「MAQUIA」5月号では、容姿の多様性を受け入れようという考え方、“ボディポジティブ”について考察。Q&Aを通じて、ありのままの自分を受け入れる基礎知識を身につけて。
自分のカラダを優しい目で見つめてみる。
ボディポジティブな生き方、してみない?
こんなときどうしたらいい?
ボディポジティブな考え方にまつわるQ&A
臨床心理士
みたらし加奈さん
SNSを通じてメンタルヘルスやLGBTQの知識を広めたり、性被害についての“必要な正しい情報”を発信する「mimosas(ミモザ)」を立ち上げるなどして活動中。著書『マインドトーク』(ハガツサ ブックス)が話題に。
Q ボディポジティブは言い訳に過ぎないと否定されたら?
A なぜその人が言い訳だと思うのか考えてみて
言い訳だと言われたら、なぜそう思うのか聞き返してみるのもひとつの方法。「他者に対するアウトプットの中には、実は自分のコンプレックスが隠れていることがあります。もしかすると指摘してきた人自身、他人に容姿を批判されて傷ついた経験があるのかもしれません。あるいは、その人自身が言い訳をしなければいけない状況にあるのかも。相手の背景を少し想像してみることで、新しい対話が生まれることもあります」
Q「太ったね」とか「背が低いよね」とかイヤなことを言われたら、どう対処すればいい?
A 「あなたにとってはね」とつぶやくことでスルーして
他人から心ない言葉をかけられて傷ついたとしても、面と向かって怒りをぶつけるのは難しいもの。そんなときは心の中にいるもうひとりの自分と対話することで、モヤモヤを消化しよう。「傷ついている自分とは別に、“他人の意見は関係ない。太っているとか背が低いとか、それはあの人の価値観で測っているだけ”と冷静に考えられる自分がいると、心の健康を保つのに役立ちます。それでもイラッとしてしまうなら、リアルな友達に愚痴を言ったり、カウンセリングを受けるのもひとつの手段」とみたらしさん。「私の場合、他人は私の人生に責任を持てない、と考えています。たとえば大事なパートナーから“あなたに長生きしてもらいたいから不健康に太っているのは困る”と言われたなら真剣に受け止めますが、そうでなければ太ろうが痩せようが私の自由。私の体は私のもの。赤の他人にジャッジする権利はないし、何を言われても気にする必要はないのです」
Q ボディポジティブになるために自分でできることってある?
A なぜ自分のことをキライになったのか分析することから始めよう
自分の容姿にキライな部分があるなら、なぜキライになったのか原因を書き出す。「親に言われ続けたとか小学生の頃嫌がらせを受けたとか、他人が原因で自分をキライになっている部分があるのかも。もしそうなら“それはその人の基準であって、私がそこに押し込まれる必要はない”と頭の中でつぶやき、容姿の判断基準を自分の手に取り戻します」。次は、自分の体を知るメソッドへ。「明るい部屋で全裸になり、鏡の前で観察し、全身に触れてみましょう。次に部屋を暗くし、同じように全身を触ります。明るいと見た目が気になりますが、暗い状態で触れると“柔らかくて可愛い”“頑丈で頼もしい”など感想が変わることも。その変化を見逃さないで。あとは静かなところで目を閉じ、体に意識を向けるのもおすすめ。呼吸や鼓動を感じるうち、愛おしさが湧くと思います」
Q 他人の容姿を気にする自分がイヤ。どうすれば変えられる?
A 相手を自分に置き換えて考えてみれば解決するかも
他人の容姿で気になる部位は、自分のコンプレックスを投影している可能性があるかも、とみたらしさん。「無意識に自分の見た目が気になっているから、他の人はどうなんだろうと気になって、そこに目が行ってしまうのかもしれません。コンプレックスの裏返しだと気がついたなら、あとは心を癒やすだけ。先に回答した“ボディポジティブになるためにできること”の答えを参考に、コンプレックスの原因を探ることから始めてみて」
Q ボディポジティブって素敵だけどやっぱり私は美ボディになりたい!
A 他者評価が基準でなければキレイになるのはよいこと
キレイになりたいと願うことは、反ボディポジティブではない。「ボディポジティブ=何がなんでも自分の体を好きになることだと誤解する人がいますが、そうではありません。外見に囚われすぎてしまうことはメンタルヘルスによくない影響を及ぼしますが、自分だけの“好きな自分”を追い求めるのは悪いことではありません。気に入らない部分があったってかまわないんです。大切なのは、誰かの基準に縛られないこと。自分基準でボディメイクすることは、反ボディポジティブではありません。“私の体は私のもの。他人にジャッジされるものではない”という考え方が重要です」
Q たとえ褒め言葉であっても容姿について話すのは避けるべき?
A 人を素直に褒めるのはよいことだけど褒め方に工夫を
みたらしさんによると、人の容姿を褒めるときは、伝え方に注意しないと逆効果になることがあるという。「例えば私の場合、以前ハワイに住んでいたとき“頭が小さいね”“鼻が高いね”と褒めたつもりが、それぞれ“頭が悪いね”“鼻が大きいね”とまったく逆の意味に受け取られてしまって驚いたことがあります。国や文化によって、価値観が違うんですよね。なので、世間一般の美の基準に当てはめて人を褒めるのは避けた方が無難。大きい小さいとか比較するような言い方ではなく“個人的にアナタのココが好き”というように、その人が持っている唯一無二の姿が好きだ、という伝え方をすれば、よいコミュニケーションになるかもしれません」
Q ボディポジティブを極めすぎて不健康にならないか心配です
A 体の声に耳を傾けてSOSが出たらすぐケアを
どんなに痩せた自分が好きでも太った自分を可愛いと思っていても、病気になったらそれどころではなくなってしまう。「痩せすぎて月経が止まったとか太りすぎてヒザが痛くなったとか、具合が悪くなってしまったら、そもそもポジティブでいられませんよね。体調が悪くなったらすぐ医師に相談して、アドバイスに従いましょう。ボディポジティブでありたいと思う人もそうでない人も、自分の体と向き合うのは大切なこと。日々体の変化を確かめながら生活していると、どんな見た目であろうと愛着が湧いてくる、体調の変化に気づきやすくなる、というメリットが生まれます」
MAQUIA 5月号
イラスト/オカダミカ 取材·文/風間裕美子 構成/横山由佳(MAQUIA)