幅広いジャンルで『明日の私をMAKE』してきたひとにフィーチャーする、MAQUIA創刊20周年のスペシャル連載インタビュー。その唯一無二の存在感が心を震わす、夏木マリさんが登場です。

【MAQUIA20周年インタビュー】夏木マリ、私だけのスタイル|#明日の私をMAKEしよう

夏木マリさん

俳優

夏木マリさん

Mari Natsuki
1952年東京都生まれ。1973年に『絹の靴下』で歌手デビュー。1993年に企画・構成・演出・出演を手がける舞台『印象派』を立ち上げる。多数の舞台・映画・ドラマに参加し、数々の賞を受賞。

夏木マリ、私だけのスタイル

夏木マリ インタビュー 「大御所」という言葉は嫌い。だって私、「新人」ですから

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とにかく動かなきゃ。その先に『らしさ』がある

誰とも被らない『らしさ』を築くまでに、何を意識しどんな日々を重ねてきたの?生き方や佇まいが美しい大人のお手本として憧れとリスペクトを集める夏木マリさんが、驚くほど軽やか&謙虚に伝えるメッセージ。「失敗を恐れず、心のままに動けばスタイルは後からついてくる!」

「大御所」という言葉は嫌い。だって私、「新人」ですから

失敗は宝。気張らずにセッションを

 スタイルを磨く秘訣を問われ「失敗」と即答した夏木マリさん。「失敗は宝。失敗しないと人生楽しくないじゃない」と続ける。「私はたくさん失敗してきてるんです。美容もファッションも、生き方もね。今みたいにネットの情報や口コミなんかなくて、何でも自分の足で探しに行かなきゃならなかった。空港で興奮のうちに買ったヨーロッパのスキンケアが濃厚すぎて合わなかったり、肌が薄いのにピーリングを試してボロボロになったり。そんなのばっかり。でもね、失敗したからって死ぬわけじゃないし、合う合わないを肌身で実感して学んだ積み重ねで今の私があるんです」


 今回の撮影は、カメラマンのカウントダウンから始まった。
「5枚撮ります。ファイブ、フォー、スリー、ツー、ワン。チェックしましょう」。100枚近く撮った中から1枚選ぶのが当たり前の世界では異例だが、潔く5回のシャッターに集中するのは理由がある。「気張って決め込んじゃうとつまらないから、その日の気分を大切にしています。多く撮るほどよくなるわけではないしね。今日の私はこの顔が最高なのであり、もし内心“あれ?”っと納得いかない部分があってもそれは私の責任。ライブも同じで、その日の生の歌がいちばん私のバックグラウンドや経験を映し出している。いくら取り繕っても、わかる人にはわかっちゃうんです。だから、丁寧には作るけど気負わずにセッションを楽しみます」

「才能」や「成功」より楽しさを大切に

 歌や声優、演技、舞踏など、ジャンルを超えて活躍するアーティストとして知られるが、本人は「私は才能がないし、何をしても成功したことがない」と意外な自己評価を漏らす。「例えば歌で仕事を始めた50年前、一声歌ったらみんなが唸るような声が欲しかったけど、実際はそうでもなかった。ならばせめて、楽しく歌おう。楽しく仕事をしようと今までやってきました。表現することが好きだから、誘われるままに演劇を始めて、後にライフワークになった『印象派』に行き着いた。言葉を選ばずに言えば、流れで来ちゃった50年です」

一緒にいて楽しい人でありたい。最後はやっぱり、人柄よね

夏木マリ インタビュー 「一緒にいて楽しい人でありたい。最後はやっぱり、人柄よね」

やることは増える一方。でも、取り繕わない

「40代から50代、50代から70代と、年を重ねるとやることは増える一方ですよ。サプリメントだってどんどん増えるしね。毎朝シートマスクをするんですが、もう1枚じゃ足りなくて。貼ってるとおでこのところが乾いてきちゃうから、2枚、3枚と重ねることもあります。でも、逆にやめたこともあります。私はもともと自眉が薄くて描くのに非常に時間がかかっていたんですが、ある時期から描くのをやめた。眉にこだわりたいからあえて描かないっていう感覚ですかね。SNSで“お願いだから眉毛描いてください”なんてコメントがくることもあるんですよ(笑)」


