毎日飲酒が欠かせなかった40代酒豪エディターSが、禁酒に成功!
元の記事はこちら→【40代酒豪エディターの禁酒】効果は?メリットは?心身の変化を詳細ルポ!
その結果、体も心も軽くなり、なんだか毎日がポジティブになったのですが、そもそも、お酒がもたらす影響とはどんなものがあるのでしょう? 肝臓を専門に研究する医師・浅部伸一先生に、正しい飲酒についてお伺いしました。


医学博士、肝臓専門医、消化器病専門医
浅部伸一先生
1990年、東京大学医学部卒業後、東京大学医学部附属病院、虎の門病院消化器科などに勤務。ウイルス学・免疫学の研究に従事し、肝炎免疫研究のためアメリカに留学。帰国後、自治医科大学附属さいたま医療センター消化器内科に勤務。現在、製薬会社で新薬開発のための臨床試験のマネジメントを行う。肝臓やお酒に関する記事・書籍等の監修・著作など、健康情報の発信を行っている。最新著書『健康長寿の人が毎日やっている肝臓にいいこと』(自由国民社)が発売中。
お酒は毎日飲んでもいい? 適量はある?
エディターS:毎日大量にお酒を飲むのが習慣になっていたのですが、ダイエットをきっかけにやめてみたら、思ったよりも体にいい影響が出ているのを感じます。身体面では胃腸のだるさや倦怠感がなくなり、日々のパフォーマンスがあがりました。
そもそも、お酒を飲むことで、体や心にはどんな影響があるのでしょうか?
浅部先生:適量であれば、脳内麻薬のドーパミン、幸せホルモンのセロトニンが分泌されていることがわかっていて、リラックス効果や、ストレス発散には効果があるといえます。その反面、飲みすぎは依存のリスクもあります。
体への影響では、飲みすぎることで肥満や脂肪肝につながりますし、がんの発症リスクが少しだけ高まるということもわかってきています。世界的にはそういった健康的な問題から「お酒は飲まないほうがいい」という考えのほうが広まりつつありますね。
お酒のもう1つの問題は、膵臓を傷めること。個人差はありますが、たくさん飲む人は慢性膵炎になっている場合も。今は、肝臓は検査が進んでわかっていることが増えていますが、膵臓はまだまだ検査が難しい臓器。炎症が進むと背中に痛みが出ることが多いのですが、そのときにはかなり悪化している場合がありますし、膵がんのリスクも高まる、と言われています
エディターS: 飲みすぎはよくないですが、だいたいどのくらいならOKというラインはあるのでしょうか? 特にこれからの年末年始は飲む機会が多くなりますね。
浅部先生:お酒を飲める量は、体質によるので一概にはいえませんが、気にかけてほしいのは飲む量ではなく純アルコール、つまりエタノールの総摂取量。厚生労働省が勧めているガイドラインがあり、「生活習慣病のリスクを高める飲酒量」として女性は純アルコール20g以上としています。
これは、ビールなら500mlのロング缶1本分ですね。ワインや日本酒を同じ量飲めば純アルコールの摂取量はビールの倍以上になるということです。
純アルコール20g相当の酒量
・ビール 500ml(ALC.5%)
・日本酒 180ml(ALC.15%)
・焼酎 110ml(ALC.25%)
・ワイン 約180ml(ALC.14%)

