「MAQUIA」3月号では、肌がゆらぐ、敏感になるこの季節の対策について大特集。今、美容業界で注目されている“肌知性”をキーワードに、最新の美肌科学に迫ります!

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カサカサチクチクひりひり

体の外&中からの刺激で悲鳴を上げる
ざわつく肌”を落ち着かせる100100

季節の変わり目や月経前などに感じる、いつもとは違う肌の不調。ヒリヒリしたり赤み、かゆみが出たり……肌も心もざわざわするのはなぜ? ざわつきの正体を見極めて、どんなときでもゆらがない美肌を目指して。


マキアビューティディレクター
髙橋美智子 責任編集

ざわつかない肌のために今
注目されているのは“肌知性”

肌には、体の内外から様々な情報を受信し、肌自らが良い刺激と悪い刺激を見極める能力があるという。その肌の“知性”の最新科学とは?


お話を伺ったのは…

資生堂 グローバルイノベーションセンター 研究員
櫻井菜海子さん

ブランドの情報開発や商品開発などに携わり、特にアンチエイジング領域に詳しい。最先端の肌サイエンスを分かりやすく伝える。


マキアビューティディレクター
髙橋美智子

女性誌編集者を経て美容ジャーナリスト、マキアビューティディレクターに。大学院で化粧心理学を研究中。美容を科学する。


“肌で感じる”ことは、想像を超えた超自然(スーパーナチュラル)なスキンケアだった

肌の持つすごい能力を目覚めさせて強い肌に

いま、肌の生まれ持った能力が科学的に明らかになりつつあり、皮膚の治療やスキンケアに応用され始めている。肌の能力=知性とは、まるで脳のように表皮自らが光の色や音、心地よい温度などの感覚を感知し、思考し、伝達するという力である。

もともと私たちの祖先は体毛で覆い身体を守っていたが、苛酷な環境に適応して生き延びるために体毛を脱ぎ捨て、肌を露出して、様々な情報や危険を速く多く察知する能力を獲得したらしい。人間の脳が大きくなったのは皮膚が受け取った膨大な情報を処理するためという説も。

その肌が獲得した能力というのが色や音の識別や、心地よい温度や視覚、聴覚、嗅覚や味覚、触覚のセンサー(受容体)であり、情報処理システム。肌はいわば“剥き出しの脳”でもあるのだ。

そんな肌のすごい性質が明らかになってきたいま、私達は肌の力を目覚めさせ、日々育むことでもっと肌の能力を高めることができるはず。例えば、音を聞かせることだったり、肌をなでることだったり、光を浴びることだったり。それだけでも表皮のケラチノサイトは活性化して、肌のダメージさえ回復させてしまうのだ。つまり、肌で感じることは、私達の想像を超えたところで起きている“超自然なスキンケア”なのだ。ぜひ日々の生活のなかで肌の感性を目覚めさせることを心がけてみてほしい。これ以上理にかなった、効果的なスキンケアはないのだから。


色を見る肌

肌は目と同じように“色”も識別している


Q 肌にも“知性”があるってどういうこと?

A 実は脳と同じ働きが肌にもあるのです!

肌の一番外側の層である表皮。表皮と脳は、もともと受精卵が細胞分裂する際に同じ外胚葉から発生する。「発生学的に同じことから表皮と脳は関連が深く、色や音を識別したり情報処理するといった脳と同じ働きがあると言われています」(資生堂・櫻井さん)


Q 脳と肌、どっちが賢い?

A 実は脳よりも肌のほうが速く情報をキャッチし、指令を出しています

どちらがより賢いということは言えませんが、表皮のほうが脳よりも速く外的や内的の刺激の良し悪しをキャッチし、身体に情報伝達している場合もあります。


Q どうして肌は知性を持つようになったの?

A 苛酷な環境の中で、体毛をなくして肌を露出し
感受性を高めなくてはいけなかったからかも

「もともと人類は体毛に覆われていました。苛酷な環境を生き抜くため、体毛をなくし肌を露出することで、より危険を察知する“肌の能力”を発達させたと言われています」(櫻井さん)


Q 肌は色をどう識別している?

A 表皮は、人間の目では見えない波長の色も識別しています

「紫外線や赤外線など、表皮は私たちが見えない紫や赤といった光の色を識別しています。実は表皮にも目の網膜にある光受容物質『ロドプシン』と『オプシン』が存在するため色を識別することができるのです」(櫻井さん)

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音を聴く肌

肌だけが聴こえる音にはバリア機能回復効果がある


Q 音が聞こえているって本当!?

A 耳では聞こえない高周波も感じています。
さらに、ある周波数を聞かせるとバリア機能が回復するという事実も

人間が耳で聞き取れる音の周波数上限はせいぜい16〜20kHzだが、表皮は100kHzまで聞き取っていて、気圧、磁場を感知している可能性も。


Q 肌には“記憶”する働きもある?

