手放すほどに、キレイはもっと上手くいく! 「MAQUIA」9月号では、「捨てる美容」を大特集。今回は齋藤 薫さんが語る「捨てる美容のすすめ」をお届けします。

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コップの水を捨てないと
新鮮な水は注げない

「コップの水を捨てなさい。でないと、新鮮な水はいつまでたっても注げない」

何かの本に見つけた一文。それは、実らない恋愛はいくら続けても実らない、だから自ら終わらせて、新しい生活を始めましょう。そうすればきっと新しい出会いがある……そういう意味の提案だったと思う。若い頃、まさしくそういう希望のない恋愛にこだわり続けていた時期があり、そうだ、コップの水を思い切って捨てなければ!と激しくそう思ったのを覚えてる。以来、何だか人生がややこしくなったり、息苦しさを感じるたび、「何はともあれ、早くコップの水を捨てなきゃ」と思うようになった。

大切なのはいらないものを捨てること自体より、あくまで空になったコップに新鮮な水を入れること。それを忘れてしまうから、捨てることを億劫に思ったり、躊躇するのだ。だからまずは、新鮮な水を注ぎ入れることこそ、究極の浄化であるのを知ってほしい。濁った水の中では、自らも濁ってしまうことを。だからなんだかモヤモヤしてきたら、このコップの水の話を思い出してほしいのだ。

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断捨離が一大ブームとなるずっと前のこと。すでにクローゼットには着なくなった服と、使わなくなった化粧品が溢れかえっていた。これを半分、いや3分の1に減らしたら、どんなにか清々しいだろう。どんなに空気が澄んでくるだろう。肌荒れが治ったり、肌が透明になるかもしれない。なぜなら人は、生活空間の“保護色”になっていくから。保護色とは言うまでもなく、本来自分の身を守るため、自分の体の色を周りの色に同化させること。つまり人間は見た目にも、暮らし方の通りの姿になっていくと考えるからなのだ。散らかった部屋に住んでいてはいけないのは、見た目にも散らかった印象の女にならないため、それこそが、捨てる美容の本質なのである。

「断捨離」にしろ、「ときめく片付け術」にしろ、誰もが“今すぐにでもすべきこと”なのは十分にわかっている。問題はそれを始めるモチベーションと、支えるエネルギーがあなたにあるのかどうか。コップの水を一気に捨てるのって、やっぱりそう簡単ではないし、捨てずに新鮮な水を入れても、水は決してきれいにならないから。もし一気に捨てるのが怖いのなら、一度仮の容器に入れてどこかに隠しておく。ワンクッション置いて、捨てることに納得が行ったら、捨てる。そんな方法を使ってでも、いらないものは確実に捨てたいのだ。

そしてモチベーションの持ち方としては、まず断捨離や片付けに憧れを持てること。みんながやるから、義務だからやるのではなく、“とても素敵なこと”として憧れられるかどうか。その結果生まれる新しい暮らしを心から尊いものと思えれば、それがエネルギーとなって大掛かりな片付けも成し遂げられる。

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以前、着なくなった服を大きな袋に10袋も捨てたという友人がいて、捨てることが何より苦手で物がどんどん溜まっていく私が、何と羨ましいことと、たちまち物を捨て始めた。身近に断捨離をした人がいると、不思議なことに自然に断捨離を始められるのは、ある意味それが人間の本能だからなのだろう。人間は、生き方が煩雑になってくると、それをリセットし、人生をやり直そうとする自浄本能があるからこそ、何かのきっかけでそのスイッチがオンになるのだ。それが、断捨離をした人への羨ましさ。自分もそんな生き方がしたいという強い憧れ。

ともかく余計なものを持たず、シンプルに生きている人は、もう決定的に素敵に見える。余分なものをそぎ落としているだけで、その人は人として完成していると思えるくらいの究極。なぜならそれは、人として何が大切なのかが見えた証であり、またシンプルになるほど、さらにまたもっと大切なものが見えてきている証だから。そうした良循環が、人間をみるみる完成させ、だから、皆輝いて見えるのである。

例えば、離婚を決意して自らの力で生きていこうとする女性に対し、ネガティブな見方をする人はまずいない。シンプルに生きようと、人生の不純物や雑念を自ら切り捨てた人が秘めた力強さを知っているから。そしてまた、切り捨てたことで人が一気に成長することも、みな本能で知っているから。

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これまでは恋愛を優先してきたと自ら語り、最近になってそういう意味でも生き方の断捨離を行ったという戸田恵梨香さんには、大きな共感が集まり、支持が高まったとされる。経験を積んで、すべてを知ったからこそ、シンプルに生きることの素晴らしさに気づいた人は精神的にも成長が早いという判断をされるから、尊敬も集めるのだ。

全く逆に、生き方にも持ち物にも無駄が多い人がどこか不安定に見えるのは、明らかに迷いがあることが証明されてしまうから。それこそ不純物や雑念をいろいろ抱えて生きていることが見えてしまうからこそ、存在もくすんで見えるのだ。捨てた人は、そうしたくすみや濁りが取り払われるから美しい。大切なものは何か、シンプルになればなるほどそれがはっきり見えてくるから美しい。

大丈夫。それはすべての人に備わったリセット機能、あとはスイッチオンするきっかけを見つけるだけなのだから。

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MAQUIA9月号

撮影/峠 雄三 ヘア&メイク/岡野瑞恵〈storm〉 スタイリスト/コギソマナ〈io〉 モデル/小嶋陽菜(マキアモデル) 企画/火箱奈央(MAQUIA)


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