たとえば映画、ドラマ、文学、漫画……。ふとしたコトバから、美容に向き合ったり人生を前向きに生きるエネルギーをもらった経験、ありませんか? 自身を突き動かしたコトバを、美のプロがご紹介! 映像作品、物語、漫画の3つのカテゴリーに分けてお届けします。

迷ったとき、心にそっと寄り添う言葉たち 美と人生を支える、コトバノチカラ
美容ジャーナリスト
人はコトバでできている
人はコトバでできている……それは「人は食べたものでできている」とほぼ同じ意味。その人の内面的な魅力は、今まで耳にし目にしたコトバを、どれだけ心に刻みつけ、熟成させ、自分のものにしているか? で多くの部分が決まってくるからなのだ。
逆に、〝人の第一印象〟も一瞬の外見だけで決まるのではない、次の瞬間、発する言葉によって本当の印象が決定づけられる。それも、自分の中で熟成した言葉は、まさに血となり肉となり、その人自身になっているから。
とりわけ、小説や映画の中で出会い、ずっと自分の中で生き続けている言葉は、心理学で言うところの「感情ラベリング」。つまり、自分の中でぼんやりとしていた感情にタイトルをつけてくれたコトバに他ならない。だからそれは、あなた自身を形作っているコトバ。あるいはまた人生を正しく動かしてくれるコトバ。
思えば思春期に観た『風と共に去りぬ』という映画のラストシーンで、傷ついたヒロインが涙を拭きながら言うコトバ「考えるのは明日にしましょう」は、今まで何度自分の中に去来し、明日へのチカラをくれたか分からない。
そうやって、人はコトバと一緒に生きているのだ。そして、たくさんのコトバを持つ人ほど、美しく、奥深く、だから人を魅了する。自分も幸せだけれど、人も幸せにできる人。だからもっとコトバを! 潤いで自分を満たすように!
映像作品
名作は名言の宝庫
『ティファニーで朝食を』

©Moviestore Collection/AFLO
『アメリ』

©Album/アフロ
『シェルブールの雨傘』

©Photofest/アフロ
「映像、文学、漫画……目に入る全てのものからインスピレーションを受け、楽しいと思えるものに出合うとモチベーションが上がります。
ヌーヴェルヴァーグ系からブリジット・バルドー、オードリー・ヘプバーン、ジェーン・バーキンにはお洒落欲を刺激されましたし、『ブレードランナー』『フィフス・エレメント』といったSFまで、映像には美意識を刺激されるコトバが詰まっていて、メイクのアイデアにもたくさん触れられます。
ココ・シャネルには「20歳の顔は自然の贈りもの。50歳の顔はあなたの功績」という名言があるのですが、真実すぎて大好きです!」
ファッションは利便性じゃない。
アクセサリーは、
アイデンティティの象徴なんだよ。
『プラダを着た悪魔』 ダグ

©AFLO
エディター・ライター
「年齢やコンプレックスをカバーしたりカムフラージュしたりするのが美容ではない。言い訳していないで、ヘアスタイルやメイクアップも、自分らしさを大切に、自分の好きを大切に、私は私でいたいと思いました。
アン・ハサウェイが「表面的に」どんどん垢抜けていく、その姿にも、いろいろな意味で考えさせられました」
きれいだ 言葉もないよ
その髪や美しいドレス
『月の輝く夜に』 ロニー

「気になる男性(実は婚約者の弟)とオペラに行くことになった主人公。惹かれてはいけないと思いつつ、美容院に行き、靴とドレスを買って、とびきりのお洒落をして向かった彼女に見惚れて彼がつぶやくセリフ。
良い意味で「美しく装う」というのは外見だけでなく、内面にも影響し、それが又、外見に輝きとして表れる。だからこそ自らを整えることって大事たとえ、どんなに造作が整っている人であっても、自ら美しくなろうという気持ちがなければ、美しくはなれない。そのことを端的に表している映画です」
人を信じること。
そして何より、自分を信じることです
You must always have faith in people and most importantly, you must always have faith in yourself.
『キューティ・ブロンド』 エル・ウッズ
「美容は誰かと比べるためではなく、自分に自信を持つためのものだと考えるようになりました! スキンケアやメイクも、自分を好きでいられるための時間として楽しむ!
ピュアで真っ直ぐなエルが、周囲の固定観念を覆す姿に勇気づけられます」
カミソリは痛い、水は冷たい、薬は苦い、
銃は違法、縄は切れる、ガスは臭い。
生きてる方がマシ。
Razors pain you, rivers are damp, acid stains you, drugs cause cramps, guns aren't lawful, nooses give, gas smells awful, you might as well live.
『17歳のカルテ』 リサ・ロウ

『17歳のカルテ』デジタル配信中 発売・販売元:株式会社ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
© 1999 Global Entertainment Productions GmbH & Co. Movie KG. All Rights Reserved.