 夏木さんが「素のままでいたいと思えるようになった」転機は、自らプロデュースする舞台『印象派』を始めた40代。


「私にも“嫌な芸能人”の時があったから、外へ出るなら完璧にメイクしなきゃっていう時代がありました。でも『印象派』を始めた頃、踊っているときにふと鏡を見たら、素顔の私になんかいい!と思えたんです。今はできればありのままの素顔で歌ったり演じたりしたいけれど、役柄に合わせる仕事なのでそうもいきません。今度ブルーノート東京でやる『MARI NATSUKI〝MARI de MODE 6〟』ではラグジュアリーに装って思い切り楽しむつもり」


 メイクを手がけたSADAさん曰く、今日はファンデーションを使ってないのだという。「マリさんのきれいな肌と骨格を活かした、素が見える“ベージュワントーンのヌーディスタイル”。たっぷり保湿し下地とコンシーラー、パウダー、ハイライトで仕上げました。マリさんの素を活かせるよう、眉も描いていません。マリさんは肩の力が抜けているのに大胆で、かっこいいのにコケティッシュ。そういう魅力をメイクで引き立てました」(SADAさん)

年を重ねたら人のために何かしたい

 夏木さんが「次世代に引き継ぎたい」と目下情熱を注ぐのが、音楽とバラで途上国の子どもたちの教育環境や女性の雇用整備を目指す『One of Loveプロジェクト』。長年支援を続けて来た子どもたちに会いに行く旅がきっかけで生まれた取り組みだ。


「私たちが音楽を届けたら、子どもたちも歌と踊りで返してくれて。上から目線で“やってあげる”のではなく“させていただく”感覚で、生活の上で何を求めているのかをストレートに聞いてダイレクトに届けることに意義があるなと。最貧国の一つとして知られるエチオピアですが、実は薔薇の生産が盛んでどこのレストランに行っても真紅のバラが一輪飾ってあって。そういう文化って素敵だなって……」


 そんなご縁から、オリジナルのバラ『マリ ルージュ』を開発し、収益を寄付する活動をスタートした。自らプロデュースした真紅のバラに囲まれた夏木さんに、どんな人を美しいと感じるのか尋ねると「最後は人柄よね」と返ってきた。その横顔には、一朝一夕では磨かれない内なる美が静かに煌めいていた。

―夏木流・美のルール―

夏木マリ インタビュー ―夏木流・美のルール―

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動ける体も、歌える喉も筋肉が命!

「喉のためにも、踊り演じる身体を保つためにも、とにかく筋肉命。これから舞台が始まるので、今は毎日トレーナーの指導を受け、筋力と持久力を鍛えています」

朝はストイック 夜はゆっくり

「朝はストレッチしてから、冷蔵庫で冷やしたシートマスク。そのあとエアロバイクを漕ぎます。夜はゆっくりしたいから、あまり決め込まずにリラックスが最優先」

人は食べ物が8割。小腸をキレイにする食を意識

「朝は重曹とビタミンCを溶かしたドリンクで巡りを高めます。最近は糖分とカフェインをカットし、パンはグルテンフリーのものに。牛肉を控えて鶏肉を選んでいます」

「流れのまま50年」クロニクル

夏木マリ インタビュー 「流れのまま50年」クロニクル

1973年


「夏木マリ」で再デビュー
『絹の靴下』が大ヒット


1982年


映画『鬼龍院花子の生涯』出演


1983年


映画『里見八犬伝』出演


1984年


芸術選奨文部大臣新人賞受賞


1985年


日本アカデミー賞
優秀助演女優賞受賞


1986年


第24回ゴールデン・アロー賞演劇賞受賞
第21回紀伊國屋演劇賞個人賞受賞


1990年


ニューヨークへ


1993年


舞台『印象派』スタート


1995年


小西康陽氏と『九月のマリー』発表


2006年


ブルースバンド「GIBIER du MARI」結成


2008年


パフォーマンス集団
「マリナツキテロワール」MNT を立ち上げ、
この活動に対して「モンブラン国際文化賞」受賞


2010年


支援活動
「One of Loveプロジェクト」スタート


2011年


結婚


2014年


清水寺奉納パフォーマンス
「PLAY×PRAY」スタート


2015年


ライブハウスツアー
「MAGICAL MEETING TOUR」決行


2017年


ブルーノート東京
「MARIdeMODE」をスタート


2022年


舞台『千と千尋の神隠し』国内初演


2023年


50周年メモリアル
『MARINATSUKI 50 JubileeLIVE』を
日比谷野音にて決行


2024年


舞台『千と千尋の神隠し』
ロンドンコロシアム出演



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