「この数年は怒涛の日々でした」と、戸田恵梨香さん。時代的にも個人としても大きな変化を経験する中、自らの迷いや弱さを真摯に見つめて辿り着いた人生に対する想いとは?
葛藤を超えた先で見つけたもの
戸田恵梨香が想う未来と現在地。
1988年8月17日生まれ、兵庫県出身。作品に奥行きを与えるたしかな演技力で、主演映画『母性』をはじめ数々の話題作に出演。自らの心情を飾らずに語るストレートな発信も支持されており、昨年出版された初のトークエッセイ集『彼女』(ワニブックス刊)では、これまで演じてきた役柄に込めた想いや、自身が悩みもがきながら辿り着いた生き方に対する信念を包み隠すことなく語っている。
心が躍る時間こそが人生の豊かさに繋がると思う
「私が仕事を始めたのは10代の頃。そこからガムシャラに働き続ける中、いつしか自分のことが疎かになって、働く意味や人生の目的さえも見失っていたことにふと気づいたんです。その時に思ったのが、自分の心をカラカラにしてただ頑張るのではなく、心が躍るものに目を向ける時間も人生には必要なんじゃないかなということ。そうやって自分を大切にすることで、人にも優しくなれる気がして。昨年出版したトークエッセイ集でもその想いをお伝えしていますが、私自身もここ2〜3年ほどで少しずつ心に余裕ができてきた実感が。今は他愛もない日常の時間が本当に楽しいですし、ただ散歩をするだけでこんなにも愛おしい時間があるのだと改めて感じています。」
他愛もない日常のひとときに
幸せや愛おしさを感じています
大切な何かを失ったとしても得られるものはきっとある
「本に取り掛かる前後で、父と愛犬との別れを経験したんです。ふたつの命を失ったことで限りある時間の尊さを感じましたし、いてくれたことのありがたさや愛おしさ、そして無事に歳を重ねることがいかに奇跡的であるのかを教えてもらった気がします。そう考えると、全てを失うことってないんですよね。失ったものは大きいけれど、受け止め方次第ではとても大きなものを与えてもらえる。人生ってこうやってできているんだなと実感しました。」
MAQUIA 6月号
撮影/伊藤彰紀〈aosora〉 ヘア/KENICHI〈SENSE OF HUMOUR〉 メイク/Haruka Tazaki スタイリスト/影山蓉子〈eight peace〉 取材・文/真島絵麻里 企画・構成/木下理恵(MAQUIA)