画一的な外見の価値観に縛られなくたっていい。私がキレイかどうかは、私が決める。「MAQUIA」5月号から、そんな心のあり方、ボディポジティブについて紹介します。
自分のカラダを優しい目で見つめてみる。
ボディポジティブな生き方、してみない?
ボディポジティブって一体何?
ボディポジティブとは、社会に浸透している画一的な美の基準から脱却し、容姿の多様性を受け入れようという考え方のこと。臨床心理士のみたらし加奈さんによると、定義は曖昧で起源も定かでないが、10年ほど前から世界に広まってきたという。「世に氾濫するメディアには、背が高くてスリムな“美人”がたくさん。そんな情報に晒され続けると、いつしか美のステレオタイプが脳に刷り込まれます。そしてそこから逸脱した自分を好きになれず自信をなくしたり、無理な減量で体を壊す人もいる。そんな現状に違和感を抱いた人々が、太くてもいい、背が低くても素敵、世の中にはいろんな美があるんだと声を上げ始めたのが最初だと認識しています。そこからボディポジティブという言葉が生まれ、一般に広まり始めたのでしょう」
ぽっちゃりだったり背が高かったり。いわゆる美人ではないけれど明るく前向きな女性が活躍する映画が、ここ数年続々登場。
A 『アイ・フィール・プリティ! 人生最高のハプニング』
Blu-ray&DVD発売中 発売元:バップ
ⓒ2018 TBV PRODUCTIONS,
LLC.ALL RIGHTS RESERVED.
B 『ロマンティックじゃない?』
Netflix映画『ロマンティックじゃない?』独占配信中。
C 『トールガール』
Netflix映画『トールガール』独占配信中。
海外ではボディポジティブを宣言するセレブがたくさん
欧米では、ボディポジティブムーブメントを多くのセレブが牽引。たとえば歌姫リアーナは、自身の手がけていたファッションブランド「FENTY」のポップアップストアで太めボディのマネキンを採用。同じくシンガーソングライターのビリー・アイリッシュも、ルーズな服を一枚ずつ脱いでいくショートフィルムをTikTokにアップし、サイズを基準に人の価値を決めることの愚かさを訴えている。ほかにも多くの女優やモデルが、SNS上にボディポジティブな意見を投稿。体型にコンプレックスを抱えた女性が悩みを克服し、幸せをつかむ内容の映画がヒットしたりしている。こうしたムーブメントは、ありのままの自分を愛したいと願う人々にとって大きな心の支えになっているはず。
バービーも、ボディポジティブに。2016年から様々な体型やスキントーンのドールを発売し、人気を集めている。バービーファッショニスタ A イエロー&ブラックチェック、B ラブ ワンピース(ともに日本未発売)、C アニマルドレス、D イエロードレス 各¥1650/マテル・インターナショナル
日本ではどんな動きがある?
海の向こうではだいぶ一般的になったボディポジティブだけど、日本での動きはどんなものか。みたらしさんに聞いてみた。「2019年にランジェリーブランドのピーチ・ジョンが、“リアルサイズモデル”と題していろんな体型の女性をモデルに起用したことが話題になりました。あの試みは、日本における大きな動きだと思います。でも欧米に比べると、ボディポジティブを知っている人そのものが少数派。これからに期待したいですね」。お笑い芸人の渡辺直美さんやゆりやんレトリィバァさんにバービーさんなど、自分の体型をポジティブに語る芸能人が注目を集めているのもよい兆し。ボディポジティブについて積極的に語る有名人が出てくれば、関心を持つ人が増えるはず。
A ピーチ・ジョンのリアルサイズモデル。SNSで一般女性を募集した。B “ムダ毛”を処理するかしないかは自分で決める。剃毛、脱毛の自由選択を訴えるべく昨年発表された、貝印の企業広告。
リアルサイズモデル北原弥佳さんに聞きたい!
どうしたらポジティブになれる?
体型が人と違うからって
幸せになれないのはおかしい
Mika Kitahara
モデル。身長175cm体重80kg。ピーチ・ジョンのリアルサイズモデルの選考に合格し、モデルとしてデビュー。Instagramなどを通じてありのままの自分を受け入れることの大切さを訴え、容姿について悩みを抱えるたくさんの人から共感を得ている。
ボディポジティブを知って目が覚めた!
「私がボディポジティブを知ったのは、数年前にプラスサイズモデルをしている女性のSNSを見かけたことがきっかけでした。ちょうど自分の中で、“太っているのってそんなに悪いこと?”という疑問が湧いてきたのと同じ時期。“どんな体も美しい”という考え方は、まさにその答えだったんです。それからボディポジティブについて調べたら、肉づきがよくても輝いている人がたくさんいてびっくり。憎んでいた自分の体を少しずつ好きになれるようになって、ピーチ・ジョンのリアルサイズモデル募集に応募したり。人生が、180°変わる目覚めだったと思います」
自分の存在自体がコンプレックスでした
「生まれつき体が大きくて、中学一年生で体重80kg。指先までパンパンな姿を、いろんな人にけなされてきました。自分でも、普通の服を着られない、ダイエットが長続きしない自分が大嫌い。モデルになってからは、この体を受け入れる人もたくさんいることを知り、やっと個性だと思えるようになりました。“これが私”って水着の写真をSNSにアップするなんて、昔の自分なら考えられない。もちろん中には“デブのクセに”ってレスする人もいます。でも私は私のプニッとしたお腹が大好き。人と違うのは悪いことじゃないのよ!と思っています(笑)」
自分で自分を褒めてください
「自分の体を好きになれない人は、無理矢理ポジティブになる必要はないと思います。まずは自分を客観視することから始めてみて。落ち込むことがあったら、“自分は今ネガティブになっているな”って分析するだけで楽になります。あとは、どこか自分の好きなところを探す。お腹とか脚とか、コンプレックスがあるとそこだけに目が行きがちだけど、誰にでも素敵なところはきっとあるはず。見つからなければ人に聞くのもおすすめです。毎日その部分を褒めるようにすると、少しずつ自分を好きになっていけると思います」
MAQUIA 5月号
撮影/ISAC〈SIGNO〉(モデル) 岩城裕哉(物) ヘア&メイク/北原 果〈KiKi inc.〉 スタイリスト/黒崎 彩〈Linx〉 モデル/北原弥佳 取材·文/風間裕美子 構成/横山由佳(MAQUIA)
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