長引くマスク生活をチャンスに変えて、歯列矯正に取り組む人が増加中。そこで、歯列矯正の種類や金額、メリット・デメリットなど、気になるポイントを徹底取材。経験者によるリアルなエピソードもぜひ参考に!
アトラスタワーデンタルオフィス副院長。インビザライン認定医、日本アンチエイジング歯科学会認定医。一人一人の希望やライフスタイルを丁寧にヒアリングする姿勢と、わかりやすく的確なカウンセリングで患者からの信頼も篤い。
まずは歯列矯正の基本が知りたい!
Q 歯列矯正は、なぜした方がいいの?
A 見た目はもちろん、健康にもメリット大!
「歯並びを整えることは審美的な側面だけでなく、全身の健康にもつながります。たとえば、歯並びが乱れていると、噛んだ時の力の入り方に偏りが出るため、強い力がかかりやすい歯を失う原因に。また、噛み合わせが不揃いだと、肩こりや咬筋の左右差、顎関節症などにつながっていきます。歯並びが整うことできちんとブラッシングができるようになり、虫歯や歯周病を予防しやすくなることも大きなメリットです」(橋田先生、以下同)
Q 歯列矯正にはどんな種類がある? メリット・デメリットも知りたい!
A 装置は2種類、矯正法は3種類あり
「歯列矯正の方法は、①ワイヤー矯正(表側)②ワイヤー矯正(舌側)③マウスピースの3種類があります。ワイヤー矯正の場合、抜歯をする・しないによって治療期間は異なりますが、一般的な目安は2年〜2年半。マウスピースはワイヤーと比較すると長くなりやすく、全体矯正だと2年〜3年ほどかかります。通院頻度は部分矯正か全体矯正かにもよりますが、3週間前後に1回ぐらいと考えて。マウスピースは慣れてきたら3カ月おきでもOK。ワイヤー矯正の場合、最初に矯正装置を装着してから数日は違和感や痛みを感じますが、1週間ほどで落ち着いてきます。それぞれの方法のメリット・デメリットは下の比較リストを参考にしてみてください」
ワイヤー矯正(ブラケット矯正)・表側
歯の上面にブラケットと呼ばれる器具を特殊な接着剤で貼り付け、そこにワイヤーを通して歯の移動を促す。白くて目立ちにくいセラミックを使用する場合、メタルより若干割高に。
【費用】
約80〜100万円
※全体矯正、アトラスタワー歯科の場合
【メリット】
・歯並びが悪くても治療効果が高い
・取り外す手間が不要
・舌側の矯正よりも安く抑えられる
・装置が見えるので、歯磨きをする時に細かく磨ける
【デメリット】
・歯の表面に装着するので目立ちやすい
・金属部分が唇の内側や頬に当たって口内炎や痛みが出るケースがある
ワイヤー矯正(ブラケット矯正)・舌側(裏側)
使用する器具や方法は、ワイヤー矯正の表側と同じ。表側に比べると治療期間がやや長引くケースもあるが、基本はほとんど変わらない。
【費用】
約140万円
※全体矯正、アトラスタワー歯科の場合
【メリット】
・装置が目立たない
・取り外す手間が不要
【デメリット】
・表側に比べて費用が割高になる
・装置を付けた当初は、サ行やタ行が発音しづらくなるため、慣れるまでは舌足らずな話し方になりやすい
・金属部分が舌に当たって口内炎や痛みが出るケースがある
マウスピース矯正
©︎インビザライン・ジャパン
「インビザライン」、「キレイライン」などの種類があるマウスピースを、歯型をとって作成し装着することで歯を動かす。食事と歯磨きを除き、1日20時間以上装着することで効果が得られる。矯正段階によって装着するマウスピースを変えていく。
【費用】
部分は30万円〜全体は90万円
※アトラスタワー歯科の場合
【メリット】
・見た目が気になる場面で外せる
・透明なのでほぼ目立ちにくい
・歯磨きがしやすい
・金属アレルギーの人でも装着可能
・通院頻度が少ないので、忙しくても通いやすい
【デメリット】
・マウスピースのお手入れが必要
・抜歯して歯を大きく動かす矯正には不向き
・数カ月おきに新たなマウスピースの作成が必要
・使用状況に依存するので、あまり装着できないと治療が進まない
Q 矯正後に歯が動いてしまうことはないの?
