男性と比べ、オープンに語られることが少ない女性の性欲。実はホルモンやホルモンバランスと大きく関係していたんです。今回は、女性の体やホルモンに詳しく、多数の著書を出版されている婦人科医・松村圭子先生に教えてもらいました。
- 生理前はムラムラするって本当? 性欲が湧くメカニズムとは?
- 性欲は、男性なら10代後半〜20代が盛んと言われているけど、女性の場合は?
- 年を追うごとに「女性の男性化」「男性の女性化」が進む!?
- お互い理解されにくい! 男女の性欲の捉え方
- 賢者タイムの正体は、「縄張り意識」だった!
- 日本人は金曜日の夜にセックスするカップルが多い⁉️
- 「欲求不満」でも体には問題なし?
- 欲求不満を感じたら、セルフプレジャーという選択肢も
- セックスレスだって、お互いに不満がなければ問題なし
- 性欲が湧かないっていう場合も…
- これって都市伝説? 性欲にまつわるアレコレ
「成城松村クリニック」院長。歯に衣着せぬ語り口で、女性が抱えるモヤモヤや悩みを晴れやかに吹き飛ばす頼れるドクター。近著に『女性の悩みはFemtechで解決! オトナ女子のためのカラダの教科書』(宝島社)があり。
生理前はムラムラするって本当? 性欲が湧くメカニズムとは?
「女性ホルモンと呼ばれるエストロゲンは、妊娠に向けて卵胞の成熟を促すホルモンです。このエストロゲンが増えると、種の保存の本能が働き、性欲が高まるんです」と語る松村先生。
「エストロゲンの分泌が高まるのは妊娠に最も適している排卵期です。排卵期の終わり頃から、女性の体は受精の有無に関わらず妊娠の準備を始め、エストロゲンと反比例するように黄体ホルモン・プロゲステロンの分泌が高まります。プロゲステロンはPMSの引き金にもなるホルモンですから、それにより体がだるくなり、性欲どころではなくなる。ということもあります」(松村先生・以下同)。
性欲は、男性なら10代後半〜20代が盛んと言われているけど、女性の場合は?
「エストロゲンの他にもうひとつ、性欲を高めるホルモンがあります。それが男性ホルモン。男性は25歳前後で男性ホルモン分泌のピークを迎えるため、性欲のピークも同じくその頃だと言われています。しかし、女性の男性ホルモン分泌は、少ないながら生涯を通じてあまりアップダウンがありません。そのため、月経があるうちはエストロゲンとプロゲステロンの波にかき消されがちなのですが、閉経の10年前、つまり40歳前後くらいから、少しずつ男性ホルモンによる性欲が頭角を現してくるんです」。
女性の場合は、40歳頃が性欲がピークになると言われる。
「閉経というと50歳以降の話だと思われがちですが、実は閉経の10年ほど前から女性ホルモンは徐々に減り、閉経に向けての準備が始まっています。40代から女性の性欲が高まると言われるのには、男性ホルモンのカラクリが働いているんです」。
年を追うごとに「女性の男性化」「男性の女性化」が進む!?
「男性にも同様のことが言えるんですよ。あまり知られていませんが、男性にも女性の半分量程度の女性ホルモンが分泌され、どの年齢でも比較的安定して分泌されています。男性ホルモンは社会性ホルモンとも呼ばれていますので、ホルモン量の男女逆転により、50代以降の男女の立ち位置が逆転してしまう、という話もよく聞きますよね」。
お互い理解されにくい! 男女の性欲の捉え方
セックスにおいて、男性が求めるのは「射精」。一方、女性は精神的なつながりを重視する傾向に。
「カップルでの性生活において、よく問題視されるのがセックスの捉え方。とにかく射精をしたい!という男性に対し、女性は愛情の確認を目的にしているため、どうしてもギャップが生まれてしまいます。それが原因でケンカになってしまうという話もよく聞きますが、そもそも男性と女性は全く別の生き物。ホルモンがそうさせている、と思ってある程度諦めることも必要です」。
賢者タイムの正体は、「縄張り意識」だった!
「セックスの後、男性がやけに冷たい、背中を向けて眠ってしまう……。そんな経験がある人も多いと思います。もちろん度を超えていたらその関係性を見直すべきですが、これは男性に備わった防衛本能なんです。
射精を終えると一気に男性ホルモンが低下して虚無感に襲われるのですが、男性の中に持ち合わせている縄張り意識だけが強く残り、誰もテリトリーに入れたくなくなってしまうんです。これは本能なので、ある程度は理解してあげることが必要かも。
もし今のセックスに満足できていないなら、パートナーとお互いの望むセックスについて話し合い、歩み寄ることが大切だと思います」。
日本人は金曜日の夜にセックスするカップルが多い⁉️
「世界各国と比較しても日本人のセックス回数はかなりの下層位ということは皆さんご存知だと思うのですが、日本人がセックスするのは、週の中で金曜の夜がずば抜けて多いというデータがあるんです。真面目ですよね(笑)。日本人はよく働くことでも有名で、とにかく平日のストレスが多い。だから、体も心も仕事から解放される休日前の夜こそがベストタイミングなんです」。
日本人の性欲が湧くのは、仕事から解放された週末や休日前夜が多いそう。
「欲求不満」でも体には問題なし?
「欲求不満というと性的に満たされていないと解釈されることが多いのですが、人間の持つあらゆる欲求に適用される言葉です。ただ、食欲や睡眠欲などと違い、性欲は満たされなくても体の健康には影響ありません。でも、お腹が空いたり睡眠不足だったりするとイライラするのと同じように、精神衛生上はあまり良い状態とは言えませんよね。なので、スポーツで体を動かしたり、何か趣味に打ち込んでみたりと、何か気を紛らわせる手段を持っておくと良いですね」。
性欲の発散方法はセックスだけじゃない。スポーツや趣味に夢中になることで、気がつけばスッキリ!
欲求不満を感じたら、セルフプレジャーという選択肢も
「セックスとは生殖のための行為であるとともに、オーガズムを感じることで最高のリラクゼーションを得ることができます。なので、パートナーがいない人や、なかなか相手に満たされないという人は、セルフプレジャーを取り入れてみるのも良いと思いますよ。気持ちが満たされるだけでなく、血行が良くなって肌ツヤも変わりますよ」。
セックスレスだって、お互いに不満がなければ問題なし
「最近ではセックスレスのカップルも増えていますが、それはお互いがセックスに積極的じゃなかったり、同意の上でセックスをしなかったりするなら問題はありません。ただ、どちらか一方が性欲が強かったり、不満を抱えて悩んでしまうのは問題です。お互いの価値観の擦り合わせをすることが、カップルが円満であり続けるための秘訣かもしれません」。
セックスレスでもお互いの価値観が同じであれば、良い関係性に。
性欲が湧かないっていう場合も…
「今の若い世代の中には、セックスを面倒だと思う人も多いようです。また、マキア世代だと子育てや仕事に忙しく、そちらに手一杯で性的欲求にまでエネルギーを割けないという人も多いと思います。性欲は個人差が非常に大きいので、その大小はあまり気にしなくても大丈夫です。ひとつ知っておくと良いのが、ピルの選び方。ピルには男性ホルモンの活性を高めるもの、抑えるものがあり、それにより性欲をはじめ、体と心に出る影響にはかなりの個人差があります。性欲に限らず、ホルモンの作用によってニキビが増えたり、気分の落ち込みなどに影響することもあるので、気になる場合はホルモン療法に力を入れているクリニックに相談してみてください」。
これって都市伝説? 性欲にまつわるアレコレ
誰もが一度は聞いたことがある性欲にまつわるアレコレに、ドクターが真面目に回答! 都市伝説の真偽やいかに!?
●きれいな女性は性欲が高い
△ キャリアウーマンタイプは多いかも?
「きれいかどうかはわからないけど、男性ホルモン活性が強くリーダーシップを取れるキャリアウーマンタイプが多い傾向が」。
●唇の厚い女性は性欲が強い
× まったく根拠なし。だけど、男性ホルモンの活性力は指を見てみて!
「唇に関しては人相学の域なのでわかりませんが(笑)、胎児期に母体の中で男性ホルモンのシャワーを多く浴びていると、手の薬指が人差し指よりも長くなるというデータが出ています。なので、ひとつの目安として指の長さをチェックするのはあり」。
左:人差し指が薬指より長い(または、あまり長さの差がない)=男性ホルモン活性が低かった 右:薬指が人差し指より長い=男性ホルモン活性が高かった
●セックスは朝に行うと健康的
△ 満たされた気持ちで1日スタートできるという点では健康的かも。
「医学的なエビデンスはありませんが、満たされたセックスを朝にすることで、その日1日、やる気がみなぎるということはあるかもしれません。また、男性の男性ホルモン分泌は朝が一番多いので、人によっては朝したくなるというケースも」。
●オナニーやセックスをしすぎると脳がダメージを受ける
× ありえません(笑)。
「大昔、セックスしすぎるとバカになるという説がありましたが、全く根拠のないデタラメです。むしろリラクゼーションを得られるので、好きなだけして問題なし!」
●出産からしばらくは女性はセックスを受け付けなくなる
○ ホルモンの影響で、授乳中はそういう気分になりにくいと言えます。
「授乳中はプロラクチンというホルモンが出て、エストロゲンの分泌を抑制するため、性欲も自然と抑えられます」。
●性欲を高める食べ物がある
○ 亜鉛は精力アップ、アスパラギン酸は生殖器周りの血行アップに。
「男性ホルモンを高めたいなら亜鉛、血行を促進して妊娠力を高めたいならアスパラギン酸を摂取するのがおすすめ。牡蠣には両方が含まれているので、積極的に摂ってみて」。
取材・文/野崎千衣子 イラスト/カツヤマケイコ 構成/佐藤 陽(MAQUIA ONLINE)
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