会議中や食事中など、不意として訪れる「むせ」。なぜだか静かなシーンで突如として訪れることから、厄介ものだと思われがち。ですが、「むせる力」は体の防御反応。その必要性を解説しつつ、むせる力に必要な筋肉のメンテナンス方法を、医師で嚥下相談医でもある、藤谷順子先生にお聞きしました。

- Q1.そもそも、どうしてむせるのでしょうか?
- Q2.加齢とともに、むせやすくなる?
- Q3.むせる力がなくなるとどうなるの?
- Q4.今からむせる力を鍛えたほうがいいの?
- Q5.歯磨きとうがい以外には、何に気をつけたらいい?
- 今すぐできる! 飲み込む力を鍛えられるエクササイズ

国立国際医療研究センター病院 リハビリテーション科診療科医長 日本嚥下医学会認定 嚥下相談医
藤谷順子先生
医学博士。日本リハ学会専門医・指導医、日本摂食嚥下リハ学会認定士、義肢装具適合判定医、身体障害者福祉法15条指定医。著書は『ムセはじめたら、「1分のどトレ」』(世界文化社)、『テクニック図解 かむ・飲み込むが難しい人の食事』(講談社)など多数。
Q1.そもそも、どうしてむせるのでしょうか?
A1.「むせる」のは気管に異物が入るのを防ぐ体の防御反応
「気管に飲み物や唾液などの異物が入ったときに、それを出そうとする身体の防御反応で、液体だけでなく、たばこのけむりや刺激が強い揮発性物質が入ろうとしたときにも、同じ反応が起こります。むせたくないシーンでゴホゴホすると困るところではありますが、体の防御反応ですから、むせるべきときはむせたほうがいいのです」(以下、藤谷先生)

Q2.加齢とともに、むせやすくなる?
A2.年齢とともにむせる力も衰えていきます
「飲み込む動作は、『食道に入れて、気道には入れない』行為ですが、年齢とともに、飲み込みの精度が落ちて、気道に入る確率が少しずつ増えていきます。気道に不適切に入ったものを出すために、むせ(咳)が生じますから、加齢とともにむせることが増えます。いっぽうで、反応する感覚や、むせる力も衰えていくため、衰えが進むと、かえって、むせが目立たなくなる、ということもあります」
Q3.むせる力がなくなるとどうなるの?
A3.気管から異物が侵入し誤嚥性肺炎を招くことも
「飲み込む力とむせる力があれば、もし気道に食物や唾液が入ってしまっても、それを外に出すことができます。しかし、その力がなくなると、異物が誤って気管に入り、誤嚥性肺炎を招いてしまうことも。高齢者の方はとくに注意が必要です。まだまだお若いみなさんは、誤嚥のリスクは低く、何かの折にむせるだけなので、『むせ=厄介者』と感じている方も少なくないでしょう。ですが、むせることは、ある意味、体の正常な防御反応。年齢を重ねたときに健やかに生活するためにも、『むせる力』を保つことは大切です」
Q4.今からむせる力を鍛えたほうがいいの?
A4.もちろん。呼吸筋力や腹筋背筋を鍛えましょう
「むせる力には、呼吸筋力や腹筋背筋が関連しています。全身運動をしていれば、基本的には維持されて鍛えられますし、歌ったり、楽器を吹いたりすることなどでも鍛えられます。また、身近なところでは、歯磨きの際にぶくぶくうがいをしっかりすることも重要。息を止めてぶくぶくぶくぶく…として、ぺっと強く吐きましょう。それをコップ一杯分繰り返します。歯磨きも重要ですが、うがいまで気を使ってください」
Q5.歯磨きとうがい以外には、何に気をつけたらいい?
A5.よく噛んで食べることが大切!
「⻭応えのあるものをしっかり噛んで飲み込むことで、噛む⼒はもちろん、⾆や頬の⼒も鍛えられます。舌の訓練や、飲み込む力に関係する首の筋力訓練は、この後ご紹介しています」
今すぐできる! 飲み込む力を鍛えられるエクササイズ
「頬・喉・首まわりの筋肉をまるっと簡単に鍛えられるエクササイズをご紹介します。こういったエクササイズは三日坊主になりがちですが、毎日の生活に取り込める気軽なトレーニングなので、思い出したときだけでもトライしてみてください」
①ほっぺた筋トレ「コップ一杯のぶくぶくうがい」

歯磨きのうがいの際に水を口に含み、片側の頬に水をキープしたまま、ぶくぶくぶく。左右10秒ずつ行い、コップ一杯分を繰り返す。唇の力・頬の力・舌の側面の力がアップ。
②首の筋肉を整える「頭あげ体操」

ベッドなどで横になった状態から、頭を持ち上げる。肩をベッドから離さないように注意し、胸をのぞき込むように頭を持ち上げ、15秒間キープ。3秒休んで15秒持ち上げる動作を、3回繰り返す。あごを胸に近づけるように意識するとスムーズ。
③舌の奥の筋肉を鍛える「ガ・ギ・グ・ゲ・ゴトレーニング」

「ガ・ギ・グ・ゲ・ゴ」「ガガ・ギギ・ググ・ゲゲ・ゴゴ」「ガガガ・ギギギ・グググ・ゲゲゲ・ゴゴゴ」と、各音を1つずつ5音まで増やしながら、ていねいに発音。1音ずつゆっくりと発音することで、飲み込むときに必要な、舌の奥の筋肉が鍛えられる。
監修/藤谷順子 イラスト/二階堂ちはる 取材・文/桶川雅代 構成/佐藤 陽(MAQUIA)
公開日:










































































































