SNSをはじめ、最近なにかと話題になっている「ビニール肌」。ビニールと言うと、ピーンと張っていて、ツルンと光沢感のあるイメージがあるけれど、実は美肌とは真逆な状態だそう⁉ そこで、アヴェニュー 表参道クリニックの院長、佐藤卓士先生に「ビニール肌」について詳しくお話を伺いました。
- ビニール肌とは?
- もしかしてビニール肌かも? マキアインフルエンサーたちから届いたビニール肌画像
- 「ビニール肌」の見分け方【セルフチェック】
- ビニール肌の原因は?
- ビニール肌になってしまった時の対処法
岡山大学医学部、杏林大学医学部、都立大塚病院形成外科を経て現職。丁寧なカウンセリングと注入の技術に定評がある。雑誌の美容特集でのわかりやすい解説も人気。
ビニール肌とは?
ツルンと見える=肌のキメがなくなった状態だった!
ツルツル、テラーンとした肌は、一見すると美肌な印象もありますが……。
「確かに昨今よく耳にするようになりましたが、「ビニール肌」とは医学用語ではなく、症状定義もされていないため、たとえ皮膚科で受診したとしても、『あなたはビニール肌です』と診断されることはないかと思います。
ただ、ビニールのような質感になってしまっている肌というのは、キメがなくなっている状態が考えられます。ご存じだとは思いますが、皮膚にはキメがあり、キメが三角形の形で規則正しく並んでいるのがいわゆる健康的な肌の状態です。しかし、何らかの原因でキメの溝がなくなってしまうと、それこそビニールのようにピーンとのび、ツルツルの人工的な肌に見えてしまうのです。
こうなると肌のバリア機能が低下してしまうため、うるおいが逃げやすくなるうえ、外的刺激から肌を守ることができなくなってしまいます。すると、肌は乾燥したり、こわばりがでるなど、敏感状態に。さらにその状態が進行すると、赤みやカユミ、ヒリつくようになり、皮膚科的な治療が必要になってしまいます」(佐藤先生)
キメが整っていると水分蒸散を防ぐことができ、乾燥や刺激、摩擦から肌を守るバリア機能がきちんと機能する(右)。バリア機能が乱れると、めくれ上がった角層から肌の水分が蒸散し、さまざまな外的刺激から肌を守ることができなくなる(左)。
もしかしてビニール肌かも? マキアインフルエンサーたちから届いたビニール肌画像
過去に皮膚が荒れた時に強い薬を使った際、毛穴がまっさらになって皮膚がてかピカ、薄くなってしまったそう。
レチノール1%以上のクリームを自己責任で個人輸入して塗布。一見、艶っぽくはなったが、その後、かなり乾燥して肌荒れがひどくなってしまったとか。
「ビニール肌」の見分け方【セルフチェック】
1つでもあてはまったら「ビニール肌」の可能性が! 最近、「肌が薄くなった」「肌が乾く」といった肌の変化を感じていたら、肌が敏感に傾いているサイン。
ビニール肌の原因は?
美容好きが陥りがちな“●●しすぎ”で『ビニール肌』に
美肌とは程遠く、敏感肌状態になっている可能性すらある「ビニール肌」。その原因は何なのでしょうか?
「一番に考えられるのは“やりすぎ”な美容習慣です。たとえば、夏は日焼け止めを塗ったり、汗や皮脂でベタつくため、洗顔回数を増やしたり、ゴシゴシ洗いしがちです。
また、角質ケアは、肌のターンオーバーを整えるのに有効ですが、角質除去効果がある洗顔料やスクラブ、化粧水を重ねすぎたり、ピーリングをやりすぎるのもキメをなくす原因に。一般的には、加齢とともに皮膚が薄くなる傾向になるので、若いときの感覚のまま過度な角質ケアをしすぎるのは危険だと言えます。
同様に、肌のターンオーバーを促進するレチノールも美肌に有効な成分ではありますが、化粧品の中では作用が強いものですから、使用する際は、ご自身の肌状態をよく見てから取り入れるようにしてください」(佐藤先生)
ビニール肌になってしまった時の対処法
保湿メインのシンプルケアで肌を整えることが大切。炎症が出てしまっている場合は皮膚科へ
では、「ビニール肌」になってしまったら、スキンケアはどうしたらいいのでしょうか? 皮膚科の受診を検討するべき?
「基本的にスキンケアはシンプルがベスト。摩擦の刺激による肌の負担を避けるため洗顔を徹底、泡を使って優しく丁寧に時間をかけて洗顔しましょう。洗顔後はなるべく低刺激の化粧水、油分での保湿ケアのみにとどめてください。ピーリングやゴマージュはもちろん、ホワイトニングケアやエイジングケアなど、一般的に“攻め”といわれているケアはやめて、肌をしっかり休めましょう。
また、肌のバリア機能が低下していると通常よりも紫外線のダメージを受けやすくなり、シミやシワなどエイジングが進行してしまいます。夏だけでなく、この先も日焼け対策はきちんと行うように。
このようなシンプルケアで肌の安静を保つことができたら、1ヶ月もすれば元の状態に戻っていきます。それでも改善せずに、肌がヒリついたり、化粧品がしみたりするなど発症してしまっている場合は皮膚科へ相談しましょう」(佐藤先生)
自分ではなかなかわかりにくい「ビニール肌」。ちょっとでも“あれっ?”と感じたら、一度立ち止まり、スキンケアをシンプルにしたり、肌状態によっては皮膚科で診察してもらうのが、その先の美肌のためには大切です。
イラスト/二階堂ちはる 取材・文/藤井優美<dis-moi> 企画/有住美慧(MAQUIA)