女性の場合、メンタルの不調はホルモンバランスの変動にも大きく関わっています。その仕組みを知ることで、ブルーな時期を乗り切ることも。高尾美穂先生から正しい知識を学びましょう。

心 ヒント 専門家 ホルモンバランス 高尾美穂

日々、モヤモヤはあるけれど…

心を穏やかに保つヒント100Book

[第4章]
ホルモンバランス
から心と向き合う
女性は、ホルモンバランスの変動によっても心の状態が大きく変化。不調が出やすい時期と対策を知っておき、ブルーな時期を乗り切って。

高尾美穂先生

産婦人科医

高尾美穂先生

イーク表参道副院長。わかりやすい解説で大人気。著書は『心が揺れがちな時代に「私は私」で生きるには』(日経BP)など。

33 ストレスは生理への影響大。
生理周期が乱れたり、止まってしまうことも


「女性ホルモンの分泌を司る脳の視床下部は、ストレスをキャッチする部分でもあるので、ストレスがかかると女性ホルモンの分泌が乱れやすくなります。過度なストレスがかかると生理周期が乱れたり、生理が止まったりするのはこのためです」(高尾先生・以下同)


34 メンタルが安定しやすいのは生理後、
不安定になりやすいのは生理前


「生理周期のサイクルのうち、女性ホルモンのエストロゲンの分泌が最も高まる生理後は、体やメンタルの状態が最も安定する時期。一方で、プロゲステロンの分泌が高まる生理前はメンタルが最も不安定になりやすくなります」


35 生理前のイライラや落ち込みは、
交感神経が優位になったり、
セロトニンやGABAが減ることが関係


「生理前にイライラや落ち込みなどのメンタルの不調が出やすくなるのは、生理前はプロゲステロンの分泌が高まり、それによって心身に緊張をもたらす交感神経が優位になりやすいからです。また、生理前には、精神を安定させる脳内物質のGABAや、幸せホルモンと呼ばれるセロトニンが減りやすいことも関係しているといわれています」


36 生理前の自分がコントロールできなくなるほどの
メンタルの不調は PMDD(月経前不快気分症候群)


「生理前に起きる心身の不調はPMS (月経前症候群)ですが、特にメンタルの不調が強い場合をPMDD(月経前不快症候群)といいます。生理前に理由もなく悲しくなったり、怒りっぽくなって人とのトラブルが増えたり、絶望感を感じたりと自分をコントロールできなくなるほどメンタル不調が出るならPMDDの疑いがあります」



37 生理前のメンタルの不調は
低用量ピルや漢方薬などで治療可能


「生理前のメンタルの不調は婦人科で治療できます。低用量ピルを服用すれば、排卵が起きなくなるので生理前という時期自体がなくなり、PMSやPMDDもなくなります。特に『ヤーズ』という低用量ピルはメンタル症状に効果的。また、漢方薬でも治療可能です。それとともに、自分のメンタルの不調の原因は何なのかを考えてみて、それを遠ざける工夫をすることも大切です」



38 生理中のブルーな気分は、生理後半には回復するはず。
無理せず心身を休めて


「生理中は、生理前に減ったエストロゲンの分泌量がまだ上がって来ず、抗不安作用のあるプロゲステロンも低めなので、メンタルが落ちたままになる人も。でも生理期間の後半になれば分泌量が上がってきてメンタル状態も回復していくので、すぐまた元気になれるととらえて、無理をせず心身を休めて過ごしましょう」


39 生理前に過剰に食欲が
出る人は、間食を摂って
血糖値のアップダウンを減らして


「生理前に過剰に食欲が出るのは、この時期に増えるプロゲステロンが血糖値を下げるインスリンの効きを悪くするので、結果的にインスリンが過剰に分泌され血糖値が一気に下がりやすくなるから。血糖値が急激に下がると飢餓感を感じてアドレナリンが出るのでイライラしやすいのです。ゆで卵や枝豆など糖質の少ない間食をこまめに摂って血糖値の乱高下を防いでください」


40 35歳を過ぎて感情の起伏が
激しくなった場合、プレ更年期より
まず自律神経の乱れを疑って


「35歳を過ぎて感情の起伏が激しくなった場合、“もう更年期!?”と思いがち。閉経の時期には個人差があり、閉経が早い人の場合は、35歳過ぎで更年期症状があることもあります。ただ、この年代のメンタルの不調は、自律神経の乱れが原因の場合がほとんど。特にマキア世代は、ストレスや睡眠不足によって自律神経が乱れている人が多いです」


41 生理前にメンタルが
落ちやすい人は、更年期にも
メンタル症状が出やすい傾向が


「生理前にメンタルが落ちやすい人は、更年期にもメンタルが落ちやすい傾向があります。更年期は、生理前と同じようにエストロゲンやプロゲステロンの分泌量が低下していく時期なので、同じ症状が出る可能性が高いからです。今から生活習慣を整えておき、対策をしましょう」


42 ホルモン変動からくる
メンタルの不調を減らすなら、
まずは睡眠不足やストレスの解消を


「女性ホルモンの変動からくるメンタルの不調が起きやすい人の多くは睡眠不足です。まずは睡眠時間を十分に確保しましょう。それだけでメンタルの不調が改善することは多いです。またストレスをうまく発散することも不可欠です」


43 生理にまつわるメンタルの不調を
食事で改善するなら、
血糖値の乱高下を避け、
アルコール、カフェインを控えめに


「ホルモンの変動からくるメンタルの不調を食事で改善するには、急激な血糖値の上昇を招くような精製された糖質を控えめにして、イライラの原因になる血糖値の乱高下を防ぐことです。また、カフェインを多く含むものやアルコールなど、体に刺激となるものは、PMSを悪化させることがわかっているので生理前には控えましょう」


44 女性ホルモンの影響による
メンタル不調の改善には、どんな運動でも効果的


「女性ホルモンの影響によるメンタルの不調を防ぐには、適度な運動ならどんな運動でも効果的なので習慣に。特に最適なのが自律神経を整えるヨガ。下の“コブラのポーズ”がおすすめです」

うつ伏せで脚を腰幅に開き、両肘を曲げて脇を締め、手を胸の横に置いて息を吐く。息を吸いながら上体を起こし、肘を伸ばして呼吸を繰り返して10秒キープ。1日1回でもOK。

うつ伏せで脚を腰幅に開き、両肘を曲げて脇を締め、手を胸の横に置いて息を吐く。息を吸いながら上体を起こし、肘を伸ばして呼吸を繰り返して10秒キープ。1日1回でもOK。

MAQUIA 6月号
イラスト/maegamimami 熊野友紀子 取材・文/藤井優美〈dis-moi〉 和田美穂 構成/火箱奈央(MAQUIA)

最終更新日:

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