最近漫画やドラマで話題を集めている「セックスレス」。これまでタブー視されていたパートナー間の問題について、マキアオンラインでアンケートを募ったところ、およそ7割もの人たちが悩んだことがあると回答。その中でも特に多かったお悩みについて、臨床心理士/公認心理師のみたらし加奈さんにアドバイスを頂きました。
悩んでいるのはあなただけじゃない。マキア読者の約7割がセックスレスの経験ありと回答
オンラインで実施したアンケートで、「したいけどしてもらえない」「誘われても断ってしまう」「夫をそういう目で見れなくなった」など、実にさまざまなお悩みが寄せられました。状況はさまざまだけど、共通していたのは「解消したいけどどうしたらいいのかわからない」という思い。そのモヤモヤを晴らすべく、セックスレスの原因や男女間の温度差などについて、みたらし加奈さんに伺いました。
- 中には離婚して楽になれたという人も。経験者はセックスレスをどう乗り切った?
- セックスがしたいのにしてくれない…。パートナーに愛されているのか不安でいっぱい
- パートナーのことは大好き。だけど、セックスって絶対にしなきゃダメなの?
- パートナーとタイミングが合わない。自分だけが抱え込んでしまっていてつらい…
- 圧倒的なコミュニケーション不足はレスの原因の一つ。カウンセリングも活用を
中には離婚して楽になれたという人も。経験者はセックスレスをどう乗り切った?
アンケートでは様々な悩みが寄せられ、「感情を全てぶつけ合い、大泣きしながら話し合った」「自分が割り切ることで楽になり、セックスを求めなくなった」「いくら掛け合っても会話すらできず、離婚することに」など、問題との向き合い方はさまざま。しかし一番多かったのは「どうしていいのかわからない」と一人で悩んでいるケース。
「セックスレスと一言で言っても、カップルによってその問題の重さはそれぞれ。どうしてもセックスをしないということにフォーカスしがちですが、まずはお互いの関係性の上でセックスがどれだけのウェイトを占めているのかを理解し合うことが大切だと思います。『アセクシュアル』という性欲を抱かないセクシュアリティも認知されはじめているように、パートナーシップにおいてセックスが絶対というわけではないというケースも増えています。ただもちろん離婚の事由にもなることなので、まずはお互いが『セックスレス』に対してどう考えているか、話し合うことから始めてみましょう」(みたらしさん)
セックスがしたいのにしてくれない…。パートナーに愛されているのか不安でいっぱい
お悩み1:なかなか誘ってくれない夫をその気にさせる方法は?
「結婚して3年目。セックスも最後にしたのは半年ほど前…。私はセックスしたいのですが、断られるのが怖くて自分から誘えません。さりげなく夫をその気にさせる方法はないでしょうか?」(30歳・OL)
セックスについて気軽に話せる関係性を築いて
「自分から『したい』と伝えられないということですが、もしかしたらセックスに関して話すことに恥ずかしさや気まずさを抱えているのかも。セックスを重たいテーマだと感じているとなかなか口に出すのが難しいと思うのですが、性欲は食欲と睡眠欲に次ぐ人間の欲求。『今日ご飯食べる?』と同じくらいのテンションで『今日しない?』と言えるのが理想的ですよね。パートナーに気持ちを伝えるのが難しいのであれば、お互いの性欲の差がふたりにとってどれだけストレスになるのか、一度振り返ってみた上で話し合うことが大切かも。その上で『したい』気持ちを伝えれば、突破口が見つかるのでは。セクシーな下着やロマンティックな映画より、あなたの素直な言葉こそがパートナーを動かすかもしれません」(みたらしさん)
お悩み2:パートナーにとってもはや空気? まだまだ女として見てほしいのに…
「勇気を振り絞ってパートナーを誘っても断られるばかり。もう女として見てもらえないのかと思うとつらくて仕方ありません。諦めて気持ちを切り替えるしかないのでしょうか?」(30代・OL)
つらい感情をまずは受け入れて、大切に向き合って
「セックスの誘いを断られると、自分自身を拒否されたような気持ちになってつらいですよね。そう感じるのは当たり前のことなので、まずはその気持ちを大切にしてあげてください。その上で、なぜパートナーがしたくないのか聞いてみてもいいと思うんです。その場合、『どうしてできないの!?』と感情的に責めるのではなく、『セックスできないのは寂しいけど、あなたの気持ちを尊重したい。もしよければ、どうしてしたくないのか教えてほしい』と歩み寄るのがポイントです。セックスをしなくても愛情がなくなったと決まったわけではありません。たまたまその日は疲れていてしたくなかったのかもしれないし、年齢と共に性欲が低下してきている可能性もあります。恋人や夫婦間のパートナーシップは年齢や一緒にいる年月と共に変わっていくのが自然。お互いの価値観と向き合いながら、その時々で心地いい距離感を見つけられるといいですね」(みたらしさん)
お悩み3:妊活したいのにセックスレス。周囲の妊娠報告に落ち込みます
「お互いに子供が欲しいと話しているのに、夫は『いつか、そのうち』私は『今すぐ妊活!』と温度差があり、排卵日を伝えてもセックスは数ヶ月に1回。毎月生理がくるたびに落ち込むし孤独な気分に。年齢的にもとても焦ってしまい、子供と幸せそうに笑う家族を見るたびに悲しくなります」(36歳・会社員)
開いた温度差をどこまで縮められるか、一度相談を
「実は温度差を埋める話し合いは、本来とても難しいんです。例えば空調の温度でも、18℃がちょうどいいという相手と24℃がちょうどいい自分、リビングを何度に設定するのかを決めるには、まずお互いの体のバロメーターの話も含めて納得できる折衷案を導き出さなくてはいけません。ここでスムーズに『じゃあ21℃にしてみよう』となればいいけど、人によっては『どうしても24℃じゃなきゃダメなの!』という人もいるでしょう。その場合、パートナーがそれに合わせてくれないのであれば、24℃を心地いいと思う別の人を探すのも一つの方法ではあると思います。妊活に関しても、一方が『子供がいる家庭は幸せ』と思っていても、もう一方は子供のいる未来に異なる価値観を持っている可能性があります。育った家庭環境などが影響することもあるので、ギャップが生まれてくるのは仕方のないこと。出産・育児の希望は相手に押し付けられるものではないですし、一過性の問題ではないので、自分たちで結論を出すのが難しければカップルカウンセリングなどを受けるのもおすすめです」(みたらしさん)
お悩み4:一度断ったことがきっかけで…
「疲れていたため一度セックスを断ったら、それ以降誘ってもらえなくなってしまいました。私から誘っても全く応じてくれず、『お前が悪い』とまで言われる始末。どうすればよいのでしょうか?」(32歳・販売員)
「NO」を責めるのはお門違い。あなたは悪くありません
「セックスの誘いを断るのは悪いことではないですし、愛情表現はセックスだけにあらず。そもそも『したくない』という気持ちは誰からも責められるべきものではないですし、そんな日があるのは当たり前です。『嫌だと思ったら、同じことをやり返す』というのはヘルシーなコミュニケーションではありません。ただもしこれからもそのパートナーと一緒にいたいと思っているのなら、『傷ついたことは、できるだけ言葉で伝えてほしい』と話してみるのも一つの方法。それでも難しそうなら最終手段。『あなたがそういう態度なら、私ももう話さないからね』と伝えたら、その理不尽さに気づくかもしれません。また、パートナーが意地になっている場合、あなたに余裕があれば後ろからぎゅっとハグしてみるのもおすすめ。相手は折れるタイミングを逃してしまっただけの可能性大なので、話せるきっかけをお互いに作ってみて」(みたらしさん)
お悩み5:セックスはできないのにマスターベーションはできるの!?
「私とのセックスは断るのに、マスターベーションはしている様子。性欲があっても私とはできないの?なんで?とイライラします。この怒りはどう処理するべきですか?」(40歳・インストラクター)
怒りは「二次感情」。一時感情を見極めて対処を
「『他の対象に興奮した』と思うと、浮気のように感じてつらいですよね。イライラするのもわかります。怒りとは、嫉妬や悲しみなど、きっかけとなる感情から生まれる二次的な感情。しかし、一次感情を認識する前に怒りが爆発してしまうことがほとんどなので、多くの人は怒りだけを相手にぶつけがちに。これはセックスレス以外の問題にも言えることですが、怒りを感じたらまず一次感情を掘り下げてみましょう。なぜこんなにイライラするのか、それはパートナーが別の人間に性欲を抱いたのが悲しかったから?セックスに応じてくれなくてつらかったから?その気持ちを整理して、怒りに発展した過程を伝えることが大切です。性的欲求には、必ずしも恋愛的感情が伴うものではありません。ただセックスではなくマスターベーションがしたかったというだけだったという可能性も」(みたらしさん)
パートナーのことは大好き。だけど、セックスって絶対にしなきゃダメなの?
お悩み6:子供がいる今、セックスの必要性がわからない…
「もともとセックスが苦手だったこともあり、結婚して子供も授かった今、できるだけセックスをしたくありません。相手を傷つけずにうまく伝える方法はありますか?」(29歳・会社員)
セックスが苦手な原因を専門家と探ってみては?
「セックスが苦手という相談、意外と多いんです。単にスキンシップや人との接触が苦手という理由のほか、セックスや身体接触に対するネガティブな経験の積み重ねから苦手意識を持つ人が多く見られます。相手の指を不快に感じたり、痛いことを伝えられなかったり、心地よくないセックス経験ですね。その場合、体と心の変化がトリガーとなり、セックスを拒むようになる人も。自分の気持ちを正直に伝えることが重要ですが、デリケートな問題だけに、相手に意図していない解釈をされてしまう可能性も大いにあります。誤解なく正しく伝えるためにも、専門のカウンセラーに相談し、自分の気持ちをしっかり整理するものいいかもしれません。お互いが問題を感じているのであれば、カップルカウンセリングも有効ですよ」(みたらしさん)
お悩み7:生活環境の変化でお互いの性欲が減退…?
「パートナーのことは変わらず愛しているのに、なぜか性欲を感じなくなってしまいました。お互い仕事が忙しかったり子供が小さかったり、生活環境の変化などが関係しているのでしょうか?」(37歳・会社員)
求めるコミュニケーションの形が変わってきているのかも
「ホルモンバランスの変化などもそうですが、年齢やコンディションと共に性欲にも変化があって当然ですし、精神的に張り詰めていたり、ストレスを感じることで性欲が低下する人もいます。そういった変化に伴って、パートナー間の愛情表現も変化して行くのが理想ですよね。付き合っていたころはお互いに“エロスを楽しむセックス”を求めていたかもしれませんが、出産や子育て、転職など、いろいろな経験を共有しながら“コミュニケーション重視のセックス”を求めるようになっているのかも。身体接触でのコミュニケーション方法はカップルによって異なるので、マッサージやハグだけで満足できる場合もあると思います。その変化を受け入れつつ、お互いを癒すようなスキンシップが取れたら素敵ですよね」(みたらしさん)
お悩み8:仲はいい。でもセックスはしない。
「毎日キスやハグはするし、周りからも『仲よしだね』と言われますが、セックスは数年間していません。お互いそれで満足しているのですが、おかしいことなのでしょうか?」(42歳・パート)
まったくおかしくありません。当人同士が幸せなら問題なし!
「夫婦間の問題はどうしても閉鎖的になりやすいので、なかなか他人の夫婦関係の実態はわからないもの。それだけに、広告やテレビに影響されたステレオタイプな夫婦像と比較しがちですが、それはあくまでひとつのあり方。人それぞれ思い描く理想の夫婦像は異なるので、互いに心地よくいられるパートナーシップが築けていれば問題なし。むしろ素晴らしいことだと思います」(みたらしさん)
パートナーとタイミングが合わない。自分だけが抱え込んでしまっていてつらい…
お悩み9:レスになったのは私のせい?
「仕事が忙しく、数年間夫の誘いを断り続けていました。仕事がやっと落ち着き、性欲も戻ってきたところで夫の浮気が発覚。原因は私が相手をしなかったから?と自己嫌悪に陥っています。一度離れた体と心はもう修復できないのでしょうか?」(45歳・主婦)
この先一緒にいたいかどうかをじっくり考えてみて
「浮気という問題がパートナーシップにどう影響するかは、人によって捉え方が大きく異なると思います。ただ、セックスを断った=浮気をしていいという問題ではないと思うので、過去のご自身を責めることだけはしないでください。むしろ嫌なことを嫌と言えていたあなたはヘルシーです。ただ、あなたが嫌だと思っていた理由について、少しだけ掘り下げる必要がありそうです。仕事の忙しさはきっかけに過ぎず、パートナーに対しての不満もあったのかもしれません。ふたりの心と体が本当に離れてしまっているのか、今後の関係修復を望むのか否か、まずは傷ついている自分を癒してあげた上で、どうしていきたいかを考えてみてください」(みたらしさん)
お悩み10:「抱きたくない」と言われたことがショックで…
「体型が変わったせいで、夫から『抱きたくない』と言われてしまいました。でも子供を産んでから痩せにくくなり、毎日忙しくダイエットをする強い意志も保てません。最近は女性向け風俗というのを知り、調べてしまったり。女性でここまでするのは異常でしょうか?」(35歳・フリーランス)
自分の性欲に対してアクションを起こすのは自然なこと
「体型の変化を理由に断られるのはとても傷つきますよね。言う側は軽い気持ちで言っているのかもしれませんが、その言葉が呪いのように植え込まれ、ずっと傷つき続けるトリガーになることもあります。あなた自身だけはなく家族にとっての安全な場所を揺るがす恐れもあるので、言葉の持つ力についてお互いに話し合う必要はあるかもしれません。女性向け風俗については人それぞれ考えがあると思いますが、自分の性欲のために何かアクションを取るのは当たり前のこと。セルフプレジャーを取り入れて性欲を満たす方法もありますよ」(みたらしさん)
圧倒的なコミュニケーション不足はレスの原因の一つ。カウンセリングも活用を
「セックスレスに悩んでいるときは、どうしてもセックスの有無ばかりに注目しがちですが、その根本にあるのはパートナーシップのあり方。セックスについて堂々と話すことはいまだにタブー視される風潮も残っているけれど、パートナーシップの中でもっとオープンに話し合う必要があると思います。マッサージなら『ここは痛い』『もっと優しくして』と言えるのに、セックスになると途端に言えなくなる。その積み重ねでお互いのセックスの価値観に差が生まれ、だんだんとコミュニケーション不足になるのだと思います。まずはお互いが求めるセックス、さらには関係性をしっかりと話し合い、互いに理解し合うことが大切だと思います。もし当人同士での話し合いが難しいなら、あまり思い詰めずに心理カウンセリングを活用して。カウンセラーに話すうちにアウトプットの練習ができるので、相手にも気持ちをうまく伝えられるようになることもあるかもしれません」(みたらしさん)
イラスト/nao 取材・文/野崎千衣子 構成/佐藤 陽(MAQUIA ONLINE)
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