努力家でブレない芯を持つ、田中みな実さんのインタビューをお届け。俳優業にも挑戦し、活動の幅を広げる彼女の仕事観を聞きました。
生き方をデザインし続ける。
田中みな実35歳
私の道の歩き方
とことん突き詰めたい。
お仕事のこと
いつだって
客観性は絶やさず持ち続けたい
仕事をしていると次第に環境にも慣れ、働きやすくなってくる。すると途端に「ここに留まっていていいのかな」、「このままの私で成長はある?」と不安に駆られるんです。常にがんばることを強いられる環境に身を置くほうが、どこか落ち着く性質みたいです。自ら行動を起こして新しい道を選択したこともあれば、流れに身を任せたケースも。どんなときも大切にしてきたのは客観性で“見え方”や“魅せ方”は人一倍意識をしてきました。3姉弟の真ん中で、幼少期から周りをよくみながら自身の長所や強みを生かす方法を編み出していたような気がします。やるからにはとことんで、負けず嫌いなのもこの頃から。アナウンサー時代は全員が良きライバルだと思って仕事をしていましたし(笑)。番組を多く受け持つ先輩の受け答えや振る舞いを研究して、何度も何度も繰り返し放送を観て、落ち込んではまた奮起して。今でもバラエティ番組をつけると、色んなことを考え始めてしまうので進んで観なくなりました。振り返れば、これまで大切な選択を誰かに委ねたことは一度もありません。感覚とか直感みたいなものを信じて生きている気がします。俳優業に関しては流されるままに飛び込んだ世界だけど、うっすらと根拠のない自信のようなものがあったから始められたのかなと。走り出したばかりで芝居をしているときは余裕がなく、「何がわからないのか」がわからないような状態。たとえるなら、深い沼に体ごと浸かって指輪を探しているような、そんな感覚です。けど、「悔しい」とか「もっとこうなりたい」と毎度思えるからやめられません。第一、今やめたら中途半端でカッコ悪いもんね。
決断したことは
自分が責任をもって肯定する
俳優業を始めなければこんなに苦しい思いをしなくて済んだのかと思うと、この決断は正しかったのか?と立ち止まりたくもなります。手放したものの大きさに落胆して涙することもしょっちゅうです。局アナ時代から続けてきたバラエティ番組をスケジュールの都合で辞めざるを得なかったときは、どうしても納得ができなくて子供みたいに散々泣きました。でも、泣いても喚いても一度手放したものは戻ってこない。今はじわじわ俳優業への覚悟が固まってきたものの、胸を張ってそう名乗れるようになるのはもっとずっと先のこと。現状がどうであれ、自身が下した決断は自身が100%肯定してあげないとみっともない。だから、俳優になってよかったかと問われれば、迷いなく「はい」と答えることにしています。個人的にはビューティ誌の撮影も、バラエティ番組の収録も、優劣なく取り組んでいきたいんですけどね。決して簡単なことではないと分かっていても。「PEACH JOHN」のミューズをやらせていただいた昨年、既にその両立に苦しみました。ドラマや映画の現場は朝4時に起きて、26時に就寝なんてざらで。ジムなどのセルフメンテナンスもままならず、寝る時間すら確保できない。広告ビジュアルの撮影に向け、体の調整が間に合わないかもしれない焦りからバランスを崩しかけたこともありました。もう少し若ければ食事である程度管理できていたのかもしれないけど、今それをしたらゲッソリする懸念があって。ランジェリーが似合う、みずみずしく女性らしい丸みを帯びた幸福感のある身体で撮影に臨みたかったんです。タイトなスケジュールの中、どうにか納得のいく状態へ持っていこうとする姿を「外見ばっかり」と誤解されたかもしれません。でも、私にとってはどちらも大切な仕事。プロ意識と自信を持って現場に立てるかどうかが、全てなんです。誰にどうみられたっていい。仕事を続ける限り“当たり前”の照準は高く掲げていたい。
田中みな実
たなか みなみ●1986年11月23日生まれ。埼玉県出身。元TBSアナウンサー。現在はフリーのアナウンサーとしてテレビやラジオで活動するほか、俳優やモデルとしても活躍の幅を広げている。
MAQUIA 5月号
撮影/吉田 崇 ヘア&メイク/AYA〈LA DONNA〉 スタイリスト/西野メンコ モデル/田中みな実 取材・文/松山 梢 企画・構成/吉田百合(MAQUIA)