美容は義務? 単なる日課? いいえ、美容とは自分自身が主役を演じる立派なエンターテイメント!「MAQUIA」1月号から、美容を心から楽しめる人ほどきれいになれる理由を、4組の専門家が証言します。
美容を心から楽しめる人ほどきれいになれる
美容を楽しめる人は、きれいを超えて、免疫力や健康、輝く人生まで手に入れることができる。4組の専門家が証言する、「やっぱり美容は、楽しんだもの勝ち」!
予防医学研究者
石川善樹さん
「人がより良く生きるとは何か」、ウェルビーイングをテーマに研究。著書に『疲れない脳をつくる生活習慣』(プレジデント社)。
思い込み力
思い込みは、最高の美容液!信じた人からきれいになれる
100人のおじいさんとおばあさんを集めて、そのうち50人には若い頃を思い浮かべてもらったところ、もう半分に比べて見た目が若返ったという実験があるんです。脳内でただ思い浮かべるだけ。人の見た目って、それぐらい簡単に変わっちゃうものなんですよ。
これは有名な話ですが、高級コーヒーチェーンのコーヒーと大手ファストフードのコーヒーは、ブランドを隠してブラインドテストすると後者が勝つんです。でも、ロゴを見せると、高級店の方が「美味しい!」と認められる。多くの人は、ブランドが入った瞬間に美味しく感じちゃうんです。同じ容器同じ中身でも、“これはいいものだ”と信じて使うと、結果も変わります。思い込みやプラセボって、軽く見られがちだけど、僕はもっと利用したらいいんじゃないかと思います。思い込みの力は強い。信じたもん勝ち、楽しんだもん勝ちです。
ちなみに、ポーラの研究によると、ぷるぷるしたものを触ると、脳内で好奇心と感性の爆発が起きるということがわかっています。日本人と西洋人とでは、好奇心の対象に文化差があって、視覚優位の西洋人に比べて日本人は五感……つまり、手触りや匂いに対する感覚が強いんですね。見て、触れて、嗅いで、五感を最大限に生かして、好奇心と感性を覚醒させることで、さらに肌がぷるぷるになるという美のスパイラルが生まれます。理想の自分を思い浮かべ、必ずきれいになると思い込んで、さらに五感を総動員して美容を楽しんでみてください。そうすれば、見た目なんて簡単に変わる。僕は暗示にかかりにくいタイプなので、思い込み力がある人が羨ましいですね。
皮膚科医
慶田朋子先生
銀座ケイスキンクリニック院長。美術と医療を融合した技で人気。著書に『女医が教える、やってはいけない美容法33』(小学館)。
美のQOLを上げる
見た目を整えることは人生や暮らしの質を高める
医局時代に、抗がん剤の副作用で毛が抜けたり肌が荒れたりした患者さんが、お洒落なウィッグを身につけたりメイクすることで治療へのモチベーションが上がった例を見てきました。特に女性の場合は、病気を治療するだけではなく、美容的なサポートでQOL(クオリティオブライフ:人生の満足度や暮らしの質)が上がるんですね。他にも、アトピー性皮膚炎やニキビに悩む人を対象としたアンケート調査で、「ニキビできた、死にたい」というような、思った以上に深刻な悩みにも触れて。命に関わる病気でなくても、皮膚の状態が悪いと、自己評価や社会的積極性が低下してしまうことを実感しました。私自身、10代の頃にアトピーの湿疹がひどくて顔を上げて歩けないような内向きな日々を経験しているので、とても他人事とは思えません。自分に自信がないときほど、些細なことで落ちてしまいますからね。
自分をケアして見た目を整えることは、社会的活動の意欲や幸福感、社交性を高めます。ニコニコしている時間が増えたり、仕事や友人関係・恋愛・家庭などの人間関係が好転することもある。そんな場面に立ち会ううちに、「美容は自己評価を高め社会的な暮らしの質をあげるもの」と確信しました。 10年前から、「美のQOL」を提唱しています。患者さんと接していて感じるのは、良くなったことをひとつひとつ喜んで、過程も含めて楽しめる人はきれいになるのが早いということ。たくさんの女性に、毎日の美容を楽しんで「美のQOL」を上げてほしいですね。
資生堂 アドバンストリサーチ センター
心理行動研究 グループ マネージャー
平尾直靖さん
心理学と脳科学の専門家。心地よいと感じられる基礎化粧品作りをサポートする。
資生堂 化粧品情報開発センター
プレステージブランド 情報開発グループ
