映画『TANG タング』で主演を務める二宮和也さんにインタビュー。撮影現場でのエピソードや作品に対する思いを、役者として、ひとりの人間としてありのままに語ります。
愛情深く、飄々と流されず自分の場所に立ち続ける人
二宮和也の自分らしさ
カメラの前に立つなり「あれ、お久しぶりです。何年ぶりかな」とカメラマンと談笑。それと同じテンションで「はい、なんでも聞いてください」とインタビューが始まる。相手が誰でも、いつでもどこでも、隠さず作らず偽らず“二宮和也”として存在する人。役者として、ひとりの人間として、彼が語る“自分らしさ”とは?
役者 二宮和也
Q
二宮さんの主演最新作の映画『TANG タング』は、人生の迷子になったダメ男“春日井健”と記憶を失った迷子のロボット“タング”、ポンコツコンビの大冒険を描いた物語。撮影現場ではのちにCGとして加わるタングを相手に二宮さんが一人でお芝居する場面も。大変だったことを教えてください。
「例えば、タングの手だけの実物パーツがあるんですけど。その手を持って走れば、のちにCGで引っ張られるタングが追加され、ブーンと投げてしまえば、タングはCGで飛んでいく。そういうことも可能な環境だったので、僕自身は、変なハナシ、なんの制限もなかったかな。なんの不自由もなく演じることができたっていうのが正直な感想ですね。今作では、もちろん生身の役者さん達とも共演。どっちがやりやすかったかと聞かれたら……。やりやすさでいうと、多分、タングとのシーンのほうがやりやすいはずです。自分のタイミングで、自分の間で、芝居をつめていけるので。でも、その“やりづらさ”が僕は好きなんですよね。なんだろう、“やりやすい”ってどこか簡単で寂しいっていうか……。あれですよ、リモートワークの最中、久々に会社に出勤したみたいな感覚ですよ。「これでいいじゃん。もうずっとリモートでいいよ」と思っていたんだけどそれが続くと「一回、会社行っとくか」「皆にも会っておくか」って気持ちに。会ったら、会ったで悩むこともあったりするんだけど、そのストレスも実は生きるのに重要だったっていうか。そういうものを感じさせてもらいました(笑)。」
Q
無職で家に引きこもりゲーム三昧。過去のある出来事に囚われたまま前に進めないダメ男・春日井健は二宮さんの目にどう映りましたか?
「うーん、僕はあまり彼のことをダメダメだとは思っていなくて。あのラインがダメだったら、結構世の中にはダメなやついっぱいいるぞって(笑)。僕が健と同じように過去のある出来事に囚われてしまったらどうするか?どうなんですかね、基本的に僕、自分のことに興味がないので。過去に失敗していようと成功していようと、あまり気にかけていないというか。まあ、ひとつ気にかけていることがあるとしたらそれは「迷惑をかけたか、かけなかったか」。極力、迷惑をかけたくないと思って生きているので。これやっちゃうと周りに迷惑かけるんじゃないか。これやったら皆がしんどくなるんじゃないか。そういうことは極力言わないようにしていたり。それでも、迷惑をかけてしまったときはどうするか? 素直に謝ります。そして、いつか何かのカタチで返したいと考える。例えば、迷惑をかけてしまった監督からのオファーにはどんなに忙しくても応える、とかね。自分の失敗や成功より、そういうことのほうが僕にとっては大事。」
二宮和也
1983年6月17日生まれ、東京都出身。1999年、嵐のメンバーとしてデビュー。その後ドラマ、映画、バラエティなど活躍の場は多岐にわたる。俳優業では『母と暮せば』で日本アカデミー賞最優秀主演男優賞を受賞。映画『ラーゲリより愛を込めて』が今冬公開予定。MCを務める『ニノさん』(日本テレビ系)は毎週日曜10時25分~放映。
『TANG タング』
ゲーム三昧で、妻に家を追い出された主人公・健(二宮和也)と、記憶をなくした迷子のロボット・タング。2人は失ったタングの記憶を取り戻すため、世界を巡る冒険に出かけることに! その先で見つけた〈人生の宝物〉とは―? 2022年8月11日(木・祝)公開。配給:ワーナー・ブラザース映画
MAQUIA 9月号
撮影/荒木勇人 ヘア&メイク/竹内美徳 スタイリスト/櫻井賢之〈casico〉 取材・文/石井美輪 構成/萩原有紀(MAQUIA)