A 矯正直後は後戻りする可能性があります
「矯正していなくても、もともと歯は口腔内の状況に応じて位置が変わる可能性があります。特に矯正が終わった後は、元に戻ろうとする力がかかるので、どんな人も後戻りするリスクがあり、マウスピースなどの保定装置で位置をキープすることが重要になります。使用頻度は位置が安定するにつれて減らせますし、ある程度落ち着いてきて気になるほどのズレがなければ、そのまま生活しても問題はありません。いつまで保定装置を使うかは、歯の位置をどの程度キープしたいかによって変わってきます」
大人の歯列矯正体験談
1.「マスクで隠せるうちに」とコロナ禍で矯正スタート&完了! (MAQUIAインフルエンサーayakaさんの場合)
「顎が小さいことによる前歯のガタつきが気になっていました。出産や授乳を終えて、生活が少し落ち着いたタイミングでコロナ禍になり、『マスクで隠せるうちにやってしまおう』と思い立って歯科クリニックのカウンセリングへ」。マウスピース矯正を8カ月行い、かかった費用は約50万円。
「透明であまり目立たない&滑舌にも影響しにくいと聞いていたし、何より痛みにとても弱いのでマウスピース矯正を選びました。食事の際にマウスピースを外せるからしっかり歯磨きができるし、マウスピース自体も毎回洗浄できて衛生的。心配していた痛みも、最初だけ締め付けるような違和感があったぐらいですぐに慣れました。私の場合は4カ月間で一旦完了したあと、気になる部分を追加で4カ月装着しましたが、あっという間に完了して大満足! どうしてもっと早くやらなかったんだろう……と思ったけど、マウスピースを装着すると口元が少しだけ前に出て見えるから、やっぱりリモート生活でなければ厳しかったかも。でも、治療に踏み切って本当によかったです」
2.矯正前の検査で顎関節症が発覚。まさかの保険適用に (ライター佐藤 梓さんの場合)
美容ライター
「子どもの頃は自分の八重歯が気に入っていましたが、この仕事は周囲に歯並びのきれいな方が多くて、口を開けて笑うことにためらいを感じるようになりました。ある日、噛み合わせが悪いと認知症のリスクが上がるほか、消化器官の負担が大きくなると聞いて、子どもに老後の負担をかけないためにも矯正を決めました」。今年1月から矯正をスタートし、病院での相談料や検査料、診断料などで約6万円。毎月、ワイヤー交換に約1万~1万5000円ほどの費用がかかっている。
「八重歯と反対咬合(噛み合わせた時に下側の歯が上側より前に出ている状態)を矯正しようと病院へ行ったら、検査で『顎関節症』と判明。そのまま矯正するとさらに噛み合わせと受け口が悪化するらしく、『歯並びを整えたいなら、外科手術で顎関節症の手術が必要』と診断されました。しかも、外科手術を伴う矯正の場合は保険適用になると聞いて踏み切ることに。2022年1月からマルチブラケット装置とポーター型拡大装置という器具を装着しています。約1年半~2年かけて上下の歯並びを矯正した後、外科手術で受け口を治し、さらにそこから約1年半~2年の矯正をする予定。今は、少しずつ歯並びが変化していくようすを見るのが毎日の楽しみです」
3.マウスピース矯正を始めるも挫折……ブラケット矯正に切り替えて10年越しの再スタート (MAQUIAエディター横山の場合)
「物理的に口を閉じることが難しいほどの出っ歯で、小学生の頃からずっとコンプレックスでした。口が閉じられないから真顔が間抜けに見えるのも悩みで、出っ歯を隠すためにいつも笑っていました……」。これまでにかかった費用は、マウスピース矯正が100万円ほど。ワイヤー矯正はマウスピース矯正のリタッチという扱いで初期費用20万円+毎月の調整で5000円。
