美肌菌研究が進み、第2の美肌菌ブームと言われる今。肌に棲む菌たちを味方につけるには、善玉・悪玉・日和見という古い発想を捨て、菌の調和を叶える「バランスケア」が大事だった。今回は、そんな「菌」の最新基礎知識をお届け。
肌とカラダを支える「見えないサポーター」の謎に迫る
美と健康の菌バランス最前線
\そもそも…/
私たちの肌やカラダにいる「菌」って何なの?
ロレアルグループ 基礎研究所
鈴木 格さん
理学博士。生物学を専攻し、国内の化粧品会社に10年、フランスの製薬会社に8年勤め研究に携わる。2011年より現職。数々の化粧品ブランドを抱えるロレアルグループにおいて、製品の骨子となる基礎研究に携わる。
資生堂 みらい開発研究所
柴垣奈佳子さん
農学博士。基礎研究部門で皮膚常在菌を研究。美肌の要、常在菌を理解して活かすスキンケアの開発を目指す。
皮膚、腸内、口内に常在し、私たちと共生する微生物たち
人間はひとつの生命体で成り立っているわけではなく、実は目には見えない常在菌というサポーターと共存していることを知っていますか?「常在菌は、人それぞれ種類もバランスも異なり、法医学の世界で指紋的に活かすことが検討されているほど個性的」(鈴木さん)。「今の自分を気に入って棲み続けている常在菌メンバー、すなわち美肌菌を丸ごと大切にすることこそ、美しさのカギを握るのです」(柴垣さん)
肌の菌活は、悪玉を排除することにあらず。多種多様な美肌菌に分け隔てなくエサを与え環境を整えれば、悪玉の顔をした菌ですら、美肌に貢献するメンバーに。ランコムの“ジェニフィック アドバンスト N”は美肌菌をトータルで捉え、バランスを整える成分を配合。
小田の注目ポイントはここ!
表皮ブドウ球菌だけじゃない! あの、アクネ菌も立派な美肌菌
「一部の病原菌を除き、肌に棲む菌の生態系全体が美肌菌と考えています。アクネ菌にはいくつもの種類が存在し、ニキビへの関与の仕方も違うと考えられています」(鈴木さん)
種類も量も豊富な「多様性」を目指すのが、今どきの菌活
「肌で生態系を築く美肌菌。自然界と同じく、多様性こそが健全のカギ。菌たち同士は互いに助け合い、誰かが暴走しないよう、けん制し合うことで美肌が保たれます」(柴垣さん)
\3大美肌菌って?/
表皮ブドウ球菌
肌の細胞にうるおいの産生を促したり、免疫細胞の成長を助けるなど、バリア機能維持の主役。水分のある環境が大好き。
アクネ菌
ニキビの原因菌になるアクネ菌も存在するが、外敵から肌を守るなど、その多くは美肌に貢献。皮脂が大好物。
コリネバクテリア
アクネ菌同様、肌トラブルの原因菌になるものもあるが、実は美肌にも貢献。多くが皮脂を好み毛穴に棲息。
見えないだけにわかりにくい
菌&菌活Q&A
Q.洗顔で美肌菌が流れたあと、肌はどうなる?
A.無防備な状態。早く美肌菌を増やして、もとに戻すケアを
「洗顔後は肌表面の美肌菌は少なくなり、無防備な状態といえます。個人差はありますが、美肌菌がもとの状態に戻るには何時間もかかります。この美肌菌回復までの時間を短くすることが重要です」(鈴木さん)
Q.美肌菌にいいコスメって、何をしてくれるの?
A.美肌菌のバランスを整える結果として肌バリアを強化
「美肌菌のエサとなり、棲みやすい環境を整えます。その結果、美肌菌による修復促進・保湿、外敵からの防御、そして、肌のバリア機能アップが期待できます」(鈴木さん)
Q.お手入れ不足や体調不良のとき、美肌菌はどうなっている?
A.置かれた状況に対応しようと通常と異なる菌が頑張っています
「悪環境に対応しようとして、その人の美肌菌の中で“頑張る菌”がバトンタッチ。肌あれやニキビができるのは、菌バランスが変化した結果ともいえます」(柴垣さん)
Q.きれいな人の菌をもらえば美肌、美ボディになれる?
A.一時的な変化はあっても他人の菌は定着しない
「他人の菌も、与え続ければ何らかの影響はありますが、止めればもとの菌バランスに。美を育むには、自分の常在菌のバランスをベストに整えることが先決です」(柴垣さん)
MAQUIA9月号
撮影/大原敏政〈aosora〉 取材・文/小田ユイコ 構成/若菜遊子(MAQUIA)