創刊20周年を記念したスペシャル連載の第5回ゲストは、俳優の吉永小百合さん。デビューから65年の今も第一線で活躍し、変わらぬ美しさを保ち続けている秘訣とは。知られざる心の内と、飾らないチャーミングな素顔に迫ります。

吉永小百合さん インタビュー マキア創刊20周年

MAQUIA20周年記念連載
「明日の私をMAKEしよう」#5

吉永小百合
自分に正直に生きるということ

お話をうかがったのは

俳優

吉永小百合

よしなが さゆり●東京都出身。1959年『朝を呼ぶ口笛』で映画初出演し、主な作品に、『キューポラのある街』『愛と死をみつめて』『動乱』『細雪』『北の零年』『母べえ』など。最新作『こんにちは、母さん』は123本目の映画になる。'86年より原爆詩の朗読を始める。東日本大震災後は被災地の子供たちの詩をCD化し読み続けている。TBSラジオ『今晩は 吉永小百合です』(毎週日曜日 22時30分〜)放送中。

これが映画なんだ!
運命の作品との出合い

これまで出演した映画はなんと123本。65年もの間、日本映画界の第一線で活躍し、多くのファンの期待を背負い続けてきたプレッシャーとは一体どれほどのものだったのか。大スター・吉永小百合の人生に想いを馳せると、「そんな大それたものじゃないですよ」とおかしそうに笑った。そして現在まで長く精力的に仕事を続けるきっかけとなった、ある決断について教えてくれた。


「小さい頃から親に連れられて映画を観に行くことがとても好きだったんです。たまたま俳優が自分の職業になってからは、『不思議な世界だな』と思いながらも、割と人から言われるままに仕事をしてきたんですね。でも『動乱』という映画に出た35歳の時に、演じることの本当のおもしろさを発見しました。1年かけて春夏秋冬を切り取る撮影の贅沢さと、主演の高倉健さんや監督のストイックな姿勢を目の当たりにして『これが映画なんだ!』と知ったんです。そして、私も作品に丁寧に取り組んでみたい、自分の気持ちに正直に、自分の意思で作品選びをしたいと思い、そこから徐々にペースを落として1〜2年に1本、出演するようになったんです。仕事への取り組み方も生き方も変わったと思います」


映画デビューは14歳。瞬く間に人気を博すと、多い年で16本の映画に出演したことも。学校になかなか通えないハードスケジュールの中、撮影現場が青春だったと振り返る。


「学園ものが多かったので、同級生役の子たちとロケ先の旅館で騒いで枕投げをしたり(笑)。夜はそういう悪さをしていたから、朝はなかなか起きられなくて。ロケバスでパパッとメーキャップをしていたら、先輩俳優さんに『ちゃんとお化粧して』と叱られたこともありました(笑)」

20代後半で肉体的にも
精神的にも限界に

「キャピキャピと勢いで乗り越えられた」10代とは違い、20代後半になると過労とストレスで声が出なくなるハプニングに襲われたことも。


「当時はテレビドラマのレギュラーを2本持っていたので、京都と東京を往復しながら半年間撮影を続けていたら体調を崩してしまって。大人の演技が求められる作品に挑戦しようとしても、表現力が追いつかないこともありました。声が出なくなっただけでなく、精神的にもいい状態ではなくなってしまったんです」


その時、吉永さんを救ったのは?


「やっぱり、結婚ですね。『自分ができることをすればいいんだよ』という人に巡り会えて、28歳で結婚後は約1年、仕事を休みました。料理は目玉焼きくらいしか作れなかったので、料理学校の先生をしている親戚から出汁の取り方や魚の三枚おろしを習ったり、魚河岸に買い物に行ったり。普通に生活をする時間を持てたことで、精神的にも肉体的にも徐々に元気になれたんです」

自分の選択なら
失敗しても前を向ける

他人軸ではなく、自分軸。30代で人生のハンドルを自ら握り始めた吉永さんのキャリアを振り返ると、決して順風満帆だったわけではないことがわかる。それでも歩みを止めなかったのは、「映画が好き」という熱い想いを持ち続けていたから。


「役のことが好きになれないと演じられないし、1年くらい準備期間を設けて少しずつ気持ちを燃焼させていかないと撮影に向かえません。まったく器用ではないんです。それでもうまくいかなくて、撮影後に『もっと勉強が必要だった』と思うこともあります。でも、自分がした選択なら他の人のせいにはできないし、失敗を受け入れて『よし、次に生かそう』と前を向くことができる。35歳の時にすべての責任を取ろうと決めてからは、贅沢に仕事をさせていただいています。そうして仕事が続けられたことは本当に幸運でした」

“35歳の時の決断で仕事への向き合い方も、生き方も変わりました”

“35歳の時の決断で仕事への向き合い方も、生き方も変わりました”

吉永小百合
美のヒストリー

1 映画が好き。その想いが一番の原動力
現在は124本目となる新作の準備を進めている最中。「体力やセリフ覚えとの兼ね合いもありますが、できる範囲で少しずつ、大好きな映画の世界で歩いていけたらと思っています」

吉永小百合さん インタビュー マキア創刊20周年 美のヒストリー

(写真上)『青春のお通り』(1965年)。(写真右下)『花ひらく娘たち』(1969年)俳優和泉雅子さんと。(写真左下)『戦争と人間 完結篇』(1973年)。
写真提供/日活

2 青春が詰まった日活時代
1960年〜1976年の日活在籍時は79本の映画に出演。『吉永小百合 映画女優デビュー65周年記念企画』として写真集や名作のブルーレイが今年6月に発売された。

吉永小百合さん インタビュー マキア創刊20周年 日活時代

“純愛コンビ”として日本中から愛された浜田光夫さんとの共演作5作を収録。『吉永小百合&浜田光夫『純愛ブルーレイボックス』』¥28600(【発売元】日活【販売元】ハピネット・メディアマーケティング)

吉永小百合さん インタビュー マキア創刊20周年 日活時代

日活映画時代の豊富なアーカイブから、吉永さん自ら監修した写真集。日活出身俳優たちとの貴重な座談会も。『吉永小百合青春時代写真集』¥3520(文藝春秋刊 編=日活)

3 36年ぶりに化粧品のCMに出演
2011年に初めて五島列島を訪れ「地元の人たちが思いをつなげてきた歴史の深さと自然の美しさに感動した」という吉永さんがサポーターを務める、スキンケアブランド『五島の椿』。

吉永小百合さん インタビュー マキア創刊20周年 五島の椿

葉、花、種、果皮、酵母、実にいたるまで五島の椿から抽出した自然由来成分を100%活用。(右から)椿酵母せっけん 60g ¥1800、椿の葉 保湿水 150ml ¥3800、椿酵母オイル(フェイス) 30ml¥4950/五島の椿

MAQUIA 9月号
撮影/蓮井幹生(人物) 細谷悠美(物) ヘア&メイク/森下千帆 スタイリスト/宮本茉莉 取材・文/松山 梢 構成/山下弓子(MAQUIA)
イヤリング、ネックレス(価格未定)/KASHIKEY BROWN DIAMOND その他/本人私物
※本記事掲載商品の価格は、税込み価格で表示しております。

最終更新日:

MAQUIA書影

MAQUIA2024年11月21日発売号

集英社の美容雑誌「MAQUIA(マキア)」を無料で試し読みできます。マキア1月号の大特集は「絶対、失敗しない!ベストコスメ2024下半期」。通常版の表紙は有村架純さんです。

ネット書店での購入

share