「乳がん」と聞いて、中高年のオバサンがなるもの…なんて思っていませんか? でも、残念ながら年代にかかわらず、若い女性にも乳がん患者が増えています。


乳がんはどんな病気? 誰でもなるの? 乳腺の専門医で乳がんの知識や検診の普及に長年尽力している「ピンクリボンブレストケアクリニック表参道」院長、島田菜穂子先生にお話をお聞きしました。

Image title



--20代30代の若い女性でも乳がんが増えているのは、なぜ?


「日本では最近は12人に1人が乳がんにかかると言われます。乳がんは先進国で増えていることから、女性のライフスタイルの変化が大きく関わっていることは確か。 食生活が豊かで発育や健康状態がよくなったこと、初潮を迎える年齢が早くなったこと、なのに出産・授乳経験が少なくなったことなど、生活の変化が乳がん増加の原因になっているのでしょう」

Image title

--乳がんは、おっぱいの何がどうなってがんになるのですか?


「乳がんというのは、乳腺(母乳をつくるとこ ろ)にできる悪性腫瘍のこと。初期には、痛みはもちろん体調が悪くなるなどの症状はほとんどないんです。唯一の変化が乳房のしこり。しこりは1cm〜 2cmくらいの大きさになると、自分で注意深く触ればわかります。がん細胞が血管やリンパ管の流れに乗り他の臓器に転移し全身へ広がっていったり、乳腺の周囲の皮膚や筋肉へ広がっていったり病気が進行するにつれて治療が難しくなるのです」



--しこりは、小さくても自分で触ってわかるのですか?


「乳房のわずかな変化を見逃さないことが何より大事。 自己検診、なんていってやり方を紹介することもありますが、難しいことはしなくていいんです。乳房を押して調べるのではなく、オイルマッサージをするように、3本の指を合わせて、肌から指を離さずに連続してすべらせるようにしてクリームをなじませましょう。そうすると自然とうまい力加減で乳房の検診をできます。毎日触っていれば異変がなければ何も気づきませんが、何か変化があれば気づけるようになります。でも、しこりがあっあったからといって、それが必ず乳がんというわけではありませんから、怖がらないでやってみてくださいね」

Image title



【次ページをCHECK!】乳がんにかかりやすい人って?

--先生、やはり怖いです! でも乳がんから復活して元気にしている人も多数いますね?


「そう、女性でかかる人が多いがんの1位は乳がんですが、死亡者数となると乳がんは第5位、1位は大腸がんなんです。これは、乳がんは早期であれば90%以上、実は限りなく100%に近く治るということ。乳がんは他のがんと比べると、怖いものではないということ。だから早期発見が大切なこと、知ってもらいたいと思います」


Image title

【 乳がんの病期(ステージ)分類 】

Tis:乳管内にとどまるがん。非浸潤がん(超早期)

0期:しこりや画像診断での異常な影を認めないもの

Ⅰ期:2cm以下のしこりで、リンパ節への転移がないと思われるもの

Ⅱ期:2cmを超える5cm以下のしこりがある、もしくはリンパ節への転移が疑われるもの

Ⅲa期:しこりが5cmを超えるもの

Ⅲb期:しこりが皮膚などに及んでいるもの

Ⅳ期:しこりの大きさを問わず、他の臓器に転移がみられるもの



--では、乳がんにかかりやすい人っていますか? 生活習慣とか?


「まず、乳がんの発症は女性ホルモンと密接な関係があって、女性ホルモンの影響を受ける年数が長いこと、あるいは女性ホルモンの量が多いことが関係していると言われます。初潮が早くて閉経が遅い人、出産・授乳経験がない人は女性ホルモンの影響を長く多く受けるということですよね。また、遺伝、環境は大いに関係があります。環境というのはその人の食生活や喫煙、過度の飲酒、ストレス、生活習慣など。遺伝要因と環境要因のかけ算で、発症リスクが上がると考えて。結局どんな人にも、なる可能性はあるのです。以下の項目でチェックしてみましょう」


【乳がんにかかりやすい人】

□ 母親、姉妹など家族にがんになった人がいる

□ 授乳経験がない

□ 乳がんや良性の乳腺疾病になったことがある

□ 初産年齢が30歳以上

□ 身長が高い

□ 閉経後、肥満になった

□ 初潮年齢が早い

□ 閉経年齢が遅い

□ 生まれたときの体重が重い

□ たばこを吸う

□ ピルを長期間使ったことがある

□ 不妊治療で女性ホルモン剤などを使用したことがある



【次ページをCHECK!】乳がんは遺伝するの?

--家族歴は特に気になります。乳がんは遺伝するのですか?


「注目されているのは『遺伝性乳がん』です。これは、正常な細胞がガン化するのを抑える『がん抑制遺伝子』が欠如したり変異したりするがんで、両親のどちらかから遺伝します。アンジェリーナ・ジョリーさんが、乳がん予防のため両乳房を切除したことはまだ記憶に新しいですね。彼女は遺伝子検査で80%の確率で乳がんになると判定されたのです。いまは検査でそこまでわかるようになっています。遺伝性乳がんの特徴としては・・・

◎若い年齢で発症しやすい

◎乳がんと卵巣がんを併発しやすい

◎男性が発症することもある


などです。血縁者に乳がんの人がいて、次の項目にひとつでも当てはまると、乳がんの遺伝子を持っている可能性が高いと言いことに・・・。。


遺伝性乳がんにかかりやすい人

□ 40歳未満で乳がんを発症した人がいる

□ 年齢を問わず、卵巣がんを発症した人がいる

□ 男性で乳がんを発症した人がいる

□ 父方・母方どちらか一方の家系内で2人以上、乳がんや卵巣がんを発症した人がいる


「これらに当てはまる人は、乳がんを発症した血縁者の発症年齢から更に10歳若い年齢から、受けるべきだといわれています。若年発症の乳がんの血縁の方がいたら、20代から検診に向かうことが必要と思います」



島田菜穂子 先生

ピンクリボンブレストケアクリニック表参道 院長。乳がん認定医、放射線科専門医、認定産業医、日本体育協会認定スポーツドクター。2000年、乳がん啓発団体「乳房健康研究会」を発足させ、乳がん啓発団体として日本初のNPO法人認証を受ける。同副理事長。乳がん関連の著書、監修が多数あり、最近の監修は「乳がんから自分をまもるために、知っておきたいこと。」(日本医療企画)。

ピンクリボンブレストケアクリニック表参道 http://www.pinkribbon-breastcare.com



撮影/河野敦樹 取材・文/蓮見則子



<<関連リンクはこちら>>


日本の伝統食材に学ぶ! 冷え・だるさ、気力低下など心身不調の解決策


最終更新日:

MAQUIA書影

MAQUIA2024年4月22日発売号

集英社の美容雑誌「MAQUIA(マキア)」を無料で試し読みできます。6月号の特集や付録情報をチェックして、早速雑誌を購入しよう!

ネット書店での購入

share