「アンジェリーナ・ジョリー演じるリサ・ロウの台詞。死ぬことのほうが面倒だから生きている、という一見後ろ向きな視点にとても強い意志が込められていて、それがリサの命を燃やす姿勢 ──かけがえのない魅力になっていると感じます。
この映画は60年代アメリカの精神病棟を舞台に、そこにいる少女たちを通して、自己肯定とは何か、正常なパーソナリティとは何か、生きるとは何かについて問いかける作品。
ショッキングな描写も多いですが、トラップの多い世の中を、どんな心持ちで生きるのか?と考えるとき、私はリサの姿勢に美しさを見ます」
結婚するつもりはないわ
誰の妻にもなりたくない
でも時々
その決意を忘れるの
『ココ・アヴァン・シャネル』でオドレイ トトゥが演じるガブリエル シャネルのセリフより

『ココ・アヴァン・シャネル』 デジタル配信中
権利元:ワーナー ブラザース ジャパン
ブルーレイ&DVD発売元/販売元:ハピネット・メディアマーケティング
© 2009 Warner Bros. Entertainment Inc. All rights reserved.
「凛々しく自由闊達なフランス女性の象徴・シャネルですら、「結婚」に心揺れていたんだ…!と思わされたセリフ。そして、そう言えることがとても潔く格好良い。人間は完璧な存在ではないけれど、自分の抱える弱さや矛盾を認め、それでも前に進んでいく人は美しい。
そして、そういう人の前にこそ道は開ける。何かに迷ったとき、落ち込んだとき、そういう自分をも許容できる女でありたいなと思わされました」
洋服は私のすべてなの!
人生そのものなの!
『やまとなでしこ』 神野桜子

『やまとなでしこ』DVD-BOX:¥25080
発売元:フジテレビジョン 販売元:ポニーキャニオン
©2001 フジテレビ/共同テレビ
「松嶋菜々子さんの所作や姿勢が美しくて、美意識が観るだけで上がる! このセリフにもある通り、桜子は食費や家賃をかなり抑えて、かわりに洋服を買っているキャラクター。
彼女は合コンに着ていくために日々洋服を集めているのです。影響を受けたのは、「美意識のためには取捨選択が必要」という部分。洋服に限らず、なんにでもお金や時間を使っていたら本当にほしいものは得られなくて、ちゃんと美意識を実現させるためには取捨選択が必要なんだとすごく感じました。
いまもスキンケアやメイクも、どこにお金や時間や手間をいちばん使うべきか?を意識しながら試行錯誤してます」
物語
武士は常に死と隣り合わせでも、
常に懐中に紅を忍ばせておき、
元気がない時、寝起き、
顔色が悪く見える時は
頬と唇に血色感をさして、
凛々しく美しくあれ
『葉隠入門』 三島由紀夫が伝える武士の心得を意訳

©新潮文庫
「江戸時代から血色感の大切さは変わらず、生命力を周りに知らしめる大切な部分だと再認識。もともとチークマニアなので響きました」
歳を取れば取るほど、(中略)
「私」未満から「私」そのものに
近づくためのヒントを
私は手に入れていくのかもと
今は思います。
『恋できみが死なない理由』 最果タヒ

©河出書房新社
エディター・ライター
「年齢による見た目の変化に出くわすたび、ショックを受けたり、溜息をついたりしながらも、どこか「ああ、私って、こういう人間なんだ」という気づきがあって、「こんな私も、いいんじゃない?」と思える……。
まさに、年齢や時間で、本当の自分が出来上がっていく感覚があったので、最果タヒさんのこの言葉に揺り動かされました。
以来、自信を持って、誇りを持って、揺るぎなく、自分という「素材」を育てるつもりでスキンケアをして、ときに「すっぴん」さえも最良のメイクアップと捉えて、好きな服を着て、好きな人と笑っている「未来」が見えるようになりました」
モデルは、あらかじめ考えられた
理論とか効果とかに
合わせようとしてはいけない
『マティス 画家のノート』 アンリ・マティス