米澤徹朗さん
商品の情報を、いかにユーザーにとってわかりやすく伝えるかについて日々研究。
資生堂 化粧品情報開発センター
商品解析グループ
根岸茜子さん
エステティシャンとしての知識と経験を生かし、実技と理論のすり合わせを担当。
癒しと励まし
化粧品に対する脳活動は、恋愛に似ている
心理学の研究では、スキンケアは癒やし、メイクは励ましを与えることが解明されています。また、使い始めたばかりの化粧品に対する脳活動は恋愛初期のドキドキやときめき、また、何度もリピート購入している化粧品に対する脳活動は、長年連れ添ったパートナーに感じる安心感や癒やしに通じることもわかっています」と語るのは、心理学や脳科学の専門家である平尾さん。エステティシャンとして、より実践的なアドバイスを担当する根岸さんによれば、「同じお手入れでも、焦って急ぐのと、穏やかな気持ちでやるのとでは、スキンケアの効果はもちろん、重ねるメイクのノリやもちまで違ってきます。それに、チャチャッとやっているつもりの時の方が、効率が悪くて意外に時間がかかりがち。美容に関しては、急がば回れと言えます」。それを裏付けるように、「ストレスを感じていると、皮膚に通う血液の量が低下。不安を感じるとすぐに逃げ出せるように、筋肉や心臓に血液が行ってしまうんですね。また、ホルモンの影響で皮脂の分泌量が増えたり、免疫の活動にも影響が生じます。リラックスしている時間が長い方が、肌状態は良くなるんです」(平尾さん)。
緊張がほぐれて気持ちが落ち着くと、肌の血行が良くなる。写真はエステティシャンが右腕だけにマッサージを施した実験。右腕だけでなく、手を触れていない左腕までも、血行が良くなり、皮膚温が高まる様子が観察された。 資料提供/資生堂
資生堂では、リラックスした状態でスキンケアできる製品の開発にも余念がない。「ユーザーの感性に訴えかけ、触ることでリラックスできる容器や、癒やしを誘うテクスチャーや香りなどを研究しています。鎌倉時代に珍重された楽茶碗にインスピレーションを得て、手に取った時に心地よい64通りの容器を用意したエッセンシャルイネルジャは、そんな研究の粋を集めた製品です」(米澤さん)。
五感に訴えかける感性コスメ
手に取った時に心地よい64通りの容器を考案。エッセンシャルイネルジャ モイスチャライジング クリーム 50g ¥6500/SHISEIDO
美容家
神崎 恵さん
「美容を楽しんでいる」プロの代表格。つやめくセンシュアルな肌と、みずみずしい感性に溢れた言葉で憧れを集める。
ときめき力
人生の主役は自分。美容はときめきを高める脇役
「美容家やってます」というと、ご飯を食べるより何より、美容に重きを置いていると思われがち。でも、私にとって美容は、4の次、5の次、6の次なときもある。美容がファーストじゃない美容家なんです。人生の主役は、美容じゃなくて自分。忙しい毎日の中でどれだけラクをして、余裕を作るかを大切にしているから、大変な時にイライラしちゃうくらいなら美容もスキンケアも後回しでよし!としています。
私にとって美容は、暮らしを楽しみ、幸せになる力をエイ!と持ち上げるためのものなんです。みんなが憧れるような人だって、蓋を開ければ結局一緒。いちばんのちがいは、「どうやって自分を人生の主役だと思えるか」だと思うんです。Tシャツにデニムの時も、「味気ない服着ちゃった」とへこむのか、頭の中でジェーン・バーキンを思い浮かべながらお気に入りのリップを塗るのかとではまったくちがいますよね。誰しも生きていれば、嫌なことのない日なんてないし、私だってそう。でも、心から気持ちいい!と感じられるもので周りを固め、美容という大きな力を味方につければ、頭や心の中がむくんでいるような嫌な感じは流せる。美容が与えてくれる些細な思い込みや楽しみで、いかにときめけるかが大切なのではと思います。
MAQUIA1月号
撮影/中村和孝〈まきうらオフィス〉 ヘア/hanjee〈SIGNO〉 メイク/岡野瑞恵〈storm〉 スタイリスト/佐々木敬子〈AGENCE HIRATA〉 モデル/小嶋陽菜(マキアモデル) 取材・文/長田杏奈 企画/火箱奈央(MAQUIA) 撮影協力/バックグラウンズ ファクトリー
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