A 表皮にはNMDAという記憶や学習などに深く関わる受容体があります

「脳の記憶を司るスイッチの役割を持つNMDA受容体が表皮にもあります。言語化できないものを情報として表皮に保存し、心地いい、悪いを無意識に選び出そうとしているのかもしれません」(櫻井さん)


Q 肌に音を聞かせると美肌になるの?

A なります。イヤホンやテレビで音を聞くより
ライブなどで肌で音を浴びるといいです

「ダメージのある皮膚に30kHzの音を照射したところバリア機能が早く回復したという研究結果があります」(櫻井さん)。例えば、ピアノの音や都会の環境音は20kHz以下だが、青銅楽器のガムランや熱帯雨林の周波数帯域は100kHzにも及ぶ。皮膚にいい音(周波数)を浴びることもスキンケアのひとつといえるかも。

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Q 肌は時間も認識できてる?

A そうとも言われています。
肌に光を当てると時差ボケが軽減するという研究も

表皮は光によって昼や夜といった時間をも感知しているという。視覚障害の方の膝裏の表皮に光を当て実験をしたところ、時差ボケが少なかったという研究が。


Q ストレスは肌の知性を低下させてしまう?

A そのとおりです!

「表皮のバリア維持システムはストレスホルモンの影響で作動しなくなります」(櫻井さん)


癒やしホルモン味覚嗅覚

表皮は癒やしホルモン「オキシトシン」を自ら作り出していた


Q ほかにどんな知性を持っている?

A 表皮には愛情ホルモンの
オキシトシンを出す機能があります。

撫でることは肌知性の向上にも効果的かも

愛情ホルモンであるオキシトシンは、脳だけでなく、表皮でも合成されるという。血中のオキシトシン量は皮膚への刺激によって増加するので、マッサージによって気分が穏やかになるのはそのため。撫でることは癒やしと、肌の知性を高める効果が。


Q 味覚もある!?

A 味覚を感じとる受容体が肌にも存在します

表皮には唐辛子のような辛味成分やピリピリとした刺激に応答するTRP(トリップ)V 1という受容体が存在。感覚チャンネルであるTRPはいま、スキンケアでも注目されている細胞感覚センサー。

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肌の免疫力反応に関わる感覚センサーTRPM 4に着目した、肌ストレスから守る美容液。エムフォー センサラクティブセラム 50g ¥5500/マンダム


Q 今後、さらに肌の知性について解明されることは?

A 肌にはにおいもかぎ分ける嗅覚も
持ち合わせているのでは、と考えられています

まだはっきりとは解明されてはいないが、あるドイツの研究では白檀の香りの分子で作動する受容体が表皮に存在し、その受容体を作動させると傷の治りが早くなったという。近い将来、肌の嗅覚も解明されるかも。


Q 加齢によって肌知性は衰える?

A 年をとっても肌の知性は衰えないと言われています

「まだはっきりとは言えませんが、加齢によって肌の知性は衰えないと考えられています。むしろ肌知性が高まる可能性もあるという説も」(櫻井さん)


肌知性を高める

肌知性を高めることで環境やストレスに左右されない肌になる


Q 美肌のひとは肌の知性が高い?

A 見た目の肌がきれいだから肌知性が高いというのではなく、
ストレスや刺激、環境に左右されない、
土台がしっかりした肌が知性が高いと言えます

「シワやシミがない肌=知性の高い肌とは限りません。見た目ではなく、環境の変化やストレスなどで肌がゆらがない、しっかりとした土台や基盤のある肌が知性の高い肌と言えます」(櫻井さん)


Q 肌の知性は鍛えることができる!?

A できます

「知性を高めることを“肌の機能性を高めるアプローチ”と考えると、鍛えることは可能です。肌の修復力や防御力を高める基盤ケアが効果的です」(櫻井さん)

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肌の知性に着目し、肌の潜在能力を引き出すスキンケア。(右)肌の知性が低下する夜の肌のメカニズムにアプローチするクリーム。ラ・クレーム(医薬部外品)30g ¥60000(2/21発売)、(左)肌の知性を目覚めさせる美容液。同 ル・セラム 30ml ¥16000/クレ・ド・ポー ボーテ


Q つまり、肌の知性を高めることで
敏感肌やゆらぎ、肌トラブルを回避できる?

A もちろんです。肌知性を高めることで回避可能です

「肌の基盤を向上させて肌知性が高まると、刺激が来ても敏感やトラブルになりにくい、刺激から回避しやすい肌になると考えられます」(櫻井さん)



MAQUIA 3月号

撮影/天日恵美子(モデル) ヘア&メイク/藤本 希〈cheek one〉 スタイリスト/立石和代 モデル/黒澤はるか 取材・文/髙橋美智子 企画・構成/髙橋美智子(MAQUIA)

※本記事掲載商品の価格は、本体価格(税抜き)で表示しております。掲載価格には消費税は含まれておりませんので、ご注意ください。


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