創刊20周年を記念したスペシャル連載の第5回ゲストは、俳優の吉永小百合さん。デビューから65年の今も第一線で活躍し、変わらぬ美しさを保ち続けている秘訣とは。知られざる心の内と、飾らないチャーミングな素顔に迫ります。
MAQUIA20周年記念連載
「明日の私をMAKEしよう」#5
吉永小百合
自分に正直に生きるということ
俳優
吉永小百合
よしなが さゆり●東京都出身。1959年『朝を呼ぶ口笛』で映画初出演し、主な作品に、『キューポラのある街』『愛と死をみつめて』『動乱』『細雪』『北の零年』『母べえ』など。最新作『こんにちは、母さん』は123本目の映画になる。'86年より原爆詩の朗読を始める。東日本大震災後は被災地の子供たちの詩をCD化し読み続けている。TBSラジオ『今晩は 吉永小百合です』(毎週日曜日 22時30分〜)放送中。
メイクもスキンケアも
シンプル・イズ・ベスト
ここ数年はヘア&メイクをプロにお願いすることもあるものの、デビュー以来、ほとんどの作品でセルフメイクをしてきたというから驚き。
「昔は大体、みなさん自分でやっていらしたんです。先輩が大事にしているアメリカのファンデーションをわけていただいたりして、とてもありがたかったですね。メイクをしたままだと肌に悪いと思って、撮影のお昼休みに一度全部落としていたこともあります。後から肌をこするのはよくないと聞いてやめましたが、帰宅後はなるべく早く肌を解放させてあげたくて。メイクを落としたらホットタオルをのせて、肌をリラックスさせるようにしています」
プライベートではナチュラルメイクが基本で、「今日はマキアの撮影だから、いつもよりちょっとメイクが濃いんです」と笑う。
「デパートでサンプルをもらったり、美容院で雑誌を読んで『あ、いいな』と思う口紅の色をメモしたりしています。昔は口紅を全然つけなかったけれど、年齢とともになるべくつけるようになりました。そのほうが元気に見えますしね」
スキンケアもシンプルが信条で、サポーターを務めている『五島の椿』のアイテムを愛用中。
「せっけんで洗顔した後に、保湿水をたっぷり肌に押しつけるように使っています。オイルは手の中で温めて、ほんのちょっとだけお肌につけると調子がいいんです。年齢を重ねるとどうしてもパックをしたり、プラスのケアをしたくなりますが、皮膚科の先生から『あまりつけすぎるのもよくない』と教えていただいたんです。シンプル・イズ・ベストで、自分の中から出てくる力を“待つ”のも大事なんだなと感じました」
スクワット60回
腹筋100回がルーティン
今回の撮影で特に印象的だったのは、立ち姿の凛とした美しさ。スッと背筋が伸びた姿勢のよさは、毎日のトレーニングの賜物だそう。
「意識していないとすぐ姿勢が悪くなっちゃうから、なるべく気をつけるようにしています。立っていることはとても好きなので、撮影現場でも椅子に座らずにいることが多いんですよ。そのほうが気持ちも持続するし、自分自身も快適にいられますから。ジムは4〜5年前から週に1回通っています。大腿部を鍛えると転びにくくなると教わったので、重点的にトレーニングをしています。自宅では毎日スクワット60回、腹筋100回、ストレッチをするのが基本。一度にするのは大変なので、3回くらいにわけて。朝はだいたいぼーっとしているので、夕食前や寝る1時間前にやることが多いですね。腹筋の場合は上体を起こすだけでなく、足上げ腹筋や片方の足を上げたクランチなど、いろんな種類を試しています。その時の気分や体調に合わせて、楽しんでいます」
40代から始めた水泳も継続中。
「以前は20人ほどいるスクールに入って、年2回合宿するほど熱中していました。1年で365㎞泳いだこともあるのですが、今はひとりで、身体をストレッチするような気持ちで泳いでいます。タイムも気にせずに、1週間で1㎞くらい泳ぐのが癒やしです。いろいろなことを続けられるのは、義務だと思っていないから。『よし、今日はこれをしよう』と楽しんでいるので苦にならないんだと思います。余白のある大きいカレンダーには、その日にしたエクササイズや体重、体脂肪を書き込んでいます。そうすると体調や生活リズムがわかっておもしろいんです」
手肌が輝くように美しい
99歳の憧れの人
多くの人が憧れる“美しい人”であり続ける吉永さんは、どんな人のことを美しいと思うのだろう?
「たくさんいらっしゃいますが、志村ふくみさんという99歳の染織家の方は本当に素敵です。草木染めをされるから手肌が荒れるんじゃないかと思うのですが、その逆で輝くように美しくて。メーキャップもしていないのに本当に綺麗なんです。ひとつのことを丁寧に続けていらっしゃる方の美しさには惹かれますね」
吉永さんも同じでは? と問うと、「私はもっとがさつですから」と意外な答えが。清楚で上品でおしとやか。そんなパブリックイメージとは裏腹に、じっとしているのが苦手なタイプで、プライベートではよくウォーキングをし、電車を使って行動することも多いそう。本人の口からは「ドジ」「おてんば」などのワードが次々と飛び出す。
「私は忘れ物の女王なんです(笑)。タクシーに携帯やお財布を忘れたり、Suicaってあるでしょう? あれを駅でチャージした後に、ふっと気づいたら落としていて。急いで走って取りに行ったのに、もうなかったってこともありました。そういうドジはしょっちゅうやっていて、みんなに迷惑をかけています(笑)」
お花を部屋に飾る時間が
今の私の至福の時間
失敗談もからりと明かしてくれるチャーミングさがとても素敵。10代で演じた青春映画のヒロインだって、70代で演じた恋するおばあちゃんだって、スクリーンを通して強く印象に残るのは、吉永さんのキラキラと輝く瞳。きっとそれは、心のときめきに素直に従い、アクティブに行動してきた人が持つ生命力だ。
「好奇心を持つということは、いつもしてきたかもしれません。映画や水泳もそう。今は季節のお花を買ってきて、いろんな部屋に少しずつ生ける時間が至福の時なんです。『素敵だな』、『おもしろいな』と感じたら、とにかくやってみることが大事だと思います。今は選択肢がありすぎてセレクトするのが大変な時代だと思いますが、読者の方たちも、ご自分のやってみたいことを見つけて、ちょっとでもいいから打ち込んでみてほしい。それは別に仕事じゃなくたっていいんです。小さなことの積み重ねが、生きることに繋がっていくのではないかなと思います」
好奇心を持つこと。行動すること。
それが生きることに繋がっていく
“ひとつのことを丁寧に続けている人の美しさに惹かれます” ── Sayuri Yoshinaga
MAQUIA 9月号
撮影/蓮井幹生(人物) 細谷悠美(物) ヘア&メイク/森下千帆 スタイリスト/宮本茉莉 取材・文/松山 梢 構成/山下弓子(MAQUIA)
イヤリング、ネックレス(価格未定)/KASHIKEY BROWN DIAMOND その他/本人私物
※本記事掲載商品の価格は、税込み価格で表示しております。
最終更新日: