クリスチャン・ディオールと偉大な写真家。4月~5月に開催された国際的写真祭で、ビューティーへの視点にも革命を起こした稀有なクリエーターたちの足跡を辿る。
What's KYOTOGRAPHIE? 〜京都国際写真祭とは〜
伝統文化を守りながら、先端カルチャーの発信地でもある京都で、毎年開催される国際的な写真祭“KYOTOGRAPHIE”。日本では表現媒体として、まだ評価が低い「写真」の可能性を探る写真祭でもあるという。第10回を迎えた今年、ディオールはメゾンと縁の深い写真家の作品と共に、麗しいヘリテージを公開。
貴重な写真のコレクションを、京都の歴史的な建造物やスタイリッシュな近・現代建築の空間に展示。市内に点在する会場を巡りながら、京都の町を散策する気分にも。(左3点)今回、アーヴィング・ペンの作品が展示されたのは、京都市美術館別館。90年以上の歴史を持つ和風の外観はそのまま、内部を全面改修して2000年にオープン。
Who is IRVING PENN? 〜アーヴィング・ペン、 その偉大なる功績〜
(右)初のコレクションが成功を収めた1947年に、アーヴィング・ペンによって撮影されたクリスチャン・ディオール。パリのヨーロッパ美術館所蔵。(左)米国版“VOGUE”でディオールのモデルを度々務めたリサ・フォンサグリーヴス。1950年、そのディオールのジュエリー特集のための1カット。手袋をした袖口にブローチをつけるという発想もモダン。同年、彼女はペンと結婚。クリスチャン・ディオール美術館 グランヴィル所蔵。
秘められた静かな情熱まで写し出すように
スタジオポートレートの巨匠として知られるアーヴィング・ペン。1943年から“VOGUE”に携わるようになり、その後長く各国の“VOGUE”や広告を中心に活躍。多くのファッション写真家に大きな影響を与えた。メゾン ディオール初のコレクションの発表は1947年。「写真」はクリスチャン・ディオールの世界的成功にも寄与したが、メゾンの歴史と写真の黄金時代の幕開けは、まさに重なっていたのだ。
And their BEAUTY 〜そして、ディオールと共に〜
“ミス ディオール”のためにバカラが手がけた、クリスタルのアンフォラ。「真のラグジュアリーとは、本物の素材、本物の職人技を要するもの」(クリスチャン・ディオール)。右から1949年、51年、50年制作。
(上の写真右)ゴールド メタルのパウダー ケース。1958年。クリスチャン・ディオールは18世紀のスタイルや小さなアクセサリーを好み、こうしたポーチ アクセサリーを発表。(上の写真左)ドレッサー用リップスティック。1953年。コンコルド広場のオベリスクを模したフォルムに建築とパリへの愛が。(下の写真)透明ガラスのリングがついた“ミス ディオール”のアンフォラ。1947年。メゾン初の香水ボトルに選んだのは、古代貿易の象徴アンフォラ(壺)型。「ニュー ルック」を思わせる女性の曲線美を表現。
(写真右)ミス ディオール トラベル ヴァニティー セット。1955年。シックでいて実用的な旅のアクセサリーは、世界中の顧客のために。(写真中央・左)ミス ディオール 透明ガラスボトルとボックス。1960年。持ち運べるモダンなボトルは、香りのイメージや顧客のニーズに適応。
美意識と職人技がアンフォラに結実し、アートに昇華
自然光を生かしたアーヴィング・ペンの写真は、形や素材に対する抽象的な感性を反映し、それは“ミス ディオール”を収めるためアンフォラ(壺の一種)を採用したクリスチャン・ディオールの、建築とフォルムへの愛情にも通じるもの。香水は彼が求めたトータルルックの完成に不可欠であり、写真、クチュール、香水はどれも、スタイルの創造と永続性に貢献している。
撮影/浅野 豪 取材・文/巽 香 構成/吉田百合(MAQUIA)
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