©みすず書房

「この人はこうだよねとセオリーでメイクするのではなく、キチンとその人を見ること。そして相手の魅力に気づいて、自分の物差しに当てはめないことが大事なんです。
なぜなら読者変身企画などをすると、皆さん「自分とは違うけれど」と自分の理想の女性像を口にするのですが、その要素は必ず、その人の中に含まれている。つまり、自分の「好き」を表現すれば、なりたい感じになれるということです。
だからメイクでもファッションでも、自分はなぜこれが好きなんだろうと分析することが大切。「私なんて」と思わず、自信を持って突き進むこと。そこから初めて、具体的な方法論が出てくるんです」
まわりが思うほど
美女は幸せではない
『美女の正体』 下村一喜

©集英社文庫

「美女とは何か?と紐解いていく大好きな一冊です。漠然と美しいものが好き、美女が好きと考えている私ですが、じゃあ美女になりたいかというと、あっけらかんと「はい」とは言えない。
美女とはある種の業であり、リスペクト、畏敬の対象でこそあれ、無邪気に羨むものではないと教えてくれる一節。
一冊を通して、ますます美女というものが大好きになるし、美を理解したいというのが私の美意識のある種原動力のようなものなのだなと感じます」
「きれい」は入場料
『美人までの階段1000段あってもう潰れそうだけどこのシートマスクを信じてる』 エリース・ヒュー

©新潮社
「美容都市ソウルで過ごすことになったアメリカ人の著者が、美容に心惹かれつつ、そこにある非対称性やルッキズムについて考え、少しずつ進んでいくさまを描いたエッセイ。
まずは勝負の場にいるためにも、それなりの美や教養が必要なのは万国共通だよな……とヒザを打ちまくりました。「感じがいい」「清潔感がある」「コミュ力が高い」などの属性にビジュアルが占める要素は小さくない。
入場料を支払える程度のきれいはキープしたいと、ズボラになったときに自分を戒めるコトバです」
漫画
わたくしは
女である前にデザイナーです
『デザイナー』 鳳 麗香
「女であるというのは、単にそれが神様から与えられた性別であるだけのこと。それを捨てたりないがしろにするのではなく、でも、まず第1にクリエイターとして生きるのだという決意がにじんでいるコトバがとても素敵。
自分自身もそんな感じで生きてきたなと思ったりもしています」
そうですとも!
私達はみな
何という面白き世に
生きている事で
ございましょう!
そう思わなければ!
『大奥』 徳川家茂

©よしながふみ/白泉社

「幕末、徳川家茂の台詞。激動の時代に翻弄される家茂が、和宮との会話で自身の立場を捉え直す場面。
安寧な世ではなく、重責も大きく、いくらでも嘆くことができるけれど、だからこそ面白いこともたくさん起こるのだという心持ちには非常に励まされ、今の時代を生きる自分の美意識を支えてくれる言葉だと感じます」
わたくし あなたに選ばれた
わけじゃないもの
わたくしがあなたを選んで
あなたを愛したのよ
『あさきゆめみし』 朧月夜の君

©大和和紀/講談社
「かの有名な光源氏を描いた漫画。高校生の頃、古典の先生に勧められて読んでハマりました。女性はひたすら受け身だった平安時代に、自らの意志を貫く朧月夜の君の格好いいこと!
そんな彼女に、光源氏は「きれいだよあなたは ほんとうに輝くようだ」と感嘆する。美しさとは強さであり、自ら選び取る意志であり、逆境をも生き抜く自信が人を輝かせるのだと教えてくれました」
才能とは自分を
自分自身を信じることです
『ガラスの仮面』 月影先生

©美内すずえ/白泉社

「これは才能というだけでなく、その人が輝く土台になる言葉ではないかと思います。最近、自分に自信が持てない人が増えていると耳にしますが、自分ではなく他ばかりに目を向けているからではないでしょうか。
人と比べるのではなく、自分を信じて、自分を磨くこと。その過程そのものが、その人の輝きとなって表れるのではないか、と感じます」
少しの才能と
あふれる情熱
それに伴う行動力!
それがあれば
どこかで道が
開けると思う
『Paradise Kiss』 ジョージ

©矢沢あい/祥伝社
「ジョージのセリフが好きです! 一人一人持っているものは違うと思うけど、日々の積み重ねや努力があってこそ、自分を好きになれると思う。私の仕事観にも繋がる大好きな作品です」
MAQUIA 2026年11月号
取材・文/高見沢さとこ 構成/萩原有紀(MAQUIA)



































































