「2013年にマウスピース矯正を始めましたが、仕事中の食事や会食などでつけ外しをするタイミングが難しくて、徐々に装着時間を守れなくなってしまいました。マウスピースをつくり直して何度かやり直したものの、やはり装着時間が守れず、気づけば10年近くが経過……。そこで、確実に矯正できるワイヤー矯正でやり直すことに。今年の夏から、目立ちにくいセラミックでワイヤー矯正(表側)を始めました。通っている歯科ではワイヤーへの切り替えをリタッチ的な扱いにしてもらえたので、かなり費用を抑えることができて助かりました。どうやら私は口の中が狭いらしく、歯の動きが予測できないとのことで、矯正期間の目安はまだわかっていません。抜歯も2本する予定。今度こそ矯正を完了させたい!」
経験者が語る、“矯正あるある”エピソード
食事のたびに遭遇する「噛み切れない問題」
「矯正装置をつけていると、レタスやキャベツなどの薄い葉物を噛み切るのはほぼ不可能! 食べる前に細かく切るか、大きな口を開けてひと口で食べるか……毎回、かなり悩みます。噛みきれなかったもやしが喉に引っかかって窒息しそうになったことも。ゴマや白米など粒の細かいものは歯の上に大量に溜まるので、誰かと食事をするときはできるだけ避けたい食材のひとつ。『歯の表側に目立つ色の食材が詰まっていたらどうしよう……』とか『口に入れて、噛み切れなかったらどうしよう』と不安に駆られながら食事することが増えたような気がします(涙)」(ライター佐藤 梓さん)
口の中から聞いたこともない音が!
「初めてワイヤー矯正の装置をつけた時は痛すぎて何も食べられず、『このままだとすごく痩せちゃうかも……』なんて思ったけど、慣れってすごい。すぐに何でも食べられるようになりました。そんなある日、ベーグルを食べていたら、口の中で『ガリッ‼︎』という大きな音が! なんとワイヤーが外れた音でした……食べ物って意外と硬いんですね」(MAQUIAエディター横山)
矯正したことで想定外の嬉しい変化が♡
「マウスピースは手軽だけど、しっかり矯正効果を出すには1日20時間以上の装着が必要。装着中は水しか飲めなかったので自然と間食が減り、なかなか戻らなくて諦めていた産後太りの残り3kgがすんなり落ちました!」(MAQUIAインフルエンサーayakaさん)
ひどい虫歯ができたと思ったら、まさかの……
「矯正を始めてよかったなと感じるのが、歯医者に通う習慣がついて虫歯やトラブルを予防できるようになったこと。ところが、ある朝起きたら歯が痛すぎて悶絶。『絶対に虫歯だ……この痛みは神経まで達しているに違いない!』と慌てて歯医者へ駆け込んだら、まさかの異常なし。先生が笑顔で『これは歯が動いている痛みですね』と教えてくれました」(MAQUIAエディター横山)
タイムリミットを気にするあまり早食いに
「念願の歯列矯正だったので、先生から言われた『マウスピースは1日22時間装着』のルールを真面目に守っていました。でも、逆算すると1回の食事&歯磨きに使える時間は40分……歯磨きはできるだけ時間をかけて丁寧にしたかったので、必然的に早食いするのが習慣に」(MAQUIAインフルエンサーayakaさん)
本人だからこそわかる! 至福のチェックタイム
「ワイヤーを取り換えてから数日は、どんなに柔らかいものでも歯に響いて食欲がなくなるし、食事のあとにうがいをするとビックリするほど食べカスが詰まっていてげんなり。でも、少しずつ八重歯が引っ込んできて、隠れていた歯が前に出てくるなど、歯の位置が変わっていくのを鏡でチェックする時間が本当に楽しいです」(ライター佐藤 梓さん)
イラスト/白ふくろう舎 取材・文/国分美優紀 企画・構成/横山由佳(MAQUIA)
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