今見ても美しいガラスのボトルは、ニューヨーク近代美術館の恒久コレクションでもある。A 馥郁(ふくいく)とした花の香りが肌と一体化。香水はほんの数滴を肌にのせ、近しい距離にある人だけに香らせて。シャネル N°5 パルファム 7.5ml ¥20350、B 第4代専属調香師オリヴィエ・ポルジュが伝説の香りを新たなスタイルに変換。より軽やかな印象のフレッシュなフローラル。シャネル N°5 ロー オードゥ トワレット 50ml ¥16500、C 初代の香りに忠実で、賦香率が低めのトワレはN°5を初めて試したい人におすすめ。シャネル N°5 オードゥ トワレット 50ml ¥14520、D オリヴィエの父で第3代専属調香師のジャック・ポルジュが創作。ホワイトムスクがふんわりと包み込むようなまろやかな印象に。シャネル N°5 オー プルミエール 50ml ¥16500、E 艶やかに匂いたつ花々の香りにベースノートのヴァニラとサンダルウッドが深い余韻を残す。シャネル N°5 オードゥ パルファム 100ml ¥23100/シャネル
MISS DIOR
ミス ディオール
ドレスをまとった女性の美を
完成させるには香りが必要
上の言葉を始め、「私自身クチュリエであると同時にパフューマーであると思っています」と語っていたムッシュ ディオール。メゾン初の香りとして1947年、ファッションのコレクションと共に、ミス ディオールを発表した。オリジナルの香水は反骨精神あふれる妹カトリーヌに捧げられた、シトラスからフローラル、ウッディへと変化が美しいシプレノートだった。絶えず進化し、サプライズをもたらすこの香りは、ローズの花びらに包まれるような感動を再現したり、幾千もの花々を描いたりと、常にその時代の息吹を取り込んでバリエーション豊富に揃う。「女性たちに希望を与えるような愛のような香り、ミス ディオール」、あなたはどれを選ぶ?

メゾンの象徴である千鳥格子とボトルの首元を飾るダガーボウが特徴的。名前の由来はムッシュ ディオールの妹、カトリーヌ・ディオールの愛称から。A バラが一面に咲く花畑に佇んでいるかのような芳醇なバラの香り。ミス ディオール ローズ&ローズ 100ml ¥20350、B 主役のダマスクローズにベルガモットやスイートピーがフレッシュなタッチを添えて。ミス ディオール ブルーミング ブーケ 50ml ¥14520、C フローラルノートにキャラメルポップコーンやストロベリーソルベなどの甘さをプラスしたグルマンノート。ミス ディオール エクストレ ドゥ パルファン 15ml ¥33220、D ディオール パフューム クリエイション ディレクター、フランシス・クルジャンが伝説のシプレを新解釈。花々と木々の香りにワイルドストロベリーでグルマンなニュアンスを添えて。ミス ディオール パルファン 80ml ¥23100、E この香りの主役であるローズとジャスミンにパウダリーなアイリスやセンシュアルなピオニーを加え、幾千もの花々が奏でる香りの調べに。ミス ディオール オードゥ パルファン 50ml ¥16720、F 香りの中核であるジャスミンとローズに、グリーン香をもつスズランでみずみずしさを添えたフレッシュフローラル。ミス ディオール オードゥ トワレ 50ml ¥14520、G Hのオリジナルの独創的なシプレをより優しく表現。ミス ディオール オリジナル エクストレ ドゥ パルファン 15ml ¥33220、H 当時のフレグランス界に革命を起こしたオリジナルの香り。刈りたての草の青さとサンバック ジャスミンの清らかさにアーシーなパチョリが溶け合う。ミス ディオール オリジナル オードゥ トワレ 100ml ¥20350/パルファン・クリスチャン・ディオール
L’INTERDIT
ランテルディ
新しい自分を手に入れるスリルへ誘う禁断の香り
モードの神童とよばれたブランド創始者のユベール・ド・ジバンシィ。彼の親友であり、ミューズであった映画俳優オードリー・ヘップバーンへ捧げる香りとして生まれたのがこのランテルディ。「私以外は使ってはダメ」というエピソードから“禁止”という名前に。

ランテルディ オーデパルファム
1957年のオリジナルの香りのDNAを残しつつ、2018年に進化したランテルディ。濃密なオレンジフラワー、ジャスミン、チュベローズの白い花の香りとベチバーやパチョリのアーシーさが織りなす“禁断”のハーモニー。少し大胆になれるセンシュアルさが魅力。50ml ¥15510/パルファム ジバンシイ(LVMHフレグランスブランズ)

©Sunset Boulevard/ゲッティ
PURE MUSC
ピュア ムスク
ミドルノートに必ずムスクが入る
彼女(キャロリン)のための香り
ニュージャージー州生まれのキューバ系アメリカ人、ナルシソ・ロドリゲス。彼のミューズであった故キャロリン・べセット=ケネディがいつもつけていたエジプシャン ムスクを、常に香りの主役としている。シンプルでエレガントな香りはまさに彼女を思わせる。

ナルシソ ロドリゲス フォーハー ピュア ムスク オードパルファム
1990年代のファッションアイコンであったキャロリン。現在のムスクはアニマリックな要素は薄れ、ほのかに甘いパウダリー。ホワイトフローラルの清々しい花の調べをムスクが包み込み、カシュメランが落ち着きを与える。100ml ¥20790/ナルシソ ロドリゲス パルファム
©Everett Collection/アフロ
©narciso rodriguez parfum
Féminité du bois
フェミニテデュボワ
女性用ウッディノートの
一大トレンドを作った名香
1980年代、資生堂がグローバル展開をする際、クリエイティビティを託されたのがセルジュ・ルタンス。1992年に彼が初めて資生堂のために創ったのがフェミニテデュボワ。男性用とされていたウッディノートに花と果実を合わせた画期的な調香で世界を魅了した。

セルジュ・ルタンス フェミ二テデュボワ オードパルファム
なめらかでクリーミーなシダーウッドの香りに甘いハチミツとプラムが溶け合うウッディノート。今なお、高い人気を誇る。2022年に発売された30周年記念のコレクションボトルのデザイン、「木の女性」もルタンスが手掛けた。50ml¥19800/ザ・ギンザ
@SERGE LUTENS
@SERGE LUTENS
SHALIMAR
シャリマー
2025年、100周年を迎える
世界初のアンバーフレグランス
ゲラン3代目の調香師、ジャック・ゲランがアジアへの旅から帰国後、創作。インドの皇帝と妃の愛の物語に着想を得た香りの名前は“愛の神殿”という意味だ。甘いバニラと樹脂のほのかな甘さにアイリスが匂い立つ美しい香りは愛され続け、100年の時を越える。

シャリマー オーデパルファン
長年、オリエンタルと同義とされてきたアンバーは、とろりと甘い樹液の香り=バルサムノートとバニラ、ラブダナムを中心にした香調を指すように。シャリマー庭園の泉からイメージされた扇形ボトルの美しさは、誕生100年を迎える今も踏襲されている。50ml ¥16390/ゲラン
©GUERLAIN
©GUERLAIN
MAQUIA 3月号
撮影/Kevin Chan 構成・文/平 輝乃 企画/髙橋里佳(MAQUIA)
※本記事掲載商品の価格は、税込み価格で表示しております。
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