エディターS:んっ⁉︎ ロング缶1本⁉︎ それはあまりにも酒飲みには酷ですね。350ml缶なら2、3本くらい、みんなサラッと飲んでしまいそうですが。
浅部先生:酒飲みにはキツイですよね(苦笑)。これはあくまで、“これ以上飲んだら健康を害するリスクがある”という目安が20gなんです。
エディターS:私、飲んでいたころは毎晩5缶は飲んでいました。ということは純アルコール70g…。ひぇ〜。
お酒は内臓にも脳にもダメージ
「酔い」を目的にした飲酒はNG!
浅部先生:そもそも、日本人はアルコールにはあまり強くないといわれています。エタノールは代謝されて、肝臓でアセトアルデヒドという毒性が強い物質に変わるんですが、それを速やかに分解するための酵素が遺伝的に多いか少ないかで、お酒に強い・弱いが決まります。
アセトアルデヒドが血中に増えてしまうと、顔が赤くなる、頭痛がする、気持ち悪くなるなどの症状が出てきますね。症状が強く出る人ほどお酒に弱いタイプです。
日本人は約5割が強いタイプ、1割がまったく飲めないタイプ、4割がその中間といわれています。欧米人はほとんどの人が強いタイプなんです。
エディターS:自分の中で、どんな種類のお酒をどのくらい飲めるのか、把握しておくことが大事なんですね。酒好きの中にはアルコール度が高いスト缶(ストロング缶)を好む人も多いですが、アルコール9%のスト缶500mlなら純アルコール量36g! かなり高めですね…!
浅部先生:スト缶は甘くてスイスイ飲めてしまうので、医師からすると、否定的です。世間的にも依存症のリスクを高めるという意見も多いので、飲料メーカーでは減少傾向にあります。
そこで、増えてきたのが3%程度の「低アルコール」やアルコール度0.6%〜0.7%など1%未満の「微アル」。お酒の量を減らしたいけどビールが飲みたい。お茶やノンアルでは物足りないという人におすすめですね。
エディターS:今は低アルコールのさらにその下が出ているんですね! ほんのり酔いたいって人にもよさそう。
浅部先生:うーん…「酔い」を目的に日常的に酒を飲むのは体に悪影響しかありません。あくまでお酒は、食事、会話、雰囲気などを楽しむために飲んでほしいですね。
お酒って麻酔作用があって、脳に利いてくるんです。それが、お酒が楽しいことの一つの理由でもありますが。エタノールって血液にも脳にも届く特殊な物質で、口から入ったらパッと吸収されて、血液に入り、脳の細胞にスイスイ入って働きを変えてしまうんです。
たくさん飲めば脳の働きを鈍らせてしまうんですが、少量のうちは少し興奮させる程度なんです。なので、お酒って飲み始めや酔いが軽いうちは、幸福を感じたり、元気になったりと、いわゆる“ハイ”な状態になるんです。
それが進んでしまうと、抑制が効かなくなり、理性が外れやすくなってしまいます。理性を司る脳の部分がいちばんアルコールの影響を受けやすいんですよ。
エディターS:だから、酔うと怒りっぽくなったり、泣き出したりする人がいるんですね⁉︎
浅部先生:そうですね、ハッピーになるタイプと、鬱になったり悲しくなったりする人がいて。酔い方が激しい人や、お酒を飲まないと寝れないという人は、心の問題があるかもしれませんね。
たまには「酔って忘れたい!」となる日があるかもしれませんが、毎回はいけません。先にストレスの元を解決しなければ、お酒は楽しく飲めないですから。
エディターS:私はお酒を飲むなら思いっきり酔いたい!ってタイプだったので、飲み会の翌朝「あれ?どうやって帰ってきた?」と思い出せなかったり、後輩に説教くさくなっていたり、周りに迷惑をかけた恥ずかしい思い出が多々あります…。
今考えると、脳が恐ろしいことになっていたんですね…。
浅部先生:本当に怖いですよ。脳の中でアルコールの影響を受けやすいのが「海馬」という部分なんですが、ここは短期間の記憶をする場所なんですね。だから、家に帰る道は忘れないけど、数時間前の会話の内容は思い出せないんです。
そして、多量の飲酒が習慣になると、毎日、脳にダメージを与え続けてしまうので、海馬が小さくなり記憶力が落ちるという論文も出ています。
二日酔いになった朝の対策はある?
とにかく水分を摂取すること
エディターS:二日酔い防止とか、二日酔いになったとしても、これをしたら即治る!ということってありますか?
浅部先生:決定的な方法はないです(笑)。肝臓はタンパク質の塊なので、分解のダメージを補うためにチーズや豆類など、タンパク質豊富なおつまみを食べながら飲むのがいいですね。

浅部先生:そして飲んだあとは、脱水の回復を。アルコールには利尿作用があって、飲んで寝て起きたときには体の水分がカラカラになっているんです。それは当然、体調が悪いはずなので、まずは水分をしっかり摂ってください。
さらに、肝臓ではアルコールの分解を優先してビタミンB群とアミノ酸を消耗している状態。食欲があれば、よく二日酔いにいいといわれている“しじみ汁”など、アミノ酸が豊富なものを飲むのは理にかなっていますね。
多少の糖分を摂るのもいいと思います。糖分は肝臓で作られているのですが、アルコールの分解を優先しているので、血糖値が下がっているんです。
エディターS:私は、お酒をやめたことで肌の赤みがなくなったり、乾燥がなくなった気がするのですが、外見的にもお酒の影響って出てきますか?
浅部先生:パサつきや乾燥は、分解で消耗されるアミノ酸、ビタミンB群やタンパク質の不足など栄養の偏りが原因かもしれませんね。実際に肝硬変の人は、血管が拡大されて肌に赤みが出るので。
後悔したくない! 飲みすぎないコツは?
1杯めをゆっくり飲む or ノンアルビールを
エディターS: 次の日、後悔をしないために、飲みすぎないためのコツがあれば知りたいです!
浅部先生:1杯空くと、口寂しくなってもう1杯、もう1杯…となってしまいますよね。でも、楽しい気分でいられるのは酔いが浅いうちだけ。惰性でたくさん飲んで酔っ払っても、体と脳にメリットは何もないです。
飲酒の総量を減らすには、最初の1杯めを30分ほどかけてゆっくり飲むのがいいといわれているのですが、酒飲みはそうはいかないので、ノンアルビールで乾杯するのがおすすめです。

浅部先生:実は日本のビールって、味より喉越しを楽しむ傾向が強いので、キンキンに冷えていればノンアルでも意外とわからないらしいです。
それで、2杯めはリアルビール、3杯めはまたノンアルやお茶を飲むとか。交互にアルコールを飲むことで、アルコールの総量も抑えられますし、酔い始めのハッピーな気分が続くと思います。
エディターS:ほろ酔い気分で楽しく食事ができるのはいいですね! 私も禁酒できたとはいえ、実はまだまだお酒が飲みたくなる日が…。そうなったときは実践してみたいです。
浅部先生:お酒をやめたいと思って実行できるなら、それはいいことですが、我慢することが逆にストレスになっていてはつまらないですよね。
お酒はストレス緩和にもなりますし、“飲みニケーション”なんて言葉もあるくらい、本音で話し合えるコミュニケーションツールでもあります。飲みすぎはリスクになることを理解して、適量を楽しみましょうね。
イラスト/のなか海 文/佐藤陽(マキアオンライン)
公開日:























































































