1997年、『硝子の少年』。そのデビューは鮮烈だった。キラキラした輝きと共に湛えた、張り詰めたせつなさに、誰もが心を掴まれた。そこから25年。堂本光一さんに話を聞いた。

KinKi Kids 堂本光一

祝25th Anniversary
ふたりにしか奏でられない世界を支えてきた、その美学とは?
KinKi Kids
美しく時を重ねるということ

堂本光一

1979年1月1日生まれ、兵庫県出身。2000年から主演、2005年から脚本・演出・音楽などすべてを手掛ける舞台『Endless SHOCK』は、Show Must Go Onの信念のもと、年々挑戦と進化を続けている。2020年より、後輩の舞台『DREAM BOYS』の演出も。また、ソロでの音楽活動では、瞬時に世界観に引き込むような緻密なステージ演出や圧巻のパフォーマンスで知られる。

Koichi Domoto
失敗があるから、新たな可能性と出会える

盛るのは簡単だけれど、そぎ落とすのは難しい

華麗なるステージパフォーマンスに加え、楽曲制作、俳優、舞台演出などさまざまな才能でファンを魅了してきた堂本光一さん。その研ぎ澄まされた感性からは、他を圧倒する美学が感じられるが、彼自身は「美しくありたいと思ったことは、一度もない」と言う。


「もともと不器用なので、かっこつけて何かをやるってことができない人間なんですね。最初の頃は、歌もダンスも全然ダメで、ジャニーさんに隠れて、他のところにレッスンに行っていたくらい。ただただ必死にここまでやってきたという感じです。それに美しさって、作られたものじゃないと僕は思うんですね。たとえば舞台での激しい殺陣のシーンなんて、きったない顔してるし、『うわー!』とか言うて、床を這いつくばってやっているけれど、あれを美しいと思う人がいるわけです。でも僕は、そのシーンにどんな意味をもたせて、どう伝えるかということを考えて演じているだけで、美しく見せようとか考えたことはないです」


美しさはあくまで結果。「それより大事なことがある」と光一さん。
「昔からF1が好きなんですけれど、F1の車はなんであの形をしているかと言ったら、すべてに意味があって、いらないものをそぎ落としているからなんです。かっこよさや美しさを追求して、あのデザインになったわけじゃない。それと同じです。盛ったり、飾ったりするのは簡単なんですよ。でも、目指すのは、やっぱりF1の車のような磨き方だと思う」


言葉の端々にうかがえるのは、妥協を許さないストイックな姿勢だ。
「有名な歌舞伎俳優の方の言葉で『まだ足りぬ 踊り踊りて あの世まで』というのがあるんですけれど、僕も一生やっても足りない感じですね。ただ、自分ではストイックとは思ってないです。基本ダメもとで、ならんようにしかならんって思って生きているし。能天気だから、落ち込んだりすることもないし。もちろん自分の思うようにいかないことはありますよ。というか、8割、いや、9割が思い通りにならないです。だからこそ、残りの1割を大事にしたいんです。表現の世界には正解っていうものはないから、絶対無理だなと思うことも提案して、みんなで話しあって可能な道を探りたい。そこで『それは無理だよ』で終わってしまう人とは、あまり付き合いたくないです。予算的にとか、何かの理由で厳しいとしたら、『じゃあ、これはどうかな?』って別の可能性を探る人が好きです」


その一方、「思い通りにならない9割も無駄ではない」と考えている。
「お芝居で、自分の演技プランとは違う要求をされることもあるけれど、そういうときにこそ、新たな発見があると思う。『え、こっち? 困ったな』という中で自分をどう発見していくのか。それが新たな気づきになったりするんですよね」


あくまで前向きに。その根底にあるのは、自分の可能性への信頼だ。
「そのへんの感覚って、ジャニーさんに育ててもらったものかもしれません。右も左もわからないのに、『出ちゃいなよ』って表に出されて、そこで何かエネルギーをぶっ放さないといけないみたいな。だけど、そこでキラキラ輝く子がやっぱりいるし、予想を超えた余白の部分を爆発させられる子が、残っていくんです。僕たちもそうやってジャニーさんに育てられたからね。後輩を指導するときも、『ああしろ、こうしろ』と言ったら、個性なんか発揮できないと思う。だから演出として最低限必要なことだけ言って、あとは余白を残す。もちろんすごく細かく緻密に作業してこそ、生まれる余白なので、その土台は、しっかりと作るようにしています」

道は1本だけじゃない。枝分かれも悪くない

さまざまな経験を積み、時代を駆け抜けてきた25年。光一さんは、これからどこに向かっていくのだろう。
「昔から明確な理想を描いたことはなくて、漠然としたものに向かっていく感じです。その途中で、いろいろ枝分かれするのもありかなって思う。1本道で行くのって意外とつまらないし、1本道で頑張ってると、挫折したときに心が折れちゃったりするでしょう? 僕は『こっちがダメなら、こっちもありかな』って、別の道を探せばいいと思ってる」


枝分かれしたからといってブレるわけじゃない。むしろ枝を増やすたびに、彼の中の太い幹は、より強くしなやかに成長し続けていくのだ。
「今の世の中、失敗を許さない雰囲気がありますよね。失敗を恐れて、みんなチャレンジをしなくなっている。非常に良くないことだと思います。だって失敗は終わりじゃないから。失敗は新しい枝が生まれる瞬間なんです。だから失敗はしたほうがいいし、それを楽しめばいい。僕はそう思うし、これからもそうやって生きていきます」

 

KinKi Kids

1997年にシングル『硝子の少年』でCDデビュー。デビュー25周年イヤーとなる今年は、先日開催されたドーム公演『24451 〜君と僕の声〜』や、16社の企業のテレビCMに25円で出演する異例のキャンペーン『#キンキ25円でCM出演』など、さまざまなメモリアル企画を展開している。

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取材・文/佐藤裕美 真島絵麻里 構成/清田恵美子(MAQUIA)

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