「MAQUIA」9月号から、神崎 恵さんのスペシャルエッセイをご紹介。肌も心も環境も、自身を取り巻く状況が目紛しく移り行く中で必要となるのは“変化を受け入れる”しなやかな生き方。自分らしさを決して見失うことなく人生の機微を楽しむヒントを、そして変化する勇気の大切さを、松下洸平さん主演でお届けします。
MAQUIA Special Collaboration
神崎 恵スペシャルエッセイ
あの日、変わることを
怖がらなかった私へ。
主演:松下洸平
1987年3月6日生まれ。東京都出身。2008年にシンガーソングライターとしてデビュー。俳優としても活躍し、NHK連続テレビ小説『スカーレット』ではたしかな演技力と存在感が話題に。今後も出演作が多数控えている。
綺麗に痩せた友だちの姿をみて、
なんだか心がザワッとした。
潔く髪を切った友だちが
ものすごくキラキラして見えた。
難しそうな流行りのリップをつけた顔、
新しいスクール通い、転職、結婚。
同じ歩幅で歩いていると思っていた
ひとたちの変化を目にするたびに、
うっすら気持ちが曇りだす。
例えばマラソン大会で、「一緒に走ろう」の
約束を破られたときのような。
試験中の「全然勉強してないよ」の
一言を信じてしまったときのような。
懐かしいあの苦さ。
「変わらない約束」なんかしてないのに、
裏切られたような、置いていかれたような
気がして不安になった。
変わるって勇気がいる。
何十年もかけて
やっとかたまってきた自分なのに。
それを変えるなんて、ちょっと怖い。
だからこそ
生き慣れた自分のあれこれを、
削いだり、変えたり。
だれかの目じゃなく、自分の目で生きている強さが羨ましくてしかたない。
こうありたい。こうなりたい。
本当はある自分の生き方。
難しくて、面倒で、見ないふり
している自分の本音。
あの日くれた一言が、
変わる楽しさを教えてくれた。
自分の中での自分が窮屈だと感じた日。
手に取ったキャメル色のリップ。
見慣れたピンクベージュの自分から
とびだしたくて思い切って掴んだ色。
「かっこいいじゃん」
大袈裟じゃなく世界が変わった。
綺麗に見せたいとかかわいいと思われたいとか、そんなことはどうでもいい。
新しい空気が吸いたくて選んだ色。
自分のためにだけにしたメイク。
新しい自分の顔。
その一言。わたしを。
わたしの生き方を。
「いいじゃん」。と言ってくれた気がしたから。
MAQUIA 9月号
撮影/柴田フミコ(モデル) ヘア&メイク/KUBOKI〈Three PEACE〉 スタイリスト/後藤仁子 モデル/松下洸平 文/神崎 恵 取材/真島絵麻里 構成/火箱奈央(MAQUIA)
最終更新日: