冷え、不眠、ストレスに「切り替えスイッチ」で立ち向かう
自律神経を味方につける100知識
心身ともに不調が起きやすいこの時期。原因は自律神経の乱れの可能性が! 今こそ正しい知識を身につけて、心も体も元気に。
教えてくれたのは…
順天堂大学医学部教授
小林弘幸先生
東京都医師会理事。日本体育協会公認スポーツドクター。自律神経研究の第一人者。著書多数。
みぞぐちクリニック 院長
溝口 徹先生
オーソモレキュラー栄養療法を診療に応用。著書は『この食事で自律神経は整う』(フォレスト出版)。
産後20kgやせに成功。SNSのフォロワー数35万人超え。著書は『生きてるだけでやせる図鑑』(西東社)など。
基本のメカニズム
まず、自律神経の働きや、交感神経と副交感神経の役割、バランスが乱れる原因など、基本的なメカニズムを知ることからスタート。
血液
血液の流れを司っているのは自律神経。自律神経が整うと血流がよくなり、全身の細胞の機能が活性化。
肝臓
自律神経が整っていると、血流がよくなることで肝臓の働きもよくなるため疲れにくく元気になる。
腸
自律神経が整っていると腸の働きがよくなり、栄養の吸収がよくなって肌や髪にツヤも。排便もスムーズに。
自律神経は生命維持を司る重要な神経
「自律神経は、脳から体の器官に情報を伝える神経のひとつ。内臓の働きや血液の流れ、体温調節、消化吸収など生命を維持するための機能を司り、私たちの意思に関係なく24時間働き続けている重要な神経です」(小林先生)
自律神経を介して心と体はつながっている
「自律神経は体を巡る血液を司り、それによりエネルギーが届けられ全身の細胞が活性化。精神状態が乱れると自律神経が乱れて血流が悪くなり心身に不調が発生。心と体は自律神経を介してつながっているのです」(小林先生)
「アクセル」の交感神経と「ブレーキ」の副交感神経がある
「自律神経には、活動時に体をアクティブにする“アクセル”の役目の交感神経と、睡眠時や休息時に体をリラックスさせる“ブレーキ”の副交感神経の2種類があります」(小林先生)
交感神経、副交感神経の どちらが優位かで体は変わる
「交感神経が優位になると血管が収縮し、心拍数と血圧が上昇。心身とも興奮状態に。副交感神経が優位になると血管が緩み、心拍数や血圧が低下し、心身がリラックス」(小林先生)
自律神経のリズムは1日のうちでも変化する
「朝から日中は交感神経が優位になって活動モードになり、午後には副交感神経が上がり始め、夜になると副交感神経のほうが優位に。これが正常なリズムです」(小林先生)
自律神経のリズムに沿った生活が 健康の最大の秘訣
「日中は活発に動き、夜は休息するという自律神経のリズムに沿った生活を送れば自律神経は乱れにくく、不調も起きにくくなります。これが健康の最大の秘訣です」(小林先生)
交感神経&副交感神経どちらも高いのが最強!
「交感神経が過剰に優位になると血流が悪くなり病気の原因に。逆に副交感神経が過剰に優位だとアレルギーなどが起きがちに。理想的なのはどちらも高い状態です」(小林先生)
不調のほとんどは、自律神経の乱れが原因
「自律神経が乱れると血流が悪くなって細胞に栄養が届かず、老廃物も停滞。結果、頭痛、肩こり、腰痛、疲れ、だるさ、便秘、不眠、イライラなど多くの不調の原因に」(小林先生)
自律神経の働きは 10年ごとに15%落ちていく
「自律神経のトータルパワーは加齢とともに低下し、女性は40代以降に、10年で15%ずつ下がっていくというデータが」(小林先生)
自律神経は女性ホルモンと 深く関わり合っている
「女性ホルモンの分泌の指令を出す中枢と、自律神経の中枢は共に脳の視床下部です。そのためどちらかが乱れると、もう一方のバランスも乱れやすくなります」(小林先生)
腸の働きとも密接に関わっている
「副交感神経が優位になると腸は活発に動きます。逆に交感神経が優位だと腸の動きが悪くなります。旅先で便秘をするのは緊張して交感神経が優位になるためです」(小林先生)
自律神経が乱れると免疫力が落ちる
「免疫力を担う血液中の白血球には、細菌など比較的大きめの異物を処理する顆粒球と、ウイルスなど小さな異物を処理するリンパ球があります。自律神経が乱れるとこの白血球のバランスが乱れ、免疫力が低下」(小林先生)
夜更かしやストレス、天気など、 ちょっとしたことで乱れやすい
「自律神経は、夜更かし、睡眠不足、過労、ストレス、天気や気温の変化などさまざまな要因ですぐ乱れます。特に多忙な現代人は交感神経が過剰に優位になりがち」(小林先生)
デジタル生活が 交感神経を過剰に優位にする
「スマホやパソコンが発するブルーライトは交感神経を優位にします。現代人は夜遅くまでスマホやパソコンを見ているので、夜も交感神経優位のままの人が多数」(小林先生)
怒りや不安など、 ネガティブな感情も、自律神経の乱れに
「怒りや不安などのネガティブな感情は、交感神経を刺激して心身を緊張モードにするので不調も起きやすくなります」(小林先生)
コロナ禍で自律神経が乱れている人が増加
「コロナ禍による不安やストレス、在宅ワークによる生活リズムの乱れなどから、自律神経が乱れている人が増えています」(小林先生)
実は日焼けも自律神経を乱す
「日焼けは炎症と脱水を招き、交感神経を過剰に優位に。日焼け対策は万全に。日焼けしたら水分を多く摂り、脱水予防を」(小林先生)
自律神経のバランスがいいと見た目も若く見える
「自律神経のバランスがいいと、胃腸の調子がよくなって栄養素が十分に吸収できるため、良質の血液が隅々に行き届き、肌や髪にツヤが出て、見た目が若々しく」(小林先生)
自律神経のバランスには4つのタイプがある
「交感神経と副交感神経のバランスは人によって違い、下の図のような4タイプがあります。理想はどちらも高い状態」(小林先生)
2つとも低いのは疲れてぐったりした状態。交感神経のほうが極端に高いのはストレスを抱えイライラしやすい状態。副交感神経のほうが極端に高いのは体がだるく常に眠い状態。
自律神経は生活習慣によって 整えることができる
「生活習慣によって自律神経が整うよう働きかけることは可能。規則正しい生活、適度な運動、メンタルケアを心がけて」(小林先生)
笑顔を作るだけでもバランスは整う
「笑顔を作ると口角が上がって顔の緊張がほぐれ、副交感神経が優位になり自律神経が整います。作り笑いでもOKです」(小林先生)
自分の自律神経の状態を チェックしてみよう
「以下は自律神経が乱れているとき起きやすい症状。ひとつでも当てはまれば乱れている可能性が。数が多いほど乱れ度大」(小林先生)
手軽に測定できるアプリも!
小林弘幸先生監修のアプリが「CARTE」。「スマホのカメラに60秒指を置くだけで自律神経スコアを数値で示してくれます」(小林先生)
「CARTE by CyberAgent」。登録・利用無料。iPhone 5s以降、フラッシュ付き端末で利用可。
自律神経を整える
1日の過ごし方
自律神経を整えるには、1日の過ごし方がとても大事! 朝、昼、夜のおすすめの過ごし方を知っておき、正しいリズムに整えて。
ゆったりと時間に余裕を持って
【朝編】
朝は副交感神経から交感神経に切り替わる時間帯。うまくスイッチを切り替えて、ゆったりと過ごすことが1日を快適にするコツ。
1日のうちでも朝の過ごし方が特に重要!
「副交感神経は明け方にかけて徐々に低下し、交感神経優位にゆっくり移行します。しかし朝慌ただしく過ごすと副交感神経が一気に低下し、緊張や興奮を1日中引きずるので、朝の過ごし方は重要です」(小林先生)
いつもより30分早く起床を心がける
「ギリギリに起きて忙しく朝を過ごすと副交感神経が一気に下がりNG。いつもより30分早く起きてゆったりと行動を」(小林先生)
カーテンを開けて太陽光を浴び、 副交感→交感に切り替え
「朝はカーテンを開けて太陽光を浴びましょう。体内時計が正しい状態に整い、副交感神経から交感神経へ正しく切り替わります。幸せホルモン“セロトニン”の分泌も促進」(小林先生)
メリハリをつけるのが正解!
【昼編】
昼は、交感神経が優位になる時間帯。アクティブに過ごして、リズムにメリハリをつけるのが正解。仕事中のストレス対策もマスト!
移動中はなるべく階段を使う
「デスクワークをしていると血流が悪くなり自律神経が乱れます。階段を上り下りすると血流が改善するので移動は階段で」(小林先生)
午前は頭を使う仕事、午後は機械的な作業を
「脳が最も活性化するのは午前中。頭を使う仕事は午前中にするのが◎。交感神経の働きが低下し始める午後は、深く考えなくていい機械的な作業が向いています」(小林先生)
プレゼンなど緊張する仕事の前は1:2呼吸法
「プレゼンなど緊張する仕事の前には1:2呼吸法を。副交感神経が効果的に高まり、心が落ち着いて本領を発揮できます」(小林先生)
3秒かけて鼻から息を吸い込み、口をすぼめて6秒かけてゆっくりと息を吐く。これを5〜7回繰り返す。
朝までぐっすりの過ごし方!
【夜編】
夜のポイントは、交感神経の働きを抑えていき、寝る前までに副交感神経にきっちりと切り替えること。これで朝までぐっすり。
照明はできるだけ暗めに
「眠気を誘うホルモン・メラトニンの分泌は明るい光によって減ってしまうため、眠気が妨げられます。夜は間接照明にするなどして照明を暗めにしましょう」(西川さん)
夕食は寝る3時間前までに
「夕食を摂ってから寝るまでの時間が短いと、交感神経が高いまま寝ることになり、副交感神経によって行われる消化・吸収が不十分になり、睡眠の質も低下。夕食は寝る3時間前までに済ませましょう」(小林先生)
ベストな食事の比率は朝4:昼2:夜4
「1日の食事の割合は朝4:昼2:夜4がベスト。ただし夕食が21時以降になる場合は4:2:2にして消化がいいものに」(小林先生)
自律神経を整える
「食事術」
食品に含まれる栄養素や、食べ方などによっても自律神経は整えることができる。コツを知っておいて、毎日の食事に取り入れて。
美のプロたちの
自律神経の整え方
自律神経を整えるための生活習慣は、美のプロの間では、もはや常識。どんな方法を実践しているのか、4人の達人の方法を公開。
MAQUIA 2021年8月号
撮影/彦坂栄治〈まきうらオフィス〉 ヘア&メイク/榛沢麻衣 スタイリスト/立石和代 モデル/朝比奈 彩 取材・文/和田美穂 構成/髙橋美智子(MAQUIA)
